社長定例会見

早河洋会長・CEO 亀山慶二社長・COO 会見(3月31日)要旨

2020-03-31
※2019年度の振り返り、新年度の抱負。
早河会長:2019年度はテレビ朝日の開局60周年という年だった。平成から令和に時代が変わる節目でもあった。秋には大水害が発生し取材対応に追われた。一方で、ラグビーワールドカップの日本代表の活躍に日本列島が沸いたのも印象的だった。ここにきて新型コロナウイルスの感染がパンデミックとなり、結局東京オリンピック・パラリンピックが1年延期となった。放送界ではNHKの常時同時配信が始まったのも大きな出来事だ。きのう志村けんさんがお亡くなりになった。その存在、活躍の足跡からして大きなニュースとなった。総合すると、2019年度は非常に浮き沈みの大きい、激動と変化の1年だったと思う。60周年の記念番組では、5夜連続の「白い巨塔」「ドクターX~外科医・大門未知子~」「相棒season18」そして1年を通しての「科捜研の女」「やすらぎの刻~道」などが好成績を上げた。最近ではヒマラヤの高地に住む部族を目指し長期ロケを敢行したドキュメンタリー「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」が好評で、広告の手法を含め反響を呼び、60周年にふさわしい番組だったと思う。視聴率は、年度を通して健闘した。52週のうち、全日が19週、プライムが21週トップを獲得し、12月には月間三冠となるなど、特に10月クールでトップに迫る存在感を示すことができた。ここにきて、新型コロナウイルス感染のニュースで、各局メインのニュース番組の視聴率が上昇しているが、テレビ朝日も「羽鳥慎一モーニングショー」「報道ステーション」の視聴率が記録的な数字でトップレベルとなっている。一方で、2019年のテレビ広告はインターネット広告に抜かれ、その影響があって、特にスポット広告が低調だった。テレビは広告宣伝メディアの首座ではなくなったものの、テレビ広告は今でも一斉同報型の比類ない訴求力を持っていると思っており、その特性を生かした広告戦略で増収策を考えたい。番組の内容面で信頼性がある地上波回帰という広告主も出ており、その期待に応えられるよう提案型の営業にも力を入れていきたい。新型コロナウィルス感染の影響でリーマンショックに匹敵する経済活動の収縮が言われている。日本が景気後退局面に入れば、昨年来のテレビ広告の低迷に加えて、アドバタイザーの広告出稿に極めて大きな影響が出る可能性が高まっており、新年度は非常に厳しい状況を覚悟している。その対応策として、以前からインターネットデジタル時代の変化を見据え、新しい時代のテレビ局を目指すことを経営計画にうたってきたが、現在収益部門を一体運用し、360°ダイナミックにビジネス展開できるような組織再編を策定中だ。リーマンショックの時には広告収入の激減が回復するのに3年から5年を要した。その時は、現場を中心に全社一体となって危機を乗り切ることができた。生半可な業績対策では立ち行かないと思うが、こうしたノウハウを生かして、新年度を乗り切っていきたい。
※最新の視聴率について。
西取締役:年度平均は全日7.7%、ゴールデン10.8%、プライム11.0%、プライム2 5.2%と、全区分2位で終了となった。続いて1月クール平均だが、全日が7.9%で2位、ゴールデンが11.0%で3位、プライムが11.4%で1位、プライム2は5.3%で2位となった。プライムは10月クールに続いて2クール連続のトップだ。1月クールの振り返りだが、ゴールデン・プライム帯では、「報道ステーション」がおよそ7年半ぶりの高さとなるクール平均13.8%を記録したことに加え、連続ドラマでは「相棒season18」が1月クール民放連続ドラマのトップとなった。また、バラエティでは、日曜の「ナニコレ珍百景」「ポツンと一軒家」が自己最高を更新している。そして全日帯でも、平日は「羽鳥慎一モーニングショー」、週末では「サンデーステーション」がそれぞれ自己最高を更新するなど、全体的に好調に推移した。続いて、今後の主な放送予定だが、来週から4月クールの連続ドラマがいよいよスタートする。まず井ノ原快彦さん主演の「特捜9」が4月8日スタート。木曜ミステリー「警視庁・捜査一課長」は4月9日、そして16日には2年ぶりとなる木村拓哉さん主演の木曜ドラマ「BG~身辺警護人~」が初回を迎える。ナイトドラマでは、金曜の松岡昌宏さん主演「家政夫のミタゾノ」が4月24日、AbemaTVとの共同制作の土曜ナイトドラマ「M 愛すべき人がいて」は4月18日スタートとなる。
※新型コロナについて、全社的な取り組み、今後の番組制作の影響について。
早河会長:2月25日に、私が議長となる緊急対策会議を立ち上げ、施策を講じてきた。
亀山社長:手洗い、消毒などの予防策の実施、時差出勤、テレワークの推奨など、各部署の業務において、密閉、密集、密接を避けることを徹底している。3月27日は休暇取得奨励日としたほか、これまで推奨してきたテレワークなどを、さらに強化し、出社人数を抑えることを徹底する。番組制作に関しては、これまでも観客入れを中止しているが、収録に際し、まず検温、マスク着用、消毒の徹底、マイクを共有しないなどの対策を行っている。その上で、3つの「密」が重なることのないように配慮して収録に臨んでいる。
※営業状況について。
亀山社長:2月の営業売上は、タイムは前年比98.4%、スポットは88.3%、トータルでは92.8%で確定した。タイムだが、昨年度は「AFCアジアカップ」決勝があったことの反動もあり、前年には届かず締まった。スポットについては、引き続き低調な市況で、東京地区は93.4%で締まり、昨年3月から12か月連続での前年割れとなった。当社もプロモートに努めたが、地区には届かず着地した。3月の営業売上は、タイムは前年比91%前後、スポット90%前後、トータル90%前後で着地見込みだ。タイムだが、当初は3/8OAの「氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間」が高額で完売するなど、単発番組のセールスも堅調に推移していたが、コロナウィルスの影響拡大によって、予定されていた「サッカーU-23国際親善試合」「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」が中止になるなど、終盤でセールスにブレーキがかかった。スポットについても、年度末の駆け込み需要が一部見られたが、コロナウィルスの影響によるキャンペーンの消滅や期間変更などが多発し、セールスに苦戦をした。4月の営業売上は、タイムが前年比89%+α、スポットが63%+α、トータルでは75%+αで推移している。タイム、スポットともに、コロナウィルスに加えて、東京五輪延期などの影響もあり、数字が伸び悩んでいる状況だ。アドバタイザーや広告会社も在宅勤務となり、セールス活動にも制限が発生している状況だが、今できる方策の中で最大限の売上確保に努めている。
※放送外収入について。
武田副会長:コロナウイルスの影響で中止した当社のイベントは、これまでに6件。延期をしたイベントも6件。当社が出資しているイベントで開催中のものはあす終了する「倉本聰 点描画とやすらぎの刻 展 ~森のささやきが聞こえますか~」と大阪で開催中の「おっさんずラブ展in the sky-大阪」の2件のみだ。イベントは、その内容や出資比率、会場の形態や規模によって状況が様々なので、一律に開催の可否を判断することはできない。当社としては、お客様の安全第一を最優先としつつ、関係者と協議の上判断している。今後についても各イベントについて、このような形で判断していきたい。
※出資映画について。
西取締役:出資映画の最新状況だが、2月8日公開の「スーパー戦隊MOVIEパーティー」は3月22日までの44日間累計で動員数が22万3717人、興行収入が2億8583万円だ。そして、既に発表したが、3月6日公開予定の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」は、公開を8月7日に延期させていただく。
※AbemaTV4周年で所感は。
早河会長:ダウンロード数は3月の時点で5000万DL、目標としているWAU(ウィークリーアクティブユーザー)の1000万突破についても、現在5週連続15回目の突破だ。先週は歴代最高の1431万を記録しており、緊急記者会見や恋愛バラエティの視聴数が増えている。リニアでスタートしたAbemaTVだが、オンデマンド視聴ユーザーも増えていて、有料のAbemaプレミアムの会員も現在70万人近くに伸びている。年内には100万を目指している。AbemaNewsは新型コロナウイルス関連ニュースに対するユーザーの関心が非常に高く、随時緊急編成を実施した。先月29日と今月14日に行われた安倍総理の記者会見をすべて生中継したが、視聴ユーザー数が平時の6倍くらいになった。関心の高さが改めて証明された。AbemaNewsは「何かあったらAbema」というライフライン的なメディアになりつつある。土曜ナイトドラマ「M 愛すべき人がいて」は、テレビ朝日との共同制作で、配信ではAbemaTV独占配信をしていく。テレビとインターネットのコラボレーションということだ。「ナスDの大冒険TV」はAbemaTVで先行配信された1週間後に地上波で放送する、新しい連動の形を想定している。一方、AbemaTVの恋愛リアリティショーなどの人気番組の特別編集版を「アベマの時間」というタイトルで地上波で放送している。
※東京五輪が1年延期になり枠が空いたと思うがすでに準備に入ったのか。
西取締役:これは基本的にはレギュラー編成に戻しつつ、まだ日にちはあるので詳細については今後検討していく。
早河会長:オリンピックの競技の中継は大体振り分けが確定していた。それがそのまま行くのか、これから仕切り直すのか。まったく同じ競技日程ならそのまま行くだろうが、会場など色々な都合で競技日程が変わる可能性もある。これは民放連のオリンピック委員会を中心に話が進んでいくだろう。
※「10万円でできるかな」の不適切な演出について、その後再発防止策など取りまとめられたのか。
西取締役:再発防止策としては、ひとつはロケに関して、これまではディレクターやADだけでロケに行くときもあったが、今はプロデューサーが必ず参加するようになった。今までも危機管理担当者が編集後の番組をチェックしていたが、ロケ直後の内容もこの管理担当者が編集者と二重のチェックをしている。さらにコンプライアンス研修を半年に1回必ずするように新たに設定した。
※志村けんさんが亡くなったことで改めて会長の所感は。
早河会長:3月25日に「あいつ今何してる?」にご出演いただいたばかりで非常に衝撃を受けている。過去の作品では年始恒例の特番「志村&所の戦うお正月」「志村&鶴瓶のあぶない交遊録」、またドリフターズ絡みのスペシャルなどもあり大変お世話になった。志村さんの抱腹絶倒のパフォーマンスはあまり他にない唯一無二のオリジナリティがあり、テレビのお笑いに大きな足跡を残された。その偉業を称えると共にご冥福を心からお祈り申し上げたい。
※KDDIと新たな動画配信サービスを始めるが現在の動画配信サービスの動向をどう思うか。
早河会長:4月7日に「TELASA」というサービス名称でスタートする。現下の動画配信のマーケットはアメリカ勢のNETFLIX、Amazon、Apple、Disney、NBCUniversalなどサバイバル競争になっていて、非常に激しいビジネスだと思っている。ただ我々は今までSVODのビデオ課金の動画配信に本格参戦はしていなかったので、KDDI傘下のビデオパスとジョイントしてその厳しいマーケットに挑戦していきたい。挑戦する以上テレビ朝日の色々なオリジナルコンテンツを含めて全力で展開していきたい。