プレスリリース

2020-01-06

早河洋会長・CEO 2020年「年頭挨拶」(要旨)

 2020年1月6日


早河洋代表取締役会長・CEO「年頭挨拶」


 テレビ朝日グループの皆さん、新年明けましておめでとうございます。この年末年始、家族や仲間たちと落ち着いた時間を過ごされたと思いますが、リフレッシュできたのではないでしょうか。皆さん、大変いい顔をしています。無事に新年を迎えられたことを、ともに喜びたいと思います。
 一方で、年末年始、放送対応や取材、撮影、その他業務のために出勤された多くの皆さん、大変お疲れ様でした。どこかのタイミングでゆっくりと休んでいただけたらと思います
 皆さん全員の奮闘のおかげで、テレビ朝日は開局60周年という記念すべき年に自らのコンテンツパワーを大いに示すことができました。まず年間の世帯視聴率は全日・ゴールデン・プライムともに2位の座を確保できました。また10月クールのプライムはトップ、年末最終週は昨年7回目の三冠となり、12月月間三冠につながりました。これに続いて、新年スタート週もゴールデンとプライムでトップを獲得、年末年始という節目のタイミングで素晴らしい成績をあげることができました。編成・制作など、コンテンツ部門の奮闘を大いに称賛したいと思います。まだ通年レベルではトップとの差は大きいものがありますが、このようなテレビ朝日らしい挑戦を今年も続けていきましょう。
 さて、昨年はラグビーワールドカップが日本で開催され、日本代表の大活躍で爆発的な視聴率、ブームを獲得し、テレビとスポーツの親和性、テレビの訴求力の強さを改めて証明した年となりました。振り返れば、2002年の日韓共催のサッカーワールドカップ、テレビ受像機の普及を加速した1964年の東京オリンピックの際も、テレビジョンを通じて日本列島が感動と興奮に包まれました。
 今年2020年は、世紀の祭典、東京オリンピックが開かれる年です。テレビが再びその機能を十二分に発揮し、視聴者の期待にしっかりと応える年にしなければなりません。テレビ朝日もジャパンコンソーシアムの一員として、その使命をしっかりと果たしてまいるつもりです。
 昨年、テレビ朝日は開局60周年という大きな節目を迎えました。後発局として始まった当社は上を目指し、チャレンジにチャレンジを重ね、先ほど申し上げた通り視聴率競争でもトップ争いを繰り広げられるポジションまで辿り着きました。これはここにいる皆さんの奮闘・努力の賜物です。
しかし一方で、皆さんご存知の通り、テレビ業界全体は今、リーマンショックの時を思い起こさせるような、「広告不況」とも言える事態に直面しています。「一過性の不況」と楽観視すべきではありませんし、構造的な要因が絡んでいるとみて間違いありません。その主な要因として、インターネット広告市場の成長、エンターテインメントに触れる経路の多様化が挙げられます。
テレビ朝日は今のままでは2020年代の展望が開けず、ネットワーク体制も立ち行かなくなるのではないか。このような強い危機感から、去年秋から新たな経営計画の検討に着手しました。
コンテンツを中心に据え、コンテンツをすべての価値の源泉として最重要視するという、現在の経営計画「テレビ朝日360°」の基本理念は継承します。これまで以上にコンテンツの力を磨くことこそが、唯一の生き残り策だからです。
その一方で、コンテンツ力を磨くには、私たちグループは収益を今後も持続的に確保していかなければなりません。
そのためには、まず第一に、今の地上波の収益力を高める大きな改革をしかける必要があります。編成・営業・総合ビジネスという収益部門を融合し、地上波の広告収入と広告外の収入を最大化できるようにすることがポイントです。新しい計画の検討に当たっては、聖域を設けず組織再編を行っていきたいと思います。
第二は、コンテンツで稼ぎ出す収益源の多角化です。今年は高速大容量の通信サービス・5Gを各通信キャリアが始めます。これにより、動画をインターネットで見る流れはさらに加速すると思います。そのような中で、私たちはインターネット上でコンテンツを展開して、自ら稼ぐ力をあまり持ち合わせていませんでした。これを解決すべく、すでにいくつかの手を打っています。
一つは、AbemaTVです。サイバーエージェントとともに立ち上げた、リニア配信とビデオオンデマンドを混ぜ合わせた、これまでにないインターネットテレビ局です。若者に人気の恋愛リアリティショーやAbemaNewsなどのオリジナルコンテンツを充実させて、既存のテレビとは一味違った新たなマスメディアを創ろうとチャレンジを繰り返しています。AbemaTVが成功して、当社の利益にも貢献できるように、今後も全力で支援していきます。
二つ目は、去年5月に新たに設立したUltraImpressionです。ここ数年、放送から1週間限定の無料広告型見逃し配信サービス、いわゆるキャッチアップが市場を拡大しています。しかしテレビ業界はこれまで、ネット動画に広告を付けてマネタイズする仕組みや技術を自分自身では持ち合わせていませんでした。ましてや、みている人の属性に応じて広告を出し分ける、インターネット特有の運用型広告の技術は、全くの未知の領域でした。当社はこの技術を自ら持つため、アドテクに秀でているSupershipグループなどと合弁で、UltraImpressionを立ち上げました。インターネット上でも広告を配信できるようになり、収益を自ら稼ぎ出せる機能を持つことは、テレビ朝日の将来に必ずプラスに働くと信じています。
三つ目は、12月12日に発表したKDDIとの合弁会社です。この会社はテレビ朝日が50%、KDDIが50%出資して、KDDIが現在運営している定額課金型のSVODサービス・ビデオパスをKDDIから譲り受け、春からサービスを開始します。テレビ朝日はこれまで、自前のSVODのサービスを持っていませんでした。有料動画配信市場の規模は今や2000億円を超え、今後も成長が期待されていますが、実はその大半を構成しているのがSVODサービスです。テレビ朝日はこの合弁会社を通して、SVOD本店を確保し、有料動画配信市場でも確かな足場・ホームグラウンドを築くことができました。5Gの時代において、通信大手の一角をなすKDDIと連携できることは非常に大きな強みだと考えています。外国勢の参入で激しい競争が待ち受けてはいますが、この会社が利益を出していけるよう、オリジナルを含めて、テレビ朝日グループの魅力的なコンテンツをどんどん供給していかなければなりません。
収益源の多角化の策として、以上3つの例を挙げましたが、さらに将来を見据えた種まきも行っています。去年12月、クラスターというベンチャー企業に出資しました。この会社はバーチャルリアリティの空間の中で、音楽・演劇などいろいろなイベントを楽しめるサービスを提供しています。私達のコンテンツの力、制作能力を将来的にはこうした先端領域にも活かしていけるものと期待しています。現在、こうした新進気鋭のパートナーとの連携・提携を具体的に進めているところです。
以上述べてきたAbemaTV、UltraImpression、SVOD合弁会社などはいずれも、インターネット時代にテレビ局が持つべき必須の機能であり、コンテンツを軸とした新しいビジネス展開に資するものです。こうした事業体がスピード感をもって生まれたことを誇りに思い、さらなる挑戦を続けたいと思います。
私がこれまで申し上げてきた「新しい時代のテレビ局」とは、デジタル化が進むメディア環境に正面から向き合い、持続可能な新しい「テレビジョン」を構築し、視聴者・ユーザーが求めるコンテンツを送り続けることによって、収益を最大化できるテレビ局のことです。
現在の経営計画を1年前倒しして、新しいプランを策定する作業に去年11月から入っていますが、この原点を忘れず、自分たちで新しいテレビ朝日を創り上げる、という強い覚悟をもって、策定の議論に参加していただきたいと強調しておきます。
結びに、テレビ朝日グループが2020年代を生き抜いていく上で欠くことができない戦略パートナーを、改めて確認しておきます。
サイバーエージェントとは、先ほども申し上げました通り、若者向けのネットメディアを創造するという大いなるチャレンジでご一緒しています。
KDDIとは、今回のSVODサービスはもちろん、ニュース情報サービスでも連携しています。また、UltraImpressionに出資しているSupershipグループもKDDIの関係会社です。
東映とは、全ての価値の源泉であるコンテンツの制作面で密接に協力しています。去年東映の株式を当社が追加的に取得して、当社の持分法適用関連会社になったのも、コンテンツを軸とした連携をより緊密にしていくためであります。
朝日新聞社は選挙報道や厳しさを増す地上波ネットワーク体制の維持などの面で引き続き連携をしていきます。
戦略パートナー4社の協力を得ながら、テレビ朝日グループは2020年代も必ず勝ち残っていかなければなりません。
最後となりましたが、去年は報道・情報の現場で、ハラスメントの事象や放送上不適切な表現、などなど、様々な問題が発生しました。
皆さんに改めて言うまでもありませんが、視聴者・利用者の皆様方がテレビ朝日グループを信頼して下さっている、必要として下さっている、その根幹をなしているのは、私達が正確な情報を伝えていること、公平公正な姿勢を貫いていること、これに尽きます。
放送人に求められる高い倫理感を堅持するのは、当然のことであります。さらに言えば、お互いを尊重し、存在を認め合い、活かし合える会社でなければ、そもそもいいコンテンツは創造できません。皆さん一人一人にこの認識をしっかりもっていただき、こうした問題が決して起こらないようにすることが求められています。
締めくくりに、今年一年間の皆さんのご多幸とテレビ朝日グループの一層の発展を祈念して、私の挨拶とさせていただきます。
※視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区
以上