放送番組審議会

第617回 放送番組審議会報告 3月25日(木) 開催

■出席者
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小陳  勇一  委員
小谷  実可子  委員
小松  成美  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
増田  ユリヤ  委員

課題番組

「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」

「テレビ千鳥」

<両番組全般>

●制作者は新しいお笑いを模索しているのであろう。SDGs、ダイバーシティー、ジェンダー問題など時代の変革期を迎え、昭和・平成のお笑いは地上波で流せないものもあるだろう。その中でこの2番組は、お笑いには人を笑顔にする力があることを証明している。これからも、苦労している若い芸人たちのドキュメンタリーを伝え、笑いに変えてほしい。

●幅広い年代に家族揃って楽しんでもらう、と考えてはいけない。“幅広い年代に”を調味料としてかけるのもダメ。時間帯が変わっても、深夜の匂いを消さないでほしい。

●日本のバラエティーは「アメトーーク!」以降、芸人に喋らせることで番組を成立させるのが一つのフォーマットになった。しゃべりがうまく、まわしがうまい人が芸人になり、テレビでもネタの面白さよりも、気の利いたコメントが言える人が重宝されるようになってきた。トークの面白いところを編集で拾ってつなぐという番組の作り方に視聴者が飽きてきている。

●「サンデーステーション」の後、ニュース性のある漫才の爆笑問題がMCで、ドキュメンタリータッチの「シンパイ賞!!」、それから「テレビ千鳥」という並びはよく考えられている。

●両番組がすごく似ているというのが最初の印象だった。芸人は大変なんだな、頑張っているんだなというのがトータルの印象。誰がMCで誰がゲストなのかわからなくなった。

●若い人はテレビをつける習慣がなく、新聞をとっていないので番組表もない。若い人に見てもらうには、放送前からSNSなどで話題になる、面白くて誰かに伝えたくなるという水準を満たすことが必要。

<「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」について>

●共感できるシンパイもあり、どう解決していくか興味が湧く。構成と編集も素晴らしい。ニュース番組とドキュメンタリーの手法を取り入れることで、シンパイをバカにせず、笑いを含めて、真剣さ、さみしさ、愛情といった真っ当な感情を入れ込むことに成功している。

●“シンパイ”とカタカナにすることで、誰しもが抱える心配を「笑い飛ばそう」というイメージを作っている。芸人の日常がリアルに描かれ、人間関係や下積みの苦労、努力が見えて、お笑いの世界の奥深さを感じた。

●行儀良く生きなければならないという空気が世の中にある。息苦しさを感じながら生きている人が多い中で、ろくでもない生き方を見せ、こんな風に生きてもいいのだと思わせる。生き方に悩んでいる人、日曜の夜は憂鬱になる人が、頑張ろうという気持ちになれる。

●いろいろな心配事を「笑い飛ばす」というコンセプトが面白い。不安や心配が尽きない世の中なので、芸人特有のシンパイを語りながらも、個人や社会が抱える心配とうまく共鳴するようになると、今の時代に刺さる番組として発展していくのではないか。

●爆笑問題を中心に、今をときめく若手芸人が取り巻き、短いやりとりの中に芸や技が込められている。高い技術と、それを感じさせない流れを作るメンバーの人選がすばらしい。

●爆笑問題と第7世代との関係性がフラットに見える。太田光さんたちを第7世代がからかい、太田さんもそれを喜んでいる。若者が自由闊達に会話していて、非常にいい雰囲気。

●太田さんのハチャメチャな発言を受け止めて上手く切り返す田中裕二さんがいて、太田さんの良さが生きる。田中さんの存在は大きい。

●番組タイトルはくどく、出演者の数は多く、セットもゴチャゴチャしているが、このくどさが番組の個性になっている。今のりにのっている人たちがずらりと並ぶと画力が出る。

●一つ間違えると楽屋話の羅列になってしまう。ゲストは本当に必要なのか、何人必要なのかということをよく考えてほしい。

●<緊急企画!!爆笑問題・田中がシンパイ!>(2月14日)は、人間と人間関係の本質がすごく出ていて、エピソードの数々、話芸の数々を堪能した。30分の短い中で田中さんという人がよく分かった。太田さんまでいとおしく感じた。

●<田中がシンパイ!>は、田中さんという大黒柱がいないというピンチをチャンスに変える企画で面白かった。応援コメントと言いながら田中さんをディスっているが、イヤな感じはしなかった。ベースに田中さんへの愛があるからだろう。

●<田中がシンパイ!>は、田中さんを本当によく知っている人だからこその、いじりながらも愛情のこもったコメントを聞けて面白かった。田中さんと太田さん、太田さんの奥さんの関係性も窺え、興味深かった。

●<納言・幸とヒコロヒーがシンパイ!>(3月7日)では、幸のお酒の飲み方に「ダメでしょう」という声も聞こえそうだが、実際の姿を見て、芸人をしていくのはストレスもあって大変なんだ、でも頑張っているんだということがわかった。

●<納言・幸とヒコロヒーがシンパイ!>は、本当に心配になって、あまり笑えなかった。アルコールや借金の問題を深刻にリポートするのが趣旨でないのはわかるが、この番組らしい笑いを盛り込んだ切り口で伝え、視聴者に考えてもらうことができなかっただろうか。

●<かが屋完全復活SP>(3月21日)は、どんなドキュメンタリーよりも感動した。今後、いろんなものを掴んで成長していく芸人の姿を見るのを楽しみにしたい。

●<かが屋完全復活>は、30分の中に芸人の熱い思いが込められたドキュメンタリーになっていて、感激した。

<「テレビ千鳥」について>

●千鳥がやりたいことをやりたい放題やり、楽しく遊ぶ。番組のフォーマットが固定しておらず、ロケありスタジオありで、毎回テーマにより、笑いや演出のスタイルが違うところが特徴。芸人頼りではなく、演出側が芸人としっかりコミュニケーションしながら作っているからこそ、意志を貫徹した作りになっている。大変だろうが、今後も挑戦を続けてほしい。

●千鳥には根強いファンがいる。深夜時代のものを全部封印すれば、芸人の命も番組の命も奪う。この時間帯でも覚悟して作ってほしい。

●テーマ自体はある種くだらない、どうでもいいことだが、千鳥が引っ張って面白く見せる。千鳥の良さが出ている番組。千鳥は他の出演者をいじるよりも、本人たちが当事者として演じた方がより良さが生きる。

●表のテーマとは別にその先にある世界を描こうという制作者の意志がある。チャレンジ精神が感じられる。

●バラエティーはやはりハプニング性。ハプニングによって、図らずも出てしまうものを見事に出している。計算していないように見せて、計算してハプニング性を出しているのだろう。

●だらーっとしている感じが自分の好みには合わないが、今の世の中の雰囲気に合っていて、若い人には刺さっているのかもしれない。

●<こっそりシュワちゃん選手権!!>(1月17日)は、小学生のいたずらのようだとストーリーを感じた。出演者それぞれのキャラが立っていて、単純におかしくて素直に笑えた。

●<面白新キャラクターを作ろう>(3月7日)では、涙と笑いを一緒に作り出すという高等な技を見せられた。ドキュメンタリーのようでもあり、コントのようでもある。最後平子さんにVTRがないというオチまでついて、番組にちゃんと意志があると感じた。セットにまで演出が行き届いているところもいい。

●<面白新キャラクターを作ろう>で、売れていないことを上手く笑いにしたのは見事。売れていないからお母さんや妻のちょっとした言葉にもうるうるし、カーテンから出て来る瞬間の表情に人生が出ていた。千鳥が思わず正座してしまうのもリアリティーがあった。

●<面白新キャラクターを作ろう>では、カーテンから芸人が泣いて出て来るところに人間性が出ていた。その人の背景が見え、感動的でもあり、笑いの残酷さもあった。完成度が非常に高かった。

●<面白新キャラクターを作ろう>は、ずっと笑い転げた。泣かせるVTRに尺を割くなど、制作者がのびのび番組を作っていると感じられた。神回だ。

●<面白新キャラクターを作ろう>での博多大吉さんの応援コメント「カメラのレンズに慣れとらんだけ。生のお客さんの前で培ったものを出せれば、カーテンが開いた瞬間に人生が変わるよ」という言葉が突き刺さり、芸人の世界の苛酷さに気づかされた。実力があるが、大会では成果が出せないアスリートと同じだという見方になった。

●<面白新キャラクターを作ろう>は、芸人同士の楽屋ネタになってしまうところがあった。博多大吉さんの応援コメントを見ながら、なぜノブさんが泣くのかが理解できず、感情移入ができなかった。

<「報道ステーション」WEB CMについて>

●CM全体の文脈が女性に対するステレオタイプに満ちた表現だった。「こいつ報ステみてるな」は男性目線のキャッチコピー。なぜああいう動画が作られ、なぜ誰も動画をアップする前に問題だと指摘しなかったのか不思議。「報道ステーション」は、ジェンダー問題を積極的に報道し、社会の公正のために発信してきた。あのような動画が流れたのは残念でならない。意思決定の場に女性がちゃんと入っている仕組みが必要だ。

●ジェンダー問題がCMで上手く伝えられず、誤解を受けたのは非常に残念。メディアの中のジェンダー平等が一番手つかずという声をよく聞くが、それも変わっていくことを期待する。

●CMを作成したときのチェック体制について、確認しておきたい。

<局側見解>

●芸人のトークに頼りすぎている点を改善し、若い人が誰かに伝えたくなる番組にしていきたい。

●トークをピックアップするだけでなく、新しい何かを生み出すため、もがき続けたい。

●様々な角度からご指摘いただき、番組の持ち味を再確認できた。課題を改善していきたい。

●日ごろ感じていることを改めて言語化してもらった。番組作りに反映させていきたい。

●腹を括って、固定のファンの好みの通り、粗い番組を作り続けていきたい。

●千鳥に頼り過ぎている部分などは考慮しながら、バランスを取っていきたい。

<亀山社長・COOからの報告>

●年間・年度視聴率とも【個人全体】は、全日が2位、ゴールデンが3位、プライムが2位。【世帯】は、全日が2位、ゴールデンが3位、プライムが1位。

●ABEMAのダウンロード数は昨年末の時点で6,200万を突破。WAUの目標である1,000万UUを恒常的に獲得している。有料のビデオ会員も順調に推移。

<宮川報道局長から「報道ステーション」WEB CMの経緯について報告>
以上