MENU

CLOSE

Challengers

総合ビジネス局デジタル事業センター兼株式会社AbemaTV現職出向
宮本 博行

2016年4月、テレビ朝日は大手IT企業のサイバーエージェントと共同で、『AbemaTV(アベマティービー)』を開局した。AbemaTVは、PC・スマートフォン向けのインターネットテレビ局。『Netflix』や『Hulu』などのオンデマンド型サービスと異なる点は、チャンネルごとに決められた番組がタイムテーブルに沿って配信される受動型のサービスだということ。チャンネル数は、約30(2019年8月現在)。バラエティやニュース、映画、ドラマ、アニメ、スポーツなど、幅広いジャンルの番組を24時間配信しており、すべてのコンテンツを無料で視聴できる(Abemaビデオの一部コンテンツを除く)。AbemaTVの主なターゲットは、「10代後半〜20代の若年層」。開局以来、ダウンロード数は順調に伸びており、2019年4月時点で4000万ダウンロードを突破した。
このようなサービスにテレビ局が乗り出した例は他に類を見ないため、すべてが手探りの状態からのスタート。今後、新しい時代を切り拓く可能性を秘めているこの試みを支えている制作現場の舞台裏を、少し覗いてみよう。

AbemaTVには、オリジナル番組を配信するチャンネルが複数存在する。オリジナル番組は週におよそ50本制作されているのだが、それらの番組の責任者として企画や構成に関わっているのが、本プロジェクトが立ち上がってすぐにテレビ朝日から出向した宮本博行だ。宮本はテレビ朝日に入社後、『ロンドンハーツ』をはじめとする様々なバラエティ番組の制作に没頭。その後、ネット動画などを運営する部門へ異動し、『テレ朝動画(テレビ朝日のネット動画サービス)』の人気コンテンツを立ち上げるなど、ネットコンテンツ制作経験に長けた人物である。そんな宮本は今、このチャレンジングな環境を、誰よりも楽しんでいるようだ。

「テレビ朝日では若手寄りの中堅である僕が、このチームでは最年長。制作スタッフのマネジメントをするのは初めての経験です。テレビ朝日にいる頃は、60年近いテレビ局としての歴史の中で培った、『こうすれば面白くなる』というある程度の『セオリー』がありました。一方、『AbemaTV』はまだまだスタートしたばかりなので、しがらみや既成概念が全くない。今、セオリーを僕らが作っている段階なんです。だからこそ、挑戦しがいがあるんです」。

「ピンチはチャンス」。面白い番組を作る上で、宮本が大切にしているスタンスについて尋ねてみたところ、こんな言葉が返ってきた。
宮本は入社2年目の頃、『ロンドンハーツ』のADだった。その当時、総合演出の加地倫三(※)から「想定外のことが起きても、その状況を活かす番組づくりをすればいい」というアドバイスをもらったことがあったという。
「AbemaTVで放送しているオリジナル番組は、約90%が生放送。生放送は想定通りにいかないことがほとんどです。何かイレギュラーが発生したときには、加地さんの言葉を思い出して、『予定不調和感』を楽しんでいます。例えば、以前ペット特集を組んでスタジオに子犬や子猫を呼んだとき。もちろん彼らは、僕らの言うことなんて聞いてくれません(笑)。そうすると、カメラに写らないところまで好き勝手に行ってしまって、それを出演者が慌てて追いかけていって。その結果、出演者の『素』の一面が引き出せて、逆に良い放送になりました」。※『ロンドンハーツ』や『アメトーーク!』の総合演出を手がけてきたテレビ朝日社員。現ゼネラルプロデューサー。

AbemaTVのオリジナル番組には、どんな特徴があるのだろうか。
「ひとつ目の大きな特徴は、より『人』にフォーカスした番組づくりを意識しているところ。AbemaTVの視聴者の多くはスマートフォンで番組を観ています。テレビに比べて画面が小さいため、出演者が多いと誰が誰だかわかりにくい。だから、出演者数を一般的なテレビよりも少なくして、個人への興味や親近感を抱いてもらえるよう意識しています」。
この特徴を象徴する番組が、一人の芸能人に密着し、その様子を24時間生放送し続けるという特別企画。これまでに市川海老蔵や三浦翔平、お笑い芸人のチュートリアル徳井義実や渡辺直美が登場した。
「24時間密着は、する方以上にされる方が大変です。だから、出演者にどうしたら楽しんでもらえるかを考え、企画や構成を考えています。例えば、チュートリアル徳井さんの回では、『徳井さんの妄想、すべて叶えます』というテーマで24時間密着して、『合法的にスカートめくりをしてみたい』といった徳井さんらしい企画を形にすることができました」。

さらに、もうひとつの特徴があるという。
「キャスティングですね。毎週月〜金曜の19:00〜20:00に放送していた『AbemaTVナビ』という番組は、ティーン向け雑誌の人気読者モデルやTwitCasting(※)の有名キャス主など、テレビではあまり観る機会のない、若い世代に人気の人物をMCに抜擢しています。このあたりは、一緒に番組を制作しているサイバーエージェントのメンバーからアイディアをもらうことが多いです」。
企画や構成、演出など、番組の作り方はテレビ朝日が、そしてターゲット目線のキャスティングや情報の拡散のさせ方はサイバーエージェントが得意領域という制作現場。テレビ局とネット企業がタッグを組み、お互いの強みが混ざり合うことで、相乗効果が生まれているようだ。※スマートフォンで簡単に10秒の短編動画を撮影・編集できるアプリ。

最後に、AbemaTVで今後挑戦していきたい取り組みについて、宮本に尋ねてみた。
「生放送だけでなく、VTRや収録物も今後は増やしていきたいです。オリジナルドラマを作ることができたら面白そう。とはいえ、決して自己満足で終わってはいけない。僕らのやるべきことは、一人でも多くの人に観てもらえる番組を作ること。視聴者から支持を得られれば、ゆくゆくはAbemaTV発のテレビ朝日番組が誕生するという可能性もあるかもしれません。まずはビジネスとして軌道に乗せるために、スタッフと出演者が団結し、一緒にAbemaTVを育てていきたいです」。
宮本の言葉には、この新しい試みに携わる責任の重みや覚悟、そして現在進行形で急成長中のビジネスに携わることへの大きな希望が詰まっていた。今後、AbemaTVはどんな広がりを見せていくのだろうか。可能性は、未知数だ。

※AbemaTVなどインターネット配信番組の制作を希望する方は「番組制作・ビジネス部門」を選択してください

PROFILE
宮本 博行HIROYUKI MIYAMOTO
総合ビジネス局デジタル事業センター兼
株式会社AbemaTV現職出向

2002年入社。若手時代は制作1部に配属されバラエティ番組制作に没頭。2009年に番組制作現場から離れ、ネット動画などを運営するコンテンツビジネスセンターに異動。同じ年にスタートした「テレ朝動画」(ネット動画サービス)で「バナナTV」を立ち上げた。2015年、初期メンバーとしてAbemaTVに出向。現在、様々な番組のプロデュースを任されている。