社長定例会見
篠塚浩社長 社長会見(11月26日)の要旨
2024-11-26
※視聴率に関する社長所感。
篠塚社長: 年間の視聴率は、個人全体で、全日・ゴールデン・プライムの三冠、世帯では全日・プライムが1位、ゴールデンが民放1位で推移している。残すところあと1ヶ月、ラストスパートをかけたい。こうした中で、一昨日まで放送をしていた「世界野球プレミア12」が高い視聴率を獲得した。開幕戦のオーストラリア戦の視聴率が個人全体で6.5%、ここを皮切りにスーパーラウンド進出を決めたキューバ戦が8.3%、スーパーラウンド初戦のアメリカ戦が9.2%、そして一昨日の決勝の台湾戦が10.9%を獲得した。日本代表は惜しくも敗れたが、大型スポーツとテレビとの親和性を今回も示せたと思う。さらに、今月6日のアメリカ大統領選は、「大下容子ワイド!スクランブル」を拡大した6時間にわたる番組で、NHKを含む全局の中で同時間帯1位を獲得した。衆議院選挙の開票特番でも民放トップだったことを含め、日ごろから多くの視聴者に支持をいただいている当社の報道情報番組の成果が、こうした特別番組にも表れていると感じる。年末年始の編成は、「ザワつく!大晦日」「相棒元日スペシャル」「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」など、おなじみの豪華なラインナップを揃えている。ぜひご期待いただければと思う。そして、「劇場版ドクターX」が来月6日に公開される。大門未知子のファイナルであると同時に、西田敏行さんの遺作となるスケールの大きい感動的な作品だ。ぜひ多くの方にご覧いただき、その姿を目に焼き付けていただきたい。最後に、7月に発生したマスター障害に関してだ。今月8日にプレスリリースしたように、マスター設備内にあるネットワークスイッチでエラーが発生し、その結果、3系統ある番組サーバーが全て制御不能となり、当社ではCMが送出できず、BS朝日では番組・CMとも送出が不可能となった。メモリーエラーの原因について、設備メーカーからは「中性子線の影響が原因であると判断」との報告があった。この判断に関して、第三者である大学や民間の研究所などの専門機関にヒアリングした結果、メーカー側の見解と概ね一致していたことから、当社として「中性子線の衝突によりメモリーエラーが発生したと判断するのが妥当」との認識に至った。再発防止策として、同じような事象が発生しても放送が継続できるよう、二重三重の対策を施した。視聴者やアドバタイザー、関係者の方々に大変ご迷惑をおかけしたことを改めてお詫び申し上げる。
※最新の視聴率について。
西常務: まず、個人の年間は、全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.3%で1位タイ、プライムが5.3%で1位、プライム2が1.8%で2位となっている。世帯の年間は、全日が6.4%で1位、ゴールデンが8.9%で民放1位、プライムが9.0%で1位、プライム2が3.5%で2位という状況だ。続いて、個人の年度は、全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.2%で1位タイ、プライムが5.2%で1位、プライム2が1.8%で2位となっている。年度の世帯は、全日が6.3%で1位、ゴールデンが8.8%で民放1位、プライムが8.9%で1位、そしてプライム2が3.4%で2位という状況だ。
※営業状況について。
橋本取締役: 10月、11月、12月の営業状況を申し上げる。まず10月は、前年比で106.6%での着地となっている。内訳は、タイムが前年比で107.5%、スポットが105.9%だった。タイムは、「FIFAワールドカップ2026アジア最終予選」のオーストラリア戦や「SMBC日本シリーズ第5戦」も放送対応できたため、これらの売上がプラスに働いて、前年を上回った。スポットは、東京地区の出稿高が前年比105.2%と、上期からの良い流れが継続した。在京5局間のシェアは、昨年の実績を0.2ポイントほど上回り23.8%、歴代2位の記録で着地となっている。続いて11月は、タイムが前年比で108.2%、スポットが108.9%でトータル108.6%となっている。12月はタイムが前年比で94.1%、スポットが106.8%、トータルではまだ101.0%という水準にある。タイムでは「世界野球プレミア12」からの増収があった。そして、12月もセールスはレギュラー、単発とも好調で、年末の特番も含めてほぼ売り切っている。スポットの市況は、引き続き活況といえる。東京地区への広告投下は11月が105%台、12月が104%台を見込んでいる。いずれの月においてもシェアを引き続き伸ばしていく状況だ。好調業種は、「情報・通信」、「自動車関連」、「食品」が挙げられる。
※放送外収入について。
藤本取締役: まずは、「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2024」をご紹介する。1967年にスイス・モントルーにて初開催された世界三大ジャズ・フェスティバルに数えられる「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の日本版が、コロナ禍を経て約5年ぶりに横浜のぴあアリーナMMを舞台に復活する。ハービー・ハンコックをはじめ、国内外のトップミュージシャンが、国籍や世代、音楽ジャンルを超えて白熱のパフォーマンスを繰り広げる。続いて、羽生結弦のアイスショーに関して報告する。氷上の表現者として唯一無二の存在で、活躍を続ける羽生結弦が、当社とともに取り組んだ“アイスストーリー”の第3弾「Echoes of Life」を開催。12月に埼玉、1月に広島、2月には千葉で全7公演が行われる。全編、羽生氏による書き下ろしだ。生きることをテーマに、その本質を問う内容となっている。12月7日と9日の埼玉公演の様子はCSテレ朝チャンネルにて生中継、全国の映画館でライブ・ビューイングを行う。また、12月7日の公演に関しては、Beyond LIVEを使って中国、ロシア、北朝鮮を除く全世界への配信を実施し、中国に関しては、12月7日と9日の2日間、中国版のTikTokである抖音(Douyin)公式アカウントから、PPV配信も決定している。続いて、「高嶋ちさ子のザワつく!昭和歌謡祭2024」をご紹介する。昨今、Z世代の人気も高まっている昭和歌謡だが、「ザワつく!音楽会」の特別企画として、12月9日に国立代々木競技場の第一体育館にて開催する。番組レギュラー陣に加え、昭和歌謡を彩った早見優さんやジュディ・オングさんなど豪華ゲストを迎え、名曲を披露していただく予定だ。最後に、タイの制作プロダクションGMMTVのファンミーティング「GMMTV FAN FEST」を紹介する。2022年に初開催され、今回で3回目だ。来年2025年1月13日に東京ガーデンシアターにて開催を予定している。「GMMTVの3本柱(スリー・ピラーズ)」と呼ばれる3ペアと、過去にテレビ朝日で放送した「消えた初恋」のタイ版のリメイクで主演を演じた2人、ジェミナーとフォースも出演する予定となっている。
※TELASA、ABEMAと出資映画について。
西常務:まずTELASA関連のトピックスから。先月に続き、ドラマ・バラエティーと連動したオリジナルコンテンツを続々と配信しており、新規会員の獲得に大きく貢献してくれている状況だ。12月にCSで生中継する羽生結弦さんのアイスイベントも、TELASAだけで見られる貴重なマルチアングル映像を年末より配信する予定だ。昨年も非常に好評いただいた企画なので、今年も多くの方々に羽生さんの世界観をぜひお楽しみいただければと思う。続いてABEMA関連について。ABEMAのWAUは現在平均2,500万前後で推移しており、引き続き高い水準を維持している。MLBの中継は終了したが、ABEMA NEWSや恋愛リアリティー、アニメなどの定番コンテンツが安定した数字を記録していることに加えて、大相撲が大きく数字を伸ばしたことが好調の要因だと考えている。出資映画だが、12月6日にいよいよ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の集大成となる「劇場版ドクターX」が公開になる。大門未知子のルーツが明らかとなるファイナルにふさわしい、大変スケール感のある作品ということだ。ぜひご期待いただければと思う。
※2024年の振り返りと年末年始の目玉番組について。
篠塚社長: まだ振り返るには少し早い気もするが、年内最後の会見ということで。印象に残っているのは、まず元日の能登半島地震と、1月2日の羽田の事故だ。その中でも、能登半島地震に関しては、9月の豪雨被害もあり、大変復旧が遅れている状況だ。先週の「報道ステーション」でも取り上げ、引き続き現状を随時報道する形になると思うが、取材・放送を続けていかなければいけないと思っている。災害報道という意味で言うと、8月の南海トラフの地震臨時情報。これは、皆さんもそうだと思うが、私たち放送事業者にとっても初めての経験で、難しい対応を迫られた。当社はANN系列だけでやっていると聞いているが、年一回、系列24社全社の番組審議会の委員長が東京に集まり、会議を開いている。今年は先月10月に開催し、テーマは「地上波放送に求められる災害気象報道の在り方」で、活発な議論が行われた。系列全体での取り組みを一層強化していきたいと思っている。報道以外では、今年は当社の開局65周年にあたる年なので、「世界野球プレミア12」、あるいは「劇場版ドクターX」もその中に入るが、数々の大型番組、あるいは大型イベントをお届けできたということが大変印象に残っている。最後に、マスター障害だ。放送事業者としてはあってはならない事案であり、障害が長時間続いてしまったことについて、改めて視聴者の皆様、アドバタイザーの皆様、関係者の皆様にお詫びをしたいと思う。年末年始番組については西常務からお伝えする。
西常務:年末年始はやはり特別な時間で、この時期ならではの、この時期が来たと実感していただけるような、そういう定番コンテンツをお届けすることで、リラックスしてテレビを楽しんでいただければというのが当社の方針だ。年越しは6年連続となる「ザワつく!大晦日」を過去最長、年をまたいでの8時間の枠を予定している。そして、元日は「相棒season23」の元日スペシャル、2日は「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」と、これまで通り老若男女の皆様に楽しんでいただける定番の大型コンテンツを多数ラインナップしているので、ぜひご期待いただければと思う。
※大晦日の特番は、6年連続で「ザワつく!大晦日」を放送するが、何が支持されていると考え、今年も編成するのか。
西常務:「ザワつく!金曜日」は3人の出演者とサバンナ高橋さんとの絶妙なトークバランスが非常に面白いのだろうと考えている。実際、年間視聴率でも当社のバラエティ部門で1位を獲得している。支えていただいた多くの視聴者の皆さまに感謝の気持ちを込めて、1年最後の締めの大晦日に、一番支持をいただいた番組を放送するのが良いと考え編成した。また「ザワつく!金曜日」はコンサートや、番組以外にもイベントを展開している。番組配信、コンサート、イベント等々、本当に多くの方々にご支持いただいていることから、当社としてはその感謝の気持ちを込めて、大晦日にしっかりと長尺で番組の面白さを堪能していただき、年をまたいで来年また見ていただきたい、と考えている。
※マスター障害の件で、なぜテレビ朝日だけで起きたのか、加えて本当に再発防止できるものなのか、その2点を伺いたい。
篠塚社長: 他社の状況がどうか分からないため、なぜテレビ朝日だけというのは私から申し上げられない。中性子線によるメモリーエラーというのは極めて稀ではあるものの、基本的には防ぎようのないものだと聞いている。そのため、再発防止に関しては、たとえそれが起きても放送系に影響を与えないよう、二重三重の対策を取った。
※マスター障害で3つともサーバー系統が落ちてしまったことについて、何か分かっていることはあるのか。
篠塚社長:サーバー3系統というのは放送系であり、今回誤作動を起こしたネットワークスイッチというのは監視系である。そのネットワークスイッチがそれぞれの3系統あるサーバーに繋がっていた。監視系の方でループ障害を起こしたため、そこから大量の情報が流れて、それに繋がっていた3系統がそれぞれ動かなくなったということだ。
※監視系は1系統しかなかったのか。
篠塚社長:監視系も2系統あるが、1つのメモリーエラーで2系統とも障害を起こしたということだ。中性子線によるメモリーエラーは100%は避けられないため、今後は起きてもそれぞれのサーバーに影響がないよう再発防止策を取った形だ。
※タレントの松本人志さんが名誉毀損の訴訟を取り下げたが、今後のテレビ朝日の起用方針は?何か事務所側から説明はあったか。
篠塚社長:裁判について当社としてコメントすることはない。
西常務:現在はご出演の予定はない。当初より吉本興業の幹部が来社し、この事案についての報告は受けていた。また今回の訴訟取り下げ後にも、改めてその幹部が来社し、その報告とお騒がせしたことに対するお詫びがあった。
※先方から、今後の番組復帰や意向について何か話があったか。
西常務:今後のことに関しては、まだ何も決まっていないという説明を受けた。
※松本人志さん起用の判断についてテレビ朝日の考えを教えてほしい。
西常務:基本的には現場が企画内容に沿って判断の上、タレントを起用するということだが、現在松本さんは活動休止中のためコメントすることはできない。
※起用の条件というのはあるのか。
西常務:本人が活動を再開するのかどうか、まずはそこからだ。
※テレビ朝日は吉本興業の株主でもあるが、吉本興業への株主としての働きかけについて教えてほしい。
西常務:吉本興業からはその都度、今回の事案については報告を受けている。今後も我々は株主として当然説明を求めていくことはあるだろう。事態の推移をしっかりと注視しながら、総合的に判断していきたい。
※裁判が取り下げになったことにより、真偽が分からなくなっているが、その点を踏まえてどのようなスタンスで臨むのか。事実の解明は求めていくつもりなのか。
篠塚社長:当社ではレギュラー番組が現状ないという状況であることを考えると、そういった話し合いにはならない方向。ただ我々は株主であるので、その都度報告を受けて、説明を求めることもあるだろう。
※事実関係の説明はすでに済んでいるのか、これからなのか。
西常務:やり取りに関しての詳細は控えさせてもらう。
※旧ジャニーズ問題を受けて、各社人権方針等を定めて、人権倫理の観点を含めてかなり力を入れてきている。松本人志さんの問題についてはどう考えているか。
篠塚社長:人権方針では、個人の尊厳や人格を傷つけるあらゆるハラスメント行為を認めないと表明している。この人権方針に沿って、吉本興業とは会話をさせていただいている。その詳細については、申し上げることはできない。
※NHKがSTARTO ENTERTAINMENT社のアーティストの新規起用を再開すると発表したが、今年の「紅白歌合戦」の出場者にSTARTO ENTERTAINMENT社所属のアーティストはいなかった。その受け止めは?また、今後のテレビ朝日の起用方針に何か変更はあるか。
篠塚社長:他社のことについてコメントできることはない。当社に関しては、企画内容に沿って、その都度総合的に判断していくというこれまでの方針に全く変更はない。
※旧ジャニーズ事務所問題だが、10月に放送されたNHKスペシャルで補償本部長との電話のやりとりが物議を醸した。あのようなやりとりが放送されたのを受けて、SMILE-UP.社とのやりとりに影響はでたのか?また問い合わせをしたのか。
西常務:その都度、話をしているが、SMILE-UP.社から報告をいろいろ受けているので、特にスタンスは変わっていない。
篠塚社長:前回の会見でも話したが、補償本部長は更迭されて、東山社長が当事者の方にお詫びをしたという話を聞いている。
※今回の兵庫県知事選では、投票の判断材料にSNSを使ったという方が増えた。この結果を受けて、SNSがテレビ・新聞といったオールドメディアに勝ったという指摘も一部ある。テレビ報道側からすると、どのような見解か。
篠塚社長: SNSを中心に様々な情報や意見が色々な方から発信されることは、もう当たり前のことだ。そのSNSが選挙に活用されることも、アメリカ大統領選ではかなり前から行われており、世界的に見ても常識だと思っている。一方で、発信される情報の中に誤りがあったり、人々が受け取る情報が偏ってしまったりという問題も世界的に指摘されている。
我々の選挙報道については、毎回色々なテーマや反省材料が出てきて、選挙ごとに反省して次回に生かし進化させているが、今回は告示後の選挙期間中の情報量が少なかったというご指摘が多かったと思う。当社には地上波・衛星波のみならず、ABEMA NEWSがあり、YouTubeの「ANNnewsチャンネル」の登録者数は430万人を超えている。「テレ朝news」のTikTokのフォロワーは420万人だ。地上波や衛星波を含めてこうした色々なプラットフォームを通じて、いかにしっかりとした情報をお届けできるか。発信するだけではなく、どうやったら見ていただけるか、どれだけ届けられるか、さらに言えばどのように拡散させていけるか、ということも含めて今後しっかりと検討していきたいと思う。
※先週の民放連会長会見でも、選挙期間中の報道のあり方や、必要に応じて報道委員会でも議論していく可能性なども言及された。テレビ朝日の選挙報道では、普段から色々と試行錯誤を重ねているとのことだが、今後も何か考える場を設けるのか。
篠塚社長:選挙報道というのは日頃の営みであり、私も40年近く報道をやってきたが、選挙報道のたびに色々な反省材料があって、それを生かしていくという歴史でもある。今回色々なご指摘がある中で、今後どうしていくかということは当然考えていかなくてはならない。ただ、それは地上波に限らずということになってくると思う。地上波をご覧いただいていない方々にも、我々の情報をいかに届けるか、どうやったら届けられるかということを考えなくてはいけないと思う。
※テレビ朝日を含め、選挙報道の絶対量が減ったという指摘がされているが。
篠塚社長:そういう指摘はあるが、実際、数字で示されたところはないと思う。自分の感覚では、絶対量もそんなに変わっていないと思っている。例えば、今回の衆議院選挙にしても、「羽鳥慎一モーニングショー」や「報道ステーション」を中心に、公示前・公示後を含め、特に公示前までは政策論に関して相当突っ込んだ企画を放送している。他の番組もそうだ。兵庫県知事選挙において報道量が少なかったという指摘を受けているが、兵庫県知事選なので、東京のテレビ局としては大阪のテレビ局がどのように扱っていたかは把握していない。ただ、今回の兵庫県知事選挙が全国的な関心があったという意味で言えば、全国ネットにおいて、確かに告示後に扱いが少なかったのは確かだ。今後、それぞれのローカルの選挙を扱っていくわけにもいかないので、注目度に応じて色々と考えていかなくてはいけないと思う。
※テレビや新聞の影響力が低下していると感じるか。
篠塚社長:それぞれ個別に考えた方がいいのでは。あまりメディアというものを一括りにして議論しない方がよいと思う。地上波のPUTの減少傾向は微減だが続いている。一方で、我々にはYouTubeに430万人の登録者がいて、TikTokにも420万人のフォロワーがいる。
地上波・衛星波だけで情報を出しているわけではないので、そういうものを含めて、トータルでどれだけ我々の情報をリーチさせられるかを考えていくことになると思う。当然、地上波が第一となるが、それを補完するというところから言えば、ABEMA NEWSはもちろん、YouTubeやTikTok、XなどのSNSを駆使しながら、編集を伴うしっかりとした情報をお伝えしていくということは、我々の役割だと思っている。
※兵庫県知事選の流れを見ていると、マスコミが流す情報が、一種のSNS独特のナラティブみたいなものに絡めとられてしまうというような現象もあったと思う。SNS空間における情報のあり方に対して、何か構想みたいなものはあるか。
篠塚社長:情報発信自体は止められるものではないし、逆に言えば、情報の多元性というのは歓迎されてもいい世界だと思う。ナラティブが出来上がっているケースも、そうではないケースもある。SNSの発信が社会にとって有益である場合もあるし、そうではない可能性もある。誤情報や、いわゆる「エコーチェンバー」、「フィルターバブル」のような世界というのはあるわけだが、我々だけで何かできるかというと、なかなか難しいと思っている。だからこそ、我々がまず今の段階で、この先いろいろ考えなくてはいけないと思う。確かに選挙期間中に我々の情報がネット上でも少なかったというのはその通りだと思う。まずは、これは皆様方の課題でもあると思うのだが、しっかりした情報を地上波や衛星波ではリーチできない方々にもリーチできるように情報を出していくこと。そのためには我々の限られたリソースをどう使うかという問題にもなってくるわけだが、それを工夫していかなくてはいけないと思っている。
※世界水泳から撤退するとの報道があったが、今後の放送について。
篠塚社長:来年のシンガポール大会は当社で放送する。
※再来年以降も放送を続けていく予定か。
篠塚社長:先の話はまだ決まっていない。
※年間の視聴率が個人三冠の可能性が高まっている。従来、世帯視聴率が強いイメージだが、個人視聴率がこれだけ強くなってきているのはどうしてか。
篠塚社長:まだ1カ月あり、これからの闘いが大事だ。三冠が決まったわけでも何でもなく、これから我々はさらに1カ月間頑張っていかなくてはいけないというスタンスだ。特に世帯視聴率が強いというような印象を私は持っていない。
西常務:当社は、老若男女、テレビの前に座って見ていただける方、全ての方にこのコンテンツを届けたいという方針でずっとやっている。視聴率がとれるということは、年齢層も含めて幅広い方にご支持いただいているということだと自分たちは理解している。
※今年、三冠が獲れそうな最大の理由は。
西常務:結果はわからないが、「報道ステーション」という我々の看板と、土曜日の「サタデーステーション」、新しく始まった「有働Times」、これでプライム帯にニュースベルトが一つ完成しているが、これはテレビ朝日オリジナルの編成でここが全体を牽引している。
さらに朝の「グッド!モーニング」と「羽鳥慎一モーニングショー」、それから「大下容子ワイド!スクランブル」、そして「スーパーJチャンネル」もそうだが、ほぼ全てのベルト番組がトップの数字を確保している。やはりベルト番組がある程度の間隔で編成されていて数字がいいと、その間の番組が引っ張られて、よい縦流れの編成が出来る。そしてこの10月クールも民放ドラマで1位の「相棒season23」や「ザ・トラベルナース」などのドラマがしっかり好調をキープできている。そこにバラエティと、大型スポーツ案件、冒頭あった「世界野球プレミア12」など国民みんなで応援できるような世界大会をしっかり中継できている、というように、あらゆるジャンルのものが全ていい成績が取れたときに全体の成績もついてくるという認識を持っている。
篠塚社長:要因は一つではなく、全てのジャンルでスタッフが頑張ってくれている。その結果が今の数字に出ているということだと思う。
※テレビ朝日の場合、数字は獲れているが、それがそのまま売上に返ってくるわけじゃないということをよく聞く。それは単価の問題なのかと思うが、その辺、例えば三冠を獲って業界の首位に立つことで状況が変わってくるのか。単価を上げていくためにはどうしたらいいか議論しているのか。
橋本取締役:おっしゃるとおりで、その時の視聴率がそのままそっくり売上に反映されるというわけではない。ただし、時間が経てばそれは起こってくるわけで、例えばテレビ朝日で言うと、いまシェアが伸びている。特にこの7月頃から顕著にスポットのシェアが伸びているが、それはやはり現在の視聴率及び“未来視聴率”がおそらく高かろうという想像ができる。すると実際に放送がされた時に、買い付けた時の理論数字と乖離が狭まっていくのがわかる。そうすると買いやすいとなって、寄り付きがいいという話になる。これが今、連続しているので、毎月少しずつだがシェアが上がっていっているという状況だ。それとは別に、タイムというのが大体売り上げの50%を占めるのだが、ここの部分は半年に一回の料金交渉で、長年にわたって同じ番組枠を提供している会社があるので、そこの入れ替えというか、新陳代謝が随分とスローだ。よって、放送局の実力をその瞬間瞬間で理解する上で、やはりスポットの数字・シェアを見るのが正しくて、その意味では明らかにそのメカニズムは作用していると思う。
※今後さらに期待できるということか。
橋本取締役:私は上げていくつもりでやっている。
篠塚社長:一点ご確認いただきたいのは、現状でも放送事業収入は民放2位で、それからスポットのシェアも2位であるということだ。それこそネット上の言説ではいろいろなご批判を書かれているところがあって、事実誤認もあるようなので、改めて申し上げたい。
※まさに視聴率競争の一方で、他社のドラマを見ていると、配信を意識したものがかなり増えてきている印象だ。特にTBSがそうだが、その配信について、放送業界の先行き・見通しが厳しくなってきている中で、来年以降どう考えているのか。
篠塚社長:来年は経営計画の3年目だが、その中心はやはり360°戦略で、コンテンツが中心にあり色々な展開をしていく。当然メインは地上波、衛星波だが、配信やイベント等も含めて、一つのコンテンツをマルチに活用していくという方針には変わりはない。その中で、今年の状況を見る限り、地上波はある程度盛り返しているため、地上波の数字を獲り、配信も回し、イベントでファンの皆さんには喜んでいただきたい。色々なタッチポイントを作っていくという形に変更はない。
篠塚社長: 年間の視聴率は、個人全体で、全日・ゴールデン・プライムの三冠、世帯では全日・プライムが1位、ゴールデンが民放1位で推移している。残すところあと1ヶ月、ラストスパートをかけたい。こうした中で、一昨日まで放送をしていた「世界野球プレミア12」が高い視聴率を獲得した。開幕戦のオーストラリア戦の視聴率が個人全体で6.5%、ここを皮切りにスーパーラウンド進出を決めたキューバ戦が8.3%、スーパーラウンド初戦のアメリカ戦が9.2%、そして一昨日の決勝の台湾戦が10.9%を獲得した。日本代表は惜しくも敗れたが、大型スポーツとテレビとの親和性を今回も示せたと思う。さらに、今月6日のアメリカ大統領選は、「大下容子ワイド!スクランブル」を拡大した6時間にわたる番組で、NHKを含む全局の中で同時間帯1位を獲得した。衆議院選挙の開票特番でも民放トップだったことを含め、日ごろから多くの視聴者に支持をいただいている当社の報道情報番組の成果が、こうした特別番組にも表れていると感じる。年末年始の編成は、「ザワつく!大晦日」「相棒元日スペシャル」「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」など、おなじみの豪華なラインナップを揃えている。ぜひご期待いただければと思う。そして、「劇場版ドクターX」が来月6日に公開される。大門未知子のファイナルであると同時に、西田敏行さんの遺作となるスケールの大きい感動的な作品だ。ぜひ多くの方にご覧いただき、その姿を目に焼き付けていただきたい。最後に、7月に発生したマスター障害に関してだ。今月8日にプレスリリースしたように、マスター設備内にあるネットワークスイッチでエラーが発生し、その結果、3系統ある番組サーバーが全て制御不能となり、当社ではCMが送出できず、BS朝日では番組・CMとも送出が不可能となった。メモリーエラーの原因について、設備メーカーからは「中性子線の影響が原因であると判断」との報告があった。この判断に関して、第三者である大学や民間の研究所などの専門機関にヒアリングした結果、メーカー側の見解と概ね一致していたことから、当社として「中性子線の衝突によりメモリーエラーが発生したと判断するのが妥当」との認識に至った。再発防止策として、同じような事象が発生しても放送が継続できるよう、二重三重の対策を施した。視聴者やアドバタイザー、関係者の方々に大変ご迷惑をおかけしたことを改めてお詫び申し上げる。
※最新の視聴率について。
西常務: まず、個人の年間は、全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.3%で1位タイ、プライムが5.3%で1位、プライム2が1.8%で2位となっている。世帯の年間は、全日が6.4%で1位、ゴールデンが8.9%で民放1位、プライムが9.0%で1位、プライム2が3.5%で2位という状況だ。続いて、個人の年度は、全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.2%で1位タイ、プライムが5.2%で1位、プライム2が1.8%で2位となっている。年度の世帯は、全日が6.3%で1位、ゴールデンが8.8%で民放1位、プライムが8.9%で1位、そしてプライム2が3.4%で2位という状況だ。
※営業状況について。
橋本取締役: 10月、11月、12月の営業状況を申し上げる。まず10月は、前年比で106.6%での着地となっている。内訳は、タイムが前年比で107.5%、スポットが105.9%だった。タイムは、「FIFAワールドカップ2026アジア最終予選」のオーストラリア戦や「SMBC日本シリーズ第5戦」も放送対応できたため、これらの売上がプラスに働いて、前年を上回った。スポットは、東京地区の出稿高が前年比105.2%と、上期からの良い流れが継続した。在京5局間のシェアは、昨年の実績を0.2ポイントほど上回り23.8%、歴代2位の記録で着地となっている。続いて11月は、タイムが前年比で108.2%、スポットが108.9%でトータル108.6%となっている。12月はタイムが前年比で94.1%、スポットが106.8%、トータルではまだ101.0%という水準にある。タイムでは「世界野球プレミア12」からの増収があった。そして、12月もセールスはレギュラー、単発とも好調で、年末の特番も含めてほぼ売り切っている。スポットの市況は、引き続き活況といえる。東京地区への広告投下は11月が105%台、12月が104%台を見込んでいる。いずれの月においてもシェアを引き続き伸ばしていく状況だ。好調業種は、「情報・通信」、「自動車関連」、「食品」が挙げられる。
※放送外収入について。
藤本取締役: まずは、「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2024」をご紹介する。1967年にスイス・モントルーにて初開催された世界三大ジャズ・フェスティバルに数えられる「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の日本版が、コロナ禍を経て約5年ぶりに横浜のぴあアリーナMMを舞台に復活する。ハービー・ハンコックをはじめ、国内外のトップミュージシャンが、国籍や世代、音楽ジャンルを超えて白熱のパフォーマンスを繰り広げる。続いて、羽生結弦のアイスショーに関して報告する。氷上の表現者として唯一無二の存在で、活躍を続ける羽生結弦が、当社とともに取り組んだ“アイスストーリー”の第3弾「Echoes of Life」を開催。12月に埼玉、1月に広島、2月には千葉で全7公演が行われる。全編、羽生氏による書き下ろしだ。生きることをテーマに、その本質を問う内容となっている。12月7日と9日の埼玉公演の様子はCSテレ朝チャンネルにて生中継、全国の映画館でライブ・ビューイングを行う。また、12月7日の公演に関しては、Beyond LIVEを使って中国、ロシア、北朝鮮を除く全世界への配信を実施し、中国に関しては、12月7日と9日の2日間、中国版のTikTokである抖音(Douyin)公式アカウントから、PPV配信も決定している。続いて、「高嶋ちさ子のザワつく!昭和歌謡祭2024」をご紹介する。昨今、Z世代の人気も高まっている昭和歌謡だが、「ザワつく!音楽会」の特別企画として、12月9日に国立代々木競技場の第一体育館にて開催する。番組レギュラー陣に加え、昭和歌謡を彩った早見優さんやジュディ・オングさんなど豪華ゲストを迎え、名曲を披露していただく予定だ。最後に、タイの制作プロダクションGMMTVのファンミーティング「GMMTV FAN FEST」を紹介する。2022年に初開催され、今回で3回目だ。来年2025年1月13日に東京ガーデンシアターにて開催を予定している。「GMMTVの3本柱(スリー・ピラーズ)」と呼ばれる3ペアと、過去にテレビ朝日で放送した「消えた初恋」のタイ版のリメイクで主演を演じた2人、ジェミナーとフォースも出演する予定となっている。
※TELASA、ABEMAと出資映画について。
西常務:まずTELASA関連のトピックスから。先月に続き、ドラマ・バラエティーと連動したオリジナルコンテンツを続々と配信しており、新規会員の獲得に大きく貢献してくれている状況だ。12月にCSで生中継する羽生結弦さんのアイスイベントも、TELASAだけで見られる貴重なマルチアングル映像を年末より配信する予定だ。昨年も非常に好評いただいた企画なので、今年も多くの方々に羽生さんの世界観をぜひお楽しみいただければと思う。続いてABEMA関連について。ABEMAのWAUは現在平均2,500万前後で推移しており、引き続き高い水準を維持している。MLBの中継は終了したが、ABEMA NEWSや恋愛リアリティー、アニメなどの定番コンテンツが安定した数字を記録していることに加えて、大相撲が大きく数字を伸ばしたことが好調の要因だと考えている。出資映画だが、12月6日にいよいよ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の集大成となる「劇場版ドクターX」が公開になる。大門未知子のルーツが明らかとなるファイナルにふさわしい、大変スケール感のある作品ということだ。ぜひご期待いただければと思う。
※2024年の振り返りと年末年始の目玉番組について。
篠塚社長: まだ振り返るには少し早い気もするが、年内最後の会見ということで。印象に残っているのは、まず元日の能登半島地震と、1月2日の羽田の事故だ。その中でも、能登半島地震に関しては、9月の豪雨被害もあり、大変復旧が遅れている状況だ。先週の「報道ステーション」でも取り上げ、引き続き現状を随時報道する形になると思うが、取材・放送を続けていかなければいけないと思っている。災害報道という意味で言うと、8月の南海トラフの地震臨時情報。これは、皆さんもそうだと思うが、私たち放送事業者にとっても初めての経験で、難しい対応を迫られた。当社はANN系列だけでやっていると聞いているが、年一回、系列24社全社の番組審議会の委員長が東京に集まり、会議を開いている。今年は先月10月に開催し、テーマは「地上波放送に求められる災害気象報道の在り方」で、活発な議論が行われた。系列全体での取り組みを一層強化していきたいと思っている。報道以外では、今年は当社の開局65周年にあたる年なので、「世界野球プレミア12」、あるいは「劇場版ドクターX」もその中に入るが、数々の大型番組、あるいは大型イベントをお届けできたということが大変印象に残っている。最後に、マスター障害だ。放送事業者としてはあってはならない事案であり、障害が長時間続いてしまったことについて、改めて視聴者の皆様、アドバタイザーの皆様、関係者の皆様にお詫びをしたいと思う。年末年始番組については西常務からお伝えする。
西常務:年末年始はやはり特別な時間で、この時期ならではの、この時期が来たと実感していただけるような、そういう定番コンテンツをお届けすることで、リラックスしてテレビを楽しんでいただければというのが当社の方針だ。年越しは6年連続となる「ザワつく!大晦日」を過去最長、年をまたいでの8時間の枠を予定している。そして、元日は「相棒season23」の元日スペシャル、2日は「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」と、これまで通り老若男女の皆様に楽しんでいただける定番の大型コンテンツを多数ラインナップしているので、ぜひご期待いただければと思う。
※大晦日の特番は、6年連続で「ザワつく!大晦日」を放送するが、何が支持されていると考え、今年も編成するのか。
西常務:「ザワつく!金曜日」は3人の出演者とサバンナ高橋さんとの絶妙なトークバランスが非常に面白いのだろうと考えている。実際、年間視聴率でも当社のバラエティ部門で1位を獲得している。支えていただいた多くの視聴者の皆さまに感謝の気持ちを込めて、1年最後の締めの大晦日に、一番支持をいただいた番組を放送するのが良いと考え編成した。また「ザワつく!金曜日」はコンサートや、番組以外にもイベントを展開している。番組配信、コンサート、イベント等々、本当に多くの方々にご支持いただいていることから、当社としてはその感謝の気持ちを込めて、大晦日にしっかりと長尺で番組の面白さを堪能していただき、年をまたいで来年また見ていただきたい、と考えている。
※マスター障害の件で、なぜテレビ朝日だけで起きたのか、加えて本当に再発防止できるものなのか、その2点を伺いたい。
篠塚社長: 他社の状況がどうか分からないため、なぜテレビ朝日だけというのは私から申し上げられない。中性子線によるメモリーエラーというのは極めて稀ではあるものの、基本的には防ぎようのないものだと聞いている。そのため、再発防止に関しては、たとえそれが起きても放送系に影響を与えないよう、二重三重の対策を取った。
※マスター障害で3つともサーバー系統が落ちてしまったことについて、何か分かっていることはあるのか。
篠塚社長:サーバー3系統というのは放送系であり、今回誤作動を起こしたネットワークスイッチというのは監視系である。そのネットワークスイッチがそれぞれの3系統あるサーバーに繋がっていた。監視系の方でループ障害を起こしたため、そこから大量の情報が流れて、それに繋がっていた3系統がそれぞれ動かなくなったということだ。
※監視系は1系統しかなかったのか。
篠塚社長:監視系も2系統あるが、1つのメモリーエラーで2系統とも障害を起こしたということだ。中性子線によるメモリーエラーは100%は避けられないため、今後は起きてもそれぞれのサーバーに影響がないよう再発防止策を取った形だ。
※タレントの松本人志さんが名誉毀損の訴訟を取り下げたが、今後のテレビ朝日の起用方針は?何か事務所側から説明はあったか。
篠塚社長:裁判について当社としてコメントすることはない。
西常務:現在はご出演の予定はない。当初より吉本興業の幹部が来社し、この事案についての報告は受けていた。また今回の訴訟取り下げ後にも、改めてその幹部が来社し、その報告とお騒がせしたことに対するお詫びがあった。
※先方から、今後の番組復帰や意向について何か話があったか。
西常務:今後のことに関しては、まだ何も決まっていないという説明を受けた。
※松本人志さん起用の判断についてテレビ朝日の考えを教えてほしい。
西常務:基本的には現場が企画内容に沿って判断の上、タレントを起用するということだが、現在松本さんは活動休止中のためコメントすることはできない。
※起用の条件というのはあるのか。
西常務:本人が活動を再開するのかどうか、まずはそこからだ。
※テレビ朝日は吉本興業の株主でもあるが、吉本興業への株主としての働きかけについて教えてほしい。
西常務:吉本興業からはその都度、今回の事案については報告を受けている。今後も我々は株主として当然説明を求めていくことはあるだろう。事態の推移をしっかりと注視しながら、総合的に判断していきたい。
※裁判が取り下げになったことにより、真偽が分からなくなっているが、その点を踏まえてどのようなスタンスで臨むのか。事実の解明は求めていくつもりなのか。
篠塚社長:当社ではレギュラー番組が現状ないという状況であることを考えると、そういった話し合いにはならない方向。ただ我々は株主であるので、その都度報告を受けて、説明を求めることもあるだろう。
※事実関係の説明はすでに済んでいるのか、これからなのか。
西常務:やり取りに関しての詳細は控えさせてもらう。
※旧ジャニーズ問題を受けて、各社人権方針等を定めて、人権倫理の観点を含めてかなり力を入れてきている。松本人志さんの問題についてはどう考えているか。
篠塚社長:人権方針では、個人の尊厳や人格を傷つけるあらゆるハラスメント行為を認めないと表明している。この人権方針に沿って、吉本興業とは会話をさせていただいている。その詳細については、申し上げることはできない。
※NHKがSTARTO ENTERTAINMENT社のアーティストの新規起用を再開すると発表したが、今年の「紅白歌合戦」の出場者にSTARTO ENTERTAINMENT社所属のアーティストはいなかった。その受け止めは?また、今後のテレビ朝日の起用方針に何か変更はあるか。
篠塚社長:他社のことについてコメントできることはない。当社に関しては、企画内容に沿って、その都度総合的に判断していくというこれまでの方針に全く変更はない。
※旧ジャニーズ事務所問題だが、10月に放送されたNHKスペシャルで補償本部長との電話のやりとりが物議を醸した。あのようなやりとりが放送されたのを受けて、SMILE-UP.社とのやりとりに影響はでたのか?また問い合わせをしたのか。
西常務:その都度、話をしているが、SMILE-UP.社から報告をいろいろ受けているので、特にスタンスは変わっていない。
篠塚社長:前回の会見でも話したが、補償本部長は更迭されて、東山社長が当事者の方にお詫びをしたという話を聞いている。
※今回の兵庫県知事選では、投票の判断材料にSNSを使ったという方が増えた。この結果を受けて、SNSがテレビ・新聞といったオールドメディアに勝ったという指摘も一部ある。テレビ報道側からすると、どのような見解か。
篠塚社長: SNSを中心に様々な情報や意見が色々な方から発信されることは、もう当たり前のことだ。そのSNSが選挙に活用されることも、アメリカ大統領選ではかなり前から行われており、世界的に見ても常識だと思っている。一方で、発信される情報の中に誤りがあったり、人々が受け取る情報が偏ってしまったりという問題も世界的に指摘されている。
我々の選挙報道については、毎回色々なテーマや反省材料が出てきて、選挙ごとに反省して次回に生かし進化させているが、今回は告示後の選挙期間中の情報量が少なかったというご指摘が多かったと思う。当社には地上波・衛星波のみならず、ABEMA NEWSがあり、YouTubeの「ANNnewsチャンネル」の登録者数は430万人を超えている。「テレ朝news」のTikTokのフォロワーは420万人だ。地上波や衛星波を含めてこうした色々なプラットフォームを通じて、いかにしっかりとした情報をお届けできるか。発信するだけではなく、どうやったら見ていただけるか、どれだけ届けられるか、さらに言えばどのように拡散させていけるか、ということも含めて今後しっかりと検討していきたいと思う。
※先週の民放連会長会見でも、選挙期間中の報道のあり方や、必要に応じて報道委員会でも議論していく可能性なども言及された。テレビ朝日の選挙報道では、普段から色々と試行錯誤を重ねているとのことだが、今後も何か考える場を設けるのか。
篠塚社長:選挙報道というのは日頃の営みであり、私も40年近く報道をやってきたが、選挙報道のたびに色々な反省材料があって、それを生かしていくという歴史でもある。今回色々なご指摘がある中で、今後どうしていくかということは当然考えていかなくてはならない。ただ、それは地上波に限らずということになってくると思う。地上波をご覧いただいていない方々にも、我々の情報をいかに届けるか、どうやったら届けられるかということを考えなくてはいけないと思う。
※テレビ朝日を含め、選挙報道の絶対量が減ったという指摘がされているが。
篠塚社長:そういう指摘はあるが、実際、数字で示されたところはないと思う。自分の感覚では、絶対量もそんなに変わっていないと思っている。例えば、今回の衆議院選挙にしても、「羽鳥慎一モーニングショー」や「報道ステーション」を中心に、公示前・公示後を含め、特に公示前までは政策論に関して相当突っ込んだ企画を放送している。他の番組もそうだ。兵庫県知事選挙において報道量が少なかったという指摘を受けているが、兵庫県知事選なので、東京のテレビ局としては大阪のテレビ局がどのように扱っていたかは把握していない。ただ、今回の兵庫県知事選挙が全国的な関心があったという意味で言えば、全国ネットにおいて、確かに告示後に扱いが少なかったのは確かだ。今後、それぞれのローカルの選挙を扱っていくわけにもいかないので、注目度に応じて色々と考えていかなくてはいけないと思う。
※テレビや新聞の影響力が低下していると感じるか。
篠塚社長:それぞれ個別に考えた方がいいのでは。あまりメディアというものを一括りにして議論しない方がよいと思う。地上波のPUTの減少傾向は微減だが続いている。一方で、我々にはYouTubeに430万人の登録者がいて、TikTokにも420万人のフォロワーがいる。
地上波・衛星波だけで情報を出しているわけではないので、そういうものを含めて、トータルでどれだけ我々の情報をリーチさせられるかを考えていくことになると思う。当然、地上波が第一となるが、それを補完するというところから言えば、ABEMA NEWSはもちろん、YouTubeやTikTok、XなどのSNSを駆使しながら、編集を伴うしっかりとした情報をお伝えしていくということは、我々の役割だと思っている。
※兵庫県知事選の流れを見ていると、マスコミが流す情報が、一種のSNS独特のナラティブみたいなものに絡めとられてしまうというような現象もあったと思う。SNS空間における情報のあり方に対して、何か構想みたいなものはあるか。
篠塚社長:情報発信自体は止められるものではないし、逆に言えば、情報の多元性というのは歓迎されてもいい世界だと思う。ナラティブが出来上がっているケースも、そうではないケースもある。SNSの発信が社会にとって有益である場合もあるし、そうではない可能性もある。誤情報や、いわゆる「エコーチェンバー」、「フィルターバブル」のような世界というのはあるわけだが、我々だけで何かできるかというと、なかなか難しいと思っている。だからこそ、我々がまず今の段階で、この先いろいろ考えなくてはいけないと思う。確かに選挙期間中に我々の情報がネット上でも少なかったというのはその通りだと思う。まずは、これは皆様方の課題でもあると思うのだが、しっかりした情報を地上波や衛星波ではリーチできない方々にもリーチできるように情報を出していくこと。そのためには我々の限られたリソースをどう使うかという問題にもなってくるわけだが、それを工夫していかなくてはいけないと思っている。
※世界水泳から撤退するとの報道があったが、今後の放送について。
篠塚社長:来年のシンガポール大会は当社で放送する。
※再来年以降も放送を続けていく予定か。
篠塚社長:先の話はまだ決まっていない。
※年間の視聴率が個人三冠の可能性が高まっている。従来、世帯視聴率が強いイメージだが、個人視聴率がこれだけ強くなってきているのはどうしてか。
篠塚社長:まだ1カ月あり、これからの闘いが大事だ。三冠が決まったわけでも何でもなく、これから我々はさらに1カ月間頑張っていかなくてはいけないというスタンスだ。特に世帯視聴率が強いというような印象を私は持っていない。
西常務:当社は、老若男女、テレビの前に座って見ていただける方、全ての方にこのコンテンツを届けたいという方針でずっとやっている。視聴率がとれるということは、年齢層も含めて幅広い方にご支持いただいているということだと自分たちは理解している。
※今年、三冠が獲れそうな最大の理由は。
西常務:結果はわからないが、「報道ステーション」という我々の看板と、土曜日の「サタデーステーション」、新しく始まった「有働Times」、これでプライム帯にニュースベルトが一つ完成しているが、これはテレビ朝日オリジナルの編成でここが全体を牽引している。
さらに朝の「グッド!モーニング」と「羽鳥慎一モーニングショー」、それから「大下容子ワイド!スクランブル」、そして「スーパーJチャンネル」もそうだが、ほぼ全てのベルト番組がトップの数字を確保している。やはりベルト番組がある程度の間隔で編成されていて数字がいいと、その間の番組が引っ張られて、よい縦流れの編成が出来る。そしてこの10月クールも民放ドラマで1位の「相棒season23」や「ザ・トラベルナース」などのドラマがしっかり好調をキープできている。そこにバラエティと、大型スポーツ案件、冒頭あった「世界野球プレミア12」など国民みんなで応援できるような世界大会をしっかり中継できている、というように、あらゆるジャンルのものが全ていい成績が取れたときに全体の成績もついてくるという認識を持っている。
篠塚社長:要因は一つではなく、全てのジャンルでスタッフが頑張ってくれている。その結果が今の数字に出ているということだと思う。
※テレビ朝日の場合、数字は獲れているが、それがそのまま売上に返ってくるわけじゃないということをよく聞く。それは単価の問題なのかと思うが、その辺、例えば三冠を獲って業界の首位に立つことで状況が変わってくるのか。単価を上げていくためにはどうしたらいいか議論しているのか。
橋本取締役:おっしゃるとおりで、その時の視聴率がそのままそっくり売上に反映されるというわけではない。ただし、時間が経てばそれは起こってくるわけで、例えばテレビ朝日で言うと、いまシェアが伸びている。特にこの7月頃から顕著にスポットのシェアが伸びているが、それはやはり現在の視聴率及び“未来視聴率”がおそらく高かろうという想像ができる。すると実際に放送がされた時に、買い付けた時の理論数字と乖離が狭まっていくのがわかる。そうすると買いやすいとなって、寄り付きがいいという話になる。これが今、連続しているので、毎月少しずつだがシェアが上がっていっているという状況だ。それとは別に、タイムというのが大体売り上げの50%を占めるのだが、ここの部分は半年に一回の料金交渉で、長年にわたって同じ番組枠を提供している会社があるので、そこの入れ替えというか、新陳代謝が随分とスローだ。よって、放送局の実力をその瞬間瞬間で理解する上で、やはりスポットの数字・シェアを見るのが正しくて、その意味では明らかにそのメカニズムは作用していると思う。
※今後さらに期待できるということか。
橋本取締役:私は上げていくつもりでやっている。
篠塚社長:一点ご確認いただきたいのは、現状でも放送事業収入は民放2位で、それからスポットのシェアも2位であるということだ。それこそネット上の言説ではいろいろなご批判を書かれているところがあって、事実誤認もあるようなので、改めて申し上げたい。
※まさに視聴率競争の一方で、他社のドラマを見ていると、配信を意識したものがかなり増えてきている印象だ。特にTBSがそうだが、その配信について、放送業界の先行き・見通しが厳しくなってきている中で、来年以降どう考えているのか。
篠塚社長:来年は経営計画の3年目だが、その中心はやはり360°戦略で、コンテンツが中心にあり色々な展開をしていく。当然メインは地上波、衛星波だが、配信やイベント等も含めて、一つのコンテンツをマルチに活用していくという方針には変わりはない。その中で、今年の状況を見る限り、地上波はある程度盛り返しているため、地上波の数字を獲り、配信も回し、イベントでファンの皆さんには喜んでいただきたい。色々なタッチポイントを作っていくという形に変更はない。