社長定例会見

西新社長 社長会見(7月8日)の要旨

2025-07-08
※新社長の抱負。
西社長:先週7月2日に社員に向けて挨拶したものと重なるが、テレビを取り巻く環境が激変する中での社長就任ということで、非常に光栄な気持ちと同時に大変な緊張を感じている。おかげさまでテレビ朝日は昨年度、視聴率三冠の達成も含め、最高レベルの業績を上げており、まずは社員、スタッフが一丸となって、この素晴らしい流れをしっかりと継承し、さらに加速させられるよう精一杯頑張りたいと思う。具体的には、新しいIP開発も含め、やはり本業である多彩で良質なコンテンツを創出することで、視聴率三冠の継続はもとより、ABEMA、TELASA、TVerを中心とした我々独自のネット展開の強化、そしてリアルイベント事業の中核となる、東京ドリームパークの成功という、これらを自分の最重要課題として全力で取り組む覚悟だ。そして、もちろん構造的な広告費の低減傾向に備えて、従来の放送ビジネスモデルだけではない、コンテンツから生み出す新しい収益モデルの構築にも数多く挑戦していきたいと考えている。まもなく次期経営計画策定が自分の大きな仕事として控えているが、社員に対しては、テレビ朝日のDNAともいえるチャレンジ精神と敬意の文化をベースに、自分自身が設定する限界を、もちろん私自身も含めて、もう1段上げて、新しく逞しいテレビ朝日を一緒に作りましょうと話をさせてもらった。どうかよろしくお願いいたします。
※視聴率の最新状況。
藤本取締役:個人全体視聴率の年間は、全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.2%で2位、プライムが5.2%で1位、そしてプライム2は1.7%で3位だ。世帯視聴率の年間は、全日が6.3%で1位、ゴールデンが8.8%で1位、プライムは8.9%で1位、そしてプライム2が3.2%で3位という状況だ。続いて、今後の放送予定だが、本日よる9時よりゴールデンタイムのドラマがスタートする。その最初を飾るのが「誘拐の日」だ。2023年に韓国で人気となった連続ドラマ「誘拐の日」が原作で、斎藤工さん演じる心優しきマヌケな誘拐犯と永尾柚乃さん演じる記憶喪失の天才少女という奇妙なバディが繰り広げる“ヒューマンミステリー”となっている。水曜よる9時は「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」だ。大森南朋さん、相葉雅紀さん、松下奈緒さんの豪華俳優陣によるトリプル主演が実現した。脚本は福田靖さん。東映とタッグを組んで、10年ぶりとなる「水9」の新シリーズにチャレンジする。そして木曜よる9時は「しあわせな結婚」だ。脚本が大石静さん、主演阿部サダヲさん、ヒロインに松たか子さんの最強布陣で究極の夫婦愛を問う令和の“マリッジサスペンス”をお届けする。ご期待いただきたい。そしてスポーツだが、MLB、そして日本のプロ野球、それぞれのオールスター戦を中継する。また「世界水泳シンガポール2025」では、競泳決勝を8夜連続で日本代表の熱い戦いをお伝えする。また、先日公示された参議院議員選挙だが、7月20日の投開票日よる7時54分からの「選挙ステーション」では、大越健介キャスター、大下容子アナウンサーがメインを務める。また、よる10時45分からの「有働Times」とあわせて4時間の編成で選挙の投票動向をお伝えする予定だ。
※営業状況について。
橋本取締役:5月の確定数字から報告する。タイムが104.0%、スポットが119.8%、トータルでは112.5%で確定している。タイムは大型単発が編成されない月だったが、レギュラー番組のセールスが順調に進んだことで、売上を伸ばすことができた。スポットはシェアが28.9%と、前年比ではプラスの5.1ptで着地している。6月、7月のセールス状況だが、時期的に既に第一四半期の数字を固めている段階であるため、今日のところは売上に関する詳細は控えさせていただき、ポイントを絞って報告する。6月、7月は、現在タイム、スポットを合わせて、いずれも2桁台の伸びを見込んでいる。したがって、年度計画は順調に推移している。5月に続いて、引き続きあらゆる業種から幅広い出稿の需要があり、タイム、スポットともに取引のスピードが非常に速い状態が続いている。社会全般的にインフレが進んでいるけれども、広告取引の現場においても、似たような状況にある。
※放送外収入について。
板橋専務:まずは「全スーパー戦隊展」を紹介する。毎年「Wヒーロー夏祭り」として開催してきた夏の東京ドームシティでのイベントを、今年はスーパー戦隊50周年を記念して、「全スーパー戦隊展」と題し、特別企画で開催する。シリーズ50年の歴史の集大成となる大展覧会となる。続いて、今年で24回目を迎える日本最大級の夏の音楽フェスティバル「SUMMER SONIC 2025」「SONICMANIA」を紹介する。今年はヘッドライナーとしてFall Out Boyとアリシア・キーズの2組を迎え、国内からはOfficial髭男dism、BE:FIRST、BABYMETALが参加予定である。前夜祭のイベント「SONICMANIA」を含めて、3日間で合計14万人を超える動員を目指している。続いて3つ目は「M:ZINE LIVE」。去年からスタートした音楽バラエティ番組「M:ZINE」が、いよいよこの秋、リアルイベントを開催する。Mrs. GREEN APPLEの若井滉斗さんをはじめ、これまで番組に登場いただいたアーティストの中から、豪華なゲストに出演いただこうと思っている。最後に、いよいよ来週土曜日19日から「テレビ朝日・六本木ヒルズ SUMMER FES」が開幕する。テレビ朝日本社、六本木ヒルズアリーナ、EXシアター六本木において、人気アーティストのライブや番組コラボイベントなどを実施する。
※TELASA、ABEMA関連について。
藤本取締役:TELASAはサービスリニューアル後、会員数が200万人を超え、引き続き順調に推移している。7月クールにおいても、ドラマ、レギュラーバラエティに連動したオリジナル作品を配信していく予定だ。今後、さらなる会員増を目指していく。ABEMAのWAUは現在、平均2,300万前後で推移しており、引き続き高い水準を維持している。ニュース、アニメ、将棋に加えて、大谷翔平選手のハイライト動画や人気恋愛リアリティーショー「今日、好きになりました。」など、大きく数字を伸ばす要因となっている。最後に、出資映画は、来月8日に「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」が公開となる。今回はインドを舞台に歌って踊る、夏にふさわしい映画となっている。日本公開後は、インドでの公開も控えている。これをきっかけに、クレヨンしんちゃんがさらに世界的コンテンツになることを目指していきたい。
※社長就任後、最初の定例会見となるが、今後力を入れていく取り組みなど改めて。
西社長:テレビを取り巻く環境は激変しているし、課題も多いが、その時代のトレンドや視聴者のニーズをしっかり捉えて、良質で信頼されるコンテンツを作ること。これが、どんな時代になり、どんなデバイスが出ようとも、我々がコンテンツ企業として生き残っていくためには、絶対条件だと思っている。そして当社がずっと掲げている360°戦略というものがある。一つのコンテンツをあらゆるフィールドに出していくというものだが、新たなIP開発を含め、時代にマッチしたコンテンツを出すことで、この360°戦略を全社で強力に推し進めると同時に、来年開業するリアルエンターテインメントの中核となる東京ドリームパークを成功させること、これらを自分の直近の最重要課題として取り組みたいと思っている。
※テレビを取り巻く環境という部分では、今年1月からフジテレビの社員とタレントの関係などについて問題があったが、それについて、再発防止に対する新たな取り組みなど、今後の新体制でやっていくことは何かあるか。
西社長:テレビ朝日ホールディングスが昨年2月に定めている人権方針で、「あらゆるハラスメント行為は認めない」と宣言している。また、コンプライアンス強化の一環として、今月からコンプライアンス統括室が「コンプライアンス統括局」となり、担当の取締役が局長を務め、新たにホールディングスの役員にも就任した。テレビ朝日グループ全体のガバナンスを強化する体制を整えた。そして、今年4月からテレビ朝日及びグループ会社共通の外部相談窓口も新たに増設しており、社内だけではなく、グループ会社の従業員・派遣スタッフを含めて、皆さんが安心して相談できるよう、窓口の周知徹底も図っているという状況だ。今後も、当たり前のことだが、ハラスメント行為を絶対にしない、決して見逃さない、ということを役職員全員で徹底していきたいと考えている。
※オンラインカジノ問題について、他局では社員が逮捕されることもあったが、テレビ朝日では社内調査や対策など、何か進めていることはあるか。
西社長:社員に対しては、放送人としてコンプライアンスを遵守するよう、研修等を通じて常に周知徹底をしており、オンラインカジノについては、改めて全役職員にコンプライアンス推進部からの注意喚起と、相談などの呼びかけを行っている。現在、具体的な事案は発生していない。今後、何らか疑いがあるような事案が発生すれば、速やかに調査を行い、厳正に対処したいと考えている。
※今日から7月期のドラマが始まるということで、「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」は水曜9時枠の10年ぶりの新作となるが、相葉雅紀さんをはじめとするトリプル主演など何か期待することはあるか。
西社長:大変期待している。「大追跡~警視庁SSBC強行犯係~」は東映とのステアリングコミッティ第1弾ということで、我々としても大型作品として捉えている。「HERO」や「DOCTORS~最強の名医~」を含めたヒットメーカーの福田靖さんに脚本を担当していただき、防犯カメラ映像やSNSの解析等、いわゆるデジタル捜査と現場の直感が融合するという、現代の捜査の最前線が描かれた作品となっている。そこに大森南朋さんや相葉雅紀さん、それから松下奈緒さんという非常に豪華なトリプル主演も実現しており、それぞれのキャラクターをしっかり演じてくださっているので、当社としても本当に新しい刑事ドラマとして非常に多くの老若男女の皆様に楽しんでいただける作品だと思っている。相葉さんでいうと、国民的グループ「嵐」のメンバーの中でも、優しさや柔らかさが感じられ、それでいて芯が強い方だと思う。今回の舞台がSSBCというデジタル班と捜査1課ということで、関係値があまり良くなく、元々の捜査手法も違ったりするわけだが、そこに相葉さんが入ってくることで、「嵐」の中の彼ではないけれども、皆が和んで一つになっていき、事件も解決していくドラマになっている。相葉さんの良さが存分に出ているドラマだと思っているので、大いに期待している。
※「テレビ朝日・六本木ヒルズSUMMER FES」について、今年の特別な見どころなどあるか。
板橋専務:いよいよ来週19日から始まる。準備の方も最終段階に入っている。この六本木を舞台にした夏祭りは2014年から行っているが、今回は音楽とエンタメに特化し、タイトルも「サマフェス」と装いを新たに生まれ変わる形で行わせていただく。来年春に東京ドリームパークの開業があるので、それに向けて新たな番組との連動イベントや共催イベントにチャレンジしていきたいと思っている。六本木ヒルズアリーナでの音楽ライブについては、去年まで観客は大体1,300名ほど入れていたが、さらに拡大して1,900名規模が入れるようにしている。出演アーティストは「新しい学校のリーダーズ」や「FRUITS ZIPPER」、「CUTIE STREET」など、今、本当に人気で、大きな会場でしか出会えないようなアーティストたちを、非常に近い場所でご覧になることができるので、最高のパフォーマンスをお届けできるのではと思っている。また番組の方では、「アメトーーク!」「テレビ千鳥」、「あのちゃんねる」などの人気番組と連動したイベントをステージで行おうと思っているので、来場者の方々には大いに楽しんでいただけるのではないかと考えている。ご期待いただければと思う。
※中期経営計画では「限界突破」が一つのキーワードになるのか。
西社長:我々を取り巻く環境は基本的に厳しい。それは視聴スタイルも、従来の広告ビジネスも基本的に厳しいと思っている。現状を打破するときには、既成概念を打破していかけなければいけない。各局、60年から70年という年月が過ぎて、一つのビジネスモデルができているが、そこから脱却するためには、その限界を一回越えていかないと、新しいもの、アイデアが出てこないのかなと思ったので、そういう言葉を使わせていただいた。新しいIPビジネスの構築や、東京ドリームパークもそうだが、新しい収入基盤もしっかり作りながら、本業をしっかりやっていくと自分は理解している。
※先ほど西社長が発言した限界突破、既成概念を変えていくということで言うと、去年日本テレビが「スグリー」という新しいCM販売の仕方を発表した。この販売方法について現時点でどう評価しているのか。また、同様もしくは別のやり方で従来のセールス方法を変えていくという検討はしているか。
橋本取締役:「スグリー」は、日本テレビが3、4年前に着手された未来志向の取引システムだと受け止めている。機能で先行しているのは、タイムラグの解消の分野で、CM搬入にかかる時間を短縮することで、アドバタイザーのニーズにもう少し寄り添う形にならないか、ということだ。今の民間放送では、大体4日前の素材搬入が必要だ。例えばアドバタイザーの側で何か事故が発生したとか、もしくは商品が欠品したとかといった異常な事態が発生したときに、アドバタイザーが広告会社を通じて予定していたCMを差し替えたいという要望がある。天候もその理由の1つになるかもしれないが、その差し替えの対応を非常にデジタル的に、放送の20分前でもできるようになる、と私たちは聞いている。これについてはどの会社にとっても魅力的で、便利かと言われればその通りで、ありがたいことだと思う。ただ一方で、そこにどれだけの実需があるかは別問題だ。私どもは年間365日放送対応しているが、実際にアドバタイザーからそのような緊急的な要望をいただくことは、実はそこまで多くはないように認識している。そうすると、このために日本テレビのシステムに、私どもの営業のCM放送システムを接続し、しっかりとモニターしなければならないといったコスト的な部分が生じる。そこまで考えるとどうだろうか、というのが私たちの見ているところだ。現在、「スグリー」は稼働しているけれども、本質的にはトライアル的なものであるため、もう少し様子を見てから評価させていただければ、というニュートラルな考え方だ。おそらく他局も似たような感じだと思う。
※TOKIOの解散について。
西社長:たくさんお世話になったので、突然の発表に本当に驚いている。今後、松岡昌宏さんと城島茂さんが新しい道を歩まれるが、我々としては応援したいと思っている。
※日本テレビ会見前に、国分太一さんのことでテレビ朝日に情報はあったか。
西社長:特にはない。
※日本テレビの会見後にテレビ朝日とSTARTO ENTERTAINMENT、株式会社TOKIOで話し合いの場や説明を受ける場は設けられたのか。
西社長:本人の事情で活動を休止すると連絡をいただいただけだ。詳細はもちろん我々も把握できていない。
※活動休止発表があった後、改めてテレビ朝日から詳細を知りたいと申し入れたことはないのか。
西社長:活動休止発表の前後も含めて、常に様々なタレント事務所とは普段から連絡を取り合っている。常時そのような会話はなされていると認識いただければと思う。
※選挙報道での取り組みや見直しについて。
内藤取締役:1年前の東京都知事選、その前の4月の衆院補選、10月の衆院選、11月の兵庫県知事選、名古屋市長選もあった。様々な課題が出る中で、我々は20回近く会議を行い、専門家や系列の人たちも加えて議論を重ねた。そしてこの年明けに、通常のいわゆる選挙報道のガイドラインとは別に、「2025選挙報道の指針」を作った。大きく3つの項目がある。直前までしっかり伝えることと、有権者の興味や関心をしっかり捕捉しようということ、SNSをメインとするネット上の真偽不明、あるいは虚偽情報をしっかり検証して伝えていくこと。この3つを軸に、今年4月から系列局にも展開した上で取り組んでいる。具体的には、全番組を通して「確かめて、選ぶ」というサブタイトルで報じている。それから、有権者の関心に関して、通常の世論調査に加えて、情勢調査の回数を増やしている。もう一つは、Xの中で全量調査を行っている。これは番組でも扱っているし、オウンドメディアの「テレ朝NEWS」で随時更新している。これは参院選に関わるワード、それからナラティブをしっかり全量捕捉して、その推移をしっかり報じていこうという試みだ。ファクトチェックに関しては、デジタル取材も含めて体制を整えているが、先月の中旬、「フェイク検証ウィーク」をつくった。昼のニュース枠で、各国でフェイクにどういった対策を行ってきて、どういった問題が起きたのかといったものを9日間連続で放送した。これはいわゆるプリバンキングにあたるものだと思う。そういった取り組みをして、投開票当日までしっかり伝えていく体制で注力している。
※その「フェイク検証ウィーク」は、都議選に合わせたのか?
内藤取締役:都議選に向けてというわけではなく、都議選、それから参院選の前に出していこうと。
※「テレ朝NEWS」サイトのリニューアルの狙い。選挙との関係について。
内藤取締役:ニュースサイトのデザインのリニューアルはたまたまこのタイミングだったが、しっかり選挙報道も量を出していこうと思っている。いわゆる地上波コンテンツだけではなくて、デジタルのコンテンツも充実させていこうということで、参院選に関してはタイムラインをトップページに持ってきて、何が起きているのかというのを随時お伝えするようにしている。
※民放連「取材者等の安全を守るための声明」を受けて何か取り組みはあるか。
内藤取締役:「2025選挙報道の指針」に、取材者、記者もカメラマンもそれからディレクターも、スタッフ、出演者も含めて、現場でそういうリスクを負うようなことが考えられれば、事前にしっかり対応していく。取材者を守るというのは、その中の大きな課題、テーマとして明記してある。
※選挙報道について。先ほどの説明では、さまざまな課題がある中で議論してきたという話だが、もう少し具体的にどのような課題が現場から挙がったのか。
内藤取締役:具体的には、昨年4月28日の衆院補選で起こった東京15区選挙妨害の問題、あるいは東京都知事選では主要候補者の扱いというのはどういうものなのか、という課題がそれぞれ出てきた。端的に言えば、10月の衆院選のところは、直前の報道量が十分ではなかったのではないか、と選挙ごとにさまざまな意見もいただき、さまざまな課題が出てきた。兵庫県知事選については、ここで申し上げるまでもないが、SNS上のフェイクニュースの問題もあり、弁護士も入れてどういったことができるのだろうか、とその都度議論を続けてきた。BPOの言う質的公平性は一体どこにあるのだろうという概念的な話から、具体的にどのように現実を変えるところまで落とし込めるのか、などの議論を年末まで繰り返してきたという状況だ。
※選挙の指針の件で追加で聞きたい。量的公平性と質的公平性というところで、例えば他局では、量的公平性には囚われない踏み込んだ作り方をしているところもあると聞く。そのような中で、今回テレビ朝日の指針では、そこまで踏み込んでないという認識でよいか。
内藤取締役:質的公平性を追求していく中で、量的公平性を強く意識するあまり、選挙の期間中に報道量が減ってしまったのではないかという反省を踏まえて、直前でも視聴者あるいは有権者の投票行動に資するもの、興味や関心に資するものであれば積極的に報じるという中に、そういった質的公平性も含めてある程度踏み込んでいこうというのは現場の方では話し合っている。それも含めて直前までしっかり有権者に資するものは報じていこうという指針の一つの柱に、そういった部分も込められているということだ。
※量的公平性に囚われないという具体的な文言がなくとも、報道の中で必要であれば、量的公平性に囚われずに取り上げるという思想が入っているということか。
内藤取締役:そうだ、入っている。
※系列局について。今年の9月にNHKとの共同利用会社に参加するか否かを各個社が判断するタイミングが来ると思う。例えば中継局やマスターといった設備投資をなるべく安く済ませるために今後どうするかということだが、非常に物価も経費も上がっている中、テレビ朝日として系列局の負担を軽減するために、今具体的に設備投資の軽減を図っていることはあるか。あるいは今後そのような支援は考えているか。
西社長:中継局の件に関しては、放送業界全体に貢献するという意義のあることで、民放事業者として協力し、ネットワークの効率化に向けた取り組みを進めたいと思う。現在、我が系列は将来を見据えて、早い段階からしっかりとコスト管理も含めて経営をやっていると思う。当然ニュースネットワークを含めて系列全体をしっかり守っていくというのは、我々キー局の使命だとも思っている。そういう意味では系列全体で新しいテレビ局全体を作っていければ、と考えている。
※6月28日の「ワイド!スクランブルサタデー」の中で、撮影場所が確認できていない映像を、広島への原爆投下の映像として使用したという事案があった。具体的にどういう事案だったのか。
内藤取締役:6月28日の「ワイド!スクランブルサタデー」内の「ANNニュース」で、戦後80年企画のミニ企画の一環として、日本を代表するバレエ界の第一人者、また被爆2世の森下洋子さんの取材の中で、広島の原爆投下として使った映像に関して、社内の関係者から指摘が入り、調べたところこれが長崎の原爆投下の映像を誤って使ったことが判明した。原因については、主に2つ。まずは担当者の映像の確認作業が不十分であったということ。加えてその後のデスクのチェックが効かなかったこと。翌日、同じ時間の「ANNニュース」でお詫びと訂正をした。これについては、資料映像を使用する部門、デスクチェックの部門、この双方で再発防止を全力で取り組んでいるところだ。
※戦後80年というところで、あってはならない間違いと思うが、こういった誤りが発生してしまったことを受けて、会社として何かコメントをいただければと思う。
西社長:素材を間違えることはもちろんあってはならないことなので、真摯に反省したい。どうしても人為的な作業があり、特に過去の映像だとその残し方やキャプションの付け方など、今よりも昔の映像の方が、各社もそうかもしれないが、残す形というのが若干分かりづらい部分があるのだと思う。そのようなことも含めて、我々は深く反省し、次に向けてどんなチェック体制をとっていくのか、日々社内で話をしている。同じようなミスが起こらないよう、今後も社内でしっかりと徹底的にシステムを組んでいきたいと思っている。
※戦争についての番組を作る上での難しさや、それをどのように乗り越えていくのか、何か考えがあれば教えてほしい。
内藤取締役:戦争当時のことを知っている方が年々減ってきている。証言者の数は明らかに減ってきている中で、今年になって各番組で、例えば「ワイド!スクランブル」ではもう既に10回以上報じていて、夜の「報道ステーション」でも3月から断続的に報じてきている。例えば「報道ステーション」では5月、「最後の早慶戦と戦後の復活秘話」のように今の興味にフックするような展開をした。先月は沖縄慰霊の日に沖縄からキャスターが中継したのだが、本来であれば週末、アメリカが初めてイランを空爆するという非常に大きなニュースがある中でも、あえて沖縄慰霊についてはトップに持ってくるといった番組構成を含めて、いわゆる戦後80年を伝えていくという創意工夫を現場でしっかりやっていこうと思っている。
※「クレヨンしんちゃん」は世界展開しているIPで、特にインドで人気だと思うが、インドをはじめ海外におけるそのポテンシャルをどう見ているのか。
藤本取締役:今年の夏公開予定である「クレヨンしんちゃん」の映画は、インドをテーマにしている。長年インドに対して番組販売を行っており、子供の数が4億人いる中で非常に人気を博しているため、インド向けに映画を作らせていただいた。今後「ドラえもん」も「クレヨンしんちゃん」も、しっかりとインドでの展開を図っていければと考えている。
※インドの魅力は市場の大きさか。
藤本取締役:おっしゃる通りだ。市場である子供の数が非常に大きいところだと思っている。
※なぜ「クレヨンしんちゃん」がインドで人気なのか、分析しているか。
藤本取締役:今後しっかりとマーケティングしていきたいと考えている。以前の会見で「おぼっちゃまくん」の展開をインドでやらせていただくと話をしたが、あのように屈託のない、まさに日本経済のバブル時代を描いた作品が、近年経済成長を遂げているインドと非常にマッチしたのではないかとソニー・ピクチャーズさんもおっしゃっていた。今後もしっかりとインドで展開していきたい。
※「全スーパー戦隊展」に関連して、「スーパー戦隊シリーズ」が今年で50周年を迎えるが、その魅力は。
西社長:「スーパー戦隊シリーズ」はテレビ朝日と東映で作っている唯一無二のもので歴史的にも数々のヒット作がある。それをずっと守り続けてきたことが一番大きいのではないかと思う。また、新シリーズを毎年のように出していることも視聴者の皆様に長く支えていただいた要因の一つかと思う。さらなる飛躍を求めて、新シリーズにはどんどん挑戦したいと思う。
※今後「スーパー戦隊シリーズ」の海外展開にかける期待や思いは。
西社長:「クレヨンしんちゃん」は約50カ国、「ドラえもん」は約70カ国で展開していると思う。「スーパー戦隊シリーズ」も含め、我々としては持っているIPをどんどん海外に展開したい気持ちがとても強くある。