社長定例会見

篠塚浩社長 社長会見(11月28日)要旨

2023-11-28
※冒頭発言。
篠塚社長:まず上期の決算は増収減益となった。放送事業収入のダウントレンドが続いていることが減益の最大の要因であり、その背景にはマクロの経済状況などいろいろな要素があると思うが、中でもPUTの下落に伴う広告在庫の減少が少なからず影響している。改めてコンテンツに注力して、テレビの魅力を高める地道な努力をしていく。視聴率に関して、残り1か月余りとなった年間視聴率では、個人全体は全日とプライムが1位、ゴールデンが2位、世帯は三冠となっている。経営計画の目標である個人三冠の達成に向けて、残りわずかな期間だが注力していく。旧ジャニーズ事務所の性加害問題については、いわゆる「マスメディアの沈黙」や、当社と事務所との関わり方を検証した特別番組を今月12日に放送した。検証を通じて浮き彫りになった反省すべき点、また、被害者の方々や有識者からいただいた提言を、今後の番組制作にしっかりと生かしていく。
※最新の視聴率について。
西常務:年間視聴率は、個人全体が全日3.5%で日本テレビと並び1位タイ、ゴールデン5.4%で2位、プライム5.4%で1位、そしてプライム2は1.9%で2位となっている。同じく年間の世帯視聴率は全日6.4%で1位、ゴールデン9.1%で1位、プライム9.2%で1位、そしてプライム2が3.5%で2位という状況だ。年度視聴率は、個人全体が全日3.4%で日本テレビと並び1位タイ、ゴールデン5.1%で2位、プライム5.1%でこちらも日本テレビと並んで1位タイ、プライム2が1.8%で2位だ。同じく年度の世帯視聴率は全日6.2%で1位、ゴールデン8.6%で2位、プライム8.8%で1位、そしてプライム2が3.4%で2位となっている。今後の放送予定については、年末にかけて恒例の大型バラエティを編成している。主なものは、12月24日に「M-1グランプリ」、30日には「アメトーーク!」の年末特大スペシャル、大晦日には5年連続となる「ザワつく!大晦日」をお届けする。年始は「相棒」の元日スペシャル、2日に「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」、そして3日と4日には、「松本清張・二夜連続ドラマスペシャル」として「顔」と「ガラスの城」を準備している。ご期待いただければと思う。
※営業状況について。
橋本取締役: まず10月の確定数字からお伝えする。10月の売上は、タイムが前年比で95.0%、スポットが102.4%、トータル99.0%だ。タイムは、昨年「SMBC日本シリーズ」を編成したが、今年はなかったため、その分減収となっている。スポットは地区の平均97.9%を大きく上回って、5局シェアでは前年から1.0ポイント伸ばし23.6%で着地している。続いて、11月のタイムは前年比85.1%、スポットが99.7%で、トータル92.3%という状況だ。12月はタイムが前年比84.2%、スポットが90.5%、トータル87.4%で、現在まだ進んでいるところだ。11月・12月のタイムは、昨年「FIFAワールドカップ」があったため、今年はいずれの月も前年水準を下回る構図となっている。11月・12月のセールス物件としては、恒例の「フィギュアスケートグランプリファイナル」、高校バスケ「Softbankウインターカップ」、日本で初めて開催される「スケートボード世界選手権」もある。また、年末年始の大型単発のセールスも佳境を迎えている。長年、当社が視聴率トップを続けている三が日は、ゴールデンプライム帯で今年も実績のある番組に加え、開局65周年記念「松本清張・二夜連続ドラマスペシャル」等もあり、幅広くセールスを進めている。最後に、スポットについてお伝えする。東京地区の投下量は、10月の97.9%からもう1段下げて、11月・12月ともに90%台半ば以下の段階かなと思っている。引き続き、大手ビール会社の出稿は好調だが、外資を含めたIT通信系大手からの出稿の落ち込みが大きく、これが市況全体を押し下げている状況だ。厳しい市況ではあるが、当社は比較的高い視聴率を誇っているため、広告の在庫量の面では優位にあり、引き続き11月、12月ともにシェアを伸ばしながら前年水準の売上を確保したい考えでいる。
※放送外収入について。
武田副会長:放送外事業のトピックスについて、今回は2件イベントを報告する。1件目は「THEドラえもん展」の海外開催について。2017年に六本木・森アーツセンターで初めて開催され、これまで国内9会場を巡回し、延べ60万人以上のお客さまを動員しているが、昨年11月から今年の2月にかけて初めての海外開催としてシンガポールで開催した。そして今年は、海外開催の第2弾ということで、台湾での開催が決定している。期間はこの12月16日から来年4月7日まで114日間だ。場所は中正紀念堂で開催する。2件目は“クイーン+アダム・ランバート”4年ぶりの来日公演だ。今回の来日公演は過去最大規模となる全国4都市、名古屋・大阪・札幌・東京でのドームツアーだ。当社はこのうち東京ドーム2公演と札幌ドーム1公演を主催する。期日は札幌ドームが来年2月10日、東京ドームが2月13日、14日の2日間だ。
※TELASAについて。
篠塚社長:今クール、ドラマでは「今日からヒットマン」「家政夫のミタゾノ」のTELASAオリジナル配信が会員獲得に大きくつながっている。バラエティでは、韓国の10人組男性アイドルグループ「TREASURE」が出演した「トレバラ~TREASUREのバラエティ塾」の本編とオリジナルコンテンツの配信が好評だ。今後もTELASAでしか見られないオリジナルコンテンツを充実させて会員獲得に貢献していく。
※ABEMAと出資映画について。
西常務:WAUは、現在平均が1,800万前後と好調に推移している。ABEMA NEWSそれからアニメといった定番コンテンツに加えて、サッカープレミアリーグ、大相撲などのスポーツコンテンツ、藤井聡太八冠の対局等々、多彩なコンテンツを引き続きお届けしているので、ご期待いただければと思う。続いて出資映画に関してだが、いよいよ来週12月8日に「窓ぎわのトットちゃん」が公開になる。世界中で親しまれている黒柳徹子さんの大ベストセラーの映画化ということで、あらゆる年齢層の方々に楽しんでいただけるアニメ作品に仕上がっている。ぜひご期待いただければと思う。
※今年最後の会見にあたり、旧ジャニーズ事務所の騒動を振り返っての所感を。
篠塚社長:この問題はまさに現在進行形の問題で、まだ振り返る段階ではないことを大前提にコメントすると、今月22日にはSMILE-UP.社が設置した被害者救済委員会が、性被害の確認が取れた35人に対して補償内容の連絡を始めたと発表をしている。補償手続きが具体的な形で進み始めたということなので、一つの前進として捉えている。今後もSMILE-UP.社には被害者の方々に対して誠実に謝罪し補償対応を継続していただきたいと考えている。新たに発足するマネジメント会社には、ガバナンスとコンプライアンスを強化、徹底して、同じような人権問題を二度と引き起こすことのないよう取り組んでいただきたいと強く願っている。一方で、性加害問題を調査した再発防止特別チームの報告書で指摘された「マスメディアの沈黙」については、改めて当社としては重く受け止めている。検証番組でも申しあげた通り、この問題を報道してこなかった経緯を深く反省し、テレビの持つ公共的な役割を再認識して報道にあたってまいりたいと考えている。また、当社と旧ジャニーズ事務所の関係についても様々なご意見、ご指摘をいただいた。今後、新しいエージェント会社とは、これまでの反省の上に立ち、お互いに公正で透明性のある新しいビジネス関係を構築していく。今回の問題を踏まえ、視聴者の皆様の信頼を得られるよう番組制作にあたっていく所存だ。
※検証番組についての社長の受け止めは。
篠塚社長:当社としては、検証を通じて明らかになった反省すべき点、それから被害者の方々や有識者の方々からいただいた貴重な数々の提言があるので、それを今後の番組制作に生かしてまいりたい。
※先月の会見でも伺ったが、例えば「ミュージックステーション」については、従前からいろいろな指摘があったが、全く検証番組では触れられていなかった。どうしてか。
篠塚社長:先ほど申し上げたように、検証番組に関しては、「マスメディアの沈黙」というご指摘、それから、そこの背景に我々と旧ジャニーズ事務所との関係がどういうものであったかというところに焦点を当てて検証するということだった。ご覧いただければ分かるように、報道、ドラマ、それから「ミュージックステーション」など音楽番組はバラエティという形で、あわせて総合的に検証したと考えている。
※個別番組について、これだけ視聴者から疑問の目が向けられている中で、あえて「ミュージックステーション」を検証する価値はあったと思うが。
篠塚社長:先ほど申し上げたように、総合的に、報道、ドラマ、そしてバラエティという、我々でいう制作側の3部門で総合的に検証したということだ。
※旧社屋のプレハブ内での性被害の訴えについては、既に何社か報道している。その件は、調べたがわからなかったということだったと思うが、関係者に取材すると、まだ会社に当時のことを知っている人は残っているんじゃないかとの反応がある。あるいは関係している取引先の会社まで調査を進めれば、本当のことがわかったんじゃないかというような声も聞く。このあたり、改めて調査を続けるつもりはないのか。
篠塚社長:まず大前提として、当社の施設内で性被害があったとすれば許せないことであり、大変遺憾なことだと思う。その上で、番組でもお伝えしたが、ほぼ40年前になるが、当時音楽番組を担当していたスタッフ、当時の若手ということになるが、可能な限りヒアリングをした。結果は、性加害については全く認識がないということだった。
※訴えてる方ご本人には聞き取りしているのか。
篠塚社長:志賀泰伸さんご本人には話は伺えていない。
※それは、拒否されているということか。
篠塚社長:事実として伺えていないということで、それ以上については取材の過程になるので、お答えは控えさせていただく。
※テレビ朝日は、早河洋会長がジャニーズ事務所と良好な関係を作ってきたと言われている。トップの座に長くいて、我々も取材している過程では、御社の社内の方から、やっぱり早河会長のことはすごく気を遣っているという話をよく聞く。今はネット社会でもあり、こういうことがすぐ広まるが、本当なのかどうなのかということも含めて、検証番組の中で触れるかと、番組を見ていた。早河会長がジャニーズと関わってきたことの影響、これはその「マスメディアの沈黙」ということとも関わってくるのかなと思っているが。
篠塚社長:ヒアリングの結果は、そのような形にはなっていない。ヒアリングの結果を我々は放送したということだ。
※ヒアリングの結果では、早河会長のことについて言及する人は一人もいなかったということか。
篠塚社長:一つ一つの詳細まではわからないが、まとめとして上層部、それから編成制作の幹部が交渉に当たっていた。ただ、その交渉に関しては、検証番組の中でも紹介したように、当然ステークホルダーであるプロダクションなど、いろいろなレベルで会話をするので、これに問題があるとは考えていない。
※早河会長とステークホルダーが話をすること自体は別に問題ないのか。
篠塚社長:早河会長も、私もそうだが、編成の幹部、いろいろなレイヤーで当然やりとりをするというのは、皆様方の会社でもステークホルダーに対しては同じだと思う。
※社内的な影響力等々については特に証言はなかったということか。
篠塚社長:検証番組をご覧いただければわかるように、その上層部とのやりとりを見て、やはり神経を使う会社だというような空気が一部生まれていたというところは大いに反省すべきことだと思う。
※そのことについて、早河会長ご本人は特に何か言っているわけではないのか。
篠塚社長:そもそもこの特番自体、制作については早河会長の指示で作るということになっており、当然その中身に関しても早河会長はじめ、私も含めて上層部はみな関与して全員の了解の元、社としてやっていると御認識いただきたい。
※会長へのヒアリングはあったのか。
篠塚社長:早河会長は関与をしている。当然本人が指示を出して内容にも関与しているため、本人の意見も入っている。
※ヒアリングした103人の中に早河会長も入っているのか。
篠塚社長:具体的に誰にヒアリングしたのかは社内的にも明らかにしていない。
※検証番組で「ミュージックステーション」や早河会長の件に触れなかったということで、番組を見た方からは、「検証が不十分ではないか」、「内容がぬるかった」というような評価が上がっているが。
篠塚社長:様々なご意見があるとは思っている。先ほど申し上げたように、我々としては検証から浮かび上がった反省すべき点をしっかり反省して、それから被害者の方々や、あるいは識者の方々からいただいたご提言を番組制作に生かしていくということになる。
※社長として、「この検証番組で十分だった」とお考えか。
篠塚社長:今の段階としては、私どもができることをやったと思っている。
※局によっては、第三者委員会を設置して改めて調査をしているというところもあるが、テレビ朝日にそのような方針はあるか。
篠塚社長:我々は報道機関として自己で検証し、それを特別番組という形で放送させていただいた。現状で第三者委員会のようなものは考えていない。
※反省を生かしていくという話だったが、有識者からのご指摘だと、「報道を治外法権にして中立性を確保する必要がある」など、いろいろ指摘があった。何か具体的にこの反省を踏まえて社としての方針を変えていく、というような具体案はあるか。
篠塚社長:具体的にはないが、やはり申し上げたように、改めて我々は公共的な存在であるということを、編成部門も制作部門も、もちろん報道の部門も改めて再自覚して、そこに細心の注意を配りながら報道していくということだと思う。
※改めてだが、キャスティングについて、旧ジャニーズ事務所所属のタレントの起用方針というのは、従来通り変わらないか。
篠塚社長:従来通り変わらない。
※タレントの起用方針について特に変わってないというのは、総合的に判断するということでいいか。
篠塚社長:タレントの皆さんに問題があるとは思っていないので、企画の内容とかテーマに沿って、キャスティングについては引き続き総合的に判断していくということだ。
※旧ジャニーズ事務所は10月2日の会見で、1か月をめどに新会社を作ると言っていた。既に2カ月弱になろうとしているが、なかなか新体制が見えてこないことに関して、社長の受け止めは。
篠塚社長:先ほど申し上げたように、まだ新会社ができていないことに関しては、おそらく補償のことが先に進んでいるのかなという印象を持っている。ただ、これは何か情報を持っているわけではなく、先ほど申し上げたように35人の方との補償交渉開始という話があったので、我々としては新しい会社が立ち上がることを待っているという段階だ。
※そろそろ4月改編に向けて新しい番組の企画に入る時期に差し掛かってくるかと思うが、全くこの会社の姿が見えていないという中で、通常であればキャスティングはなかなか難しいと考えるが。
西常務:4月以降のことに関しては、編成の中でいろいろ相談をしているところなので、まだ公表できる段階ではない。
※追加の検証については、今のところ放送予定や制作予定はないということか。
篠塚社長:放送したのが12日だ。まだ2週間というところ、今後何か新しいテーマが出てくれば、それは当然考えるが、現状はない。今後の展開次第ということだと思う。
※東京ドリームパークの工事が始まったということで、こちら一部週刊誌で以前掲載された時の表現を使うと、そのパーク内にジャニーズ劇場ができると報じられていたかと思う。報道があったことについて、そういった構想を持って、旧ジャニーズ専用の劇場を作る予定があるのか。
篠塚社長: 多目的ホール、劇場、イベントスペース、あるいは屋上広場、飲食スペースといった本当に複合的なエンターテインメントの施設となっている。開業予定が2026年春ということで、演目などについては現在まだ決まったものはない状況だ。
※従来、総務省の検討会では、NHKと民放が一緒になった統一的なプラットフォームができないかという話があり、年内に準備を始めるということになっている。これについてはどのように考えるのか。
篠塚社長:技術的な問題や運用面、UIがどうなるのかというところをしっかり検討してもらいたい。一番は視聴者ニーズがあるのかどうかということだ。個人的な考えとしては、例えばTVerのようなVODのサービスでいうと、トップページから見逃し配信のために入ってくる人はそれほど多くはないという印象を持っている。つまり、必ず目的視聴でこの番組を見たいからTVerを開くとか、あるいはSNSからのリンクを経由して直接その番組に飛んでいくなどのケースが多いと思う。果たしてそのVODを考えた場合に、NHKと一緒の仮想的プラットフォームにどれだけの視聴者ニーズがあるのかというのは、しっかり検証してもらいたいと考える。リアルタイム配信となるとまた状況も違うかもしれないが、それも含めてしっかり検証してもらいたい。
※きのう日本テレビが営業の新しいスタイルを発表した。インターネット広告に近い形で、4日前まで自由に変えられる、組み替えができるというようなシステムだ。日テレは他局にも広げていきたいということだが、どう考えるか。
橋本取締役:テレビの使い勝手を高めようということで、日本テレビがデジタルテクノロジーを駆使してよりスピーディーで弾力的なCM運行を可能にしようと取り組んでいる。また、テレビ放送と配信の指標を揃えて統合的に取引できるようにもしようとしている。これについて、我々も素晴らしい取り組みだと考えている。ただ、利便性向上のための施策に対するニーズがあるということと、実際に取引にいたる実需があるということは必ずしも同じことではない、という理解もしている。確かにARM(アドリーチマックス)的なものの標準化は模索していくべきことだとは思うが、日本テレビのプラットフォームが実際にどこまでいけるのかというのは来年の春以降の話だと聞いている。まだ静観する段階だと考えているが、デジタルテクノロジーを活用していまの広告運用の限界を乗り越えようという新しい試み、チャレンジだという点で興味深く見ている。