放送番組審議会

第609回 放送番組審議会報告 5月27日(水) 開催

*委員の互選により、2020年度の委員長に見城徹氏が、副委員長に田中早苗氏が就任。
*今回、初めてMicrosoft TeamsによるWEB会議形式で開催。見城委員長以外の委員はリモート参加、局側も一部がリモートで参加した。
■出席者
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
小陳  勇一  委員
小谷  実可子  委員
小松  成美  委員
丹羽  美之  委員
増田  ユリヤ  委員

■欠席者
内館  牧子  委員(リポート提出)
藤田  晋  委員

課題

「新型コロナウイルス感染拡大の中の報道・放送全般について」

<放送全般>

●新型コロナウイルスの緊急事態下、制限のある中で、スタッフが懸命に番組作りをしてきたことに心から敬意を表したい。多くの人たちの日常が奪われている中で、テレビが普段通りの日常の番組を放送していることにどれだけ沢山の人が救われただろうか。

●変わらざるを得なかったテレビが、コロナという制約の中で激変している。テレビはどうあるべきかを深く考えさせられる状況になった。バラエティーもクリエイティブな別次元に行った。コロナは不幸なことだが、テレビが変わっていくのはいいこと。コロナが収束しても、テレビが元に戻ることはないだろう。

●テレビ朝日の報道・情報番組それぞれが独自性をもってコロナの問題を扱い、かぶらないニュース作りをしていたことは素晴らしい。各番組が非常に努力していることが窺い知れた。

●緊急事態の中、ソーシャルディスタンスをとり、リモートを使い、テレビ局がこれまで経験したことのないオペレーションを行った。新たな経験を重ね、見事に放送に活かしていた。

●コロナ一色の報道・情報番組に「またか」と思い、チャンネルを回してバラエティーやクイズ番組を見るが、全然気が入らない。これほどの事態では、コロナ関係を適切に迅速に報道することが第一だと改めて実感した。だからこそ報道や情報番組の視聴率が高いのだろう。

●4月上旬はテレビを見ていても、何をしていても、気持ちに入ってこなかったが、そのうちテレビに入り込める精神状態になってきた。テレビが自分の心身の健康状態を測るバロメーターになっていた。

●全員が初めての経験をしている中で、“テレビが正解”“テレビが正しいことを全部提供します”という姿勢に無理がある。テレビ側もわからないということをきちんと伝えなければいけないのではないか。情報を上書きしていくという前提で、もう少しあたふたしている感じを出してもよかった。冷静に放送するのがテレビという時代は終わった。バタバタしているのを見せるのがリアリティーだということを再認識した方がいい。

●昔はディレイがあってテレビが流したものは翌日学校や職場で語られたが、今はSNSで視聴者は放送時に審判を下している。散乱する情報を全て示し、視聴者が判断する時代なのではないか。一部を見せて一部を見せないのではなく、その場にあるすべてを共有しながら報道していくことが大事。
 
●テレビの情報が生活の大きな指針となった。賛否が分かれ、混乱が起きたことも現実。渦中にあって報じられることと、時間がたって検証し分析してから報じられることがある。

●非正規雇用など弱い人にしわ寄せが行っている。今後対応の何が問題だったのか検証を続けてほしい。コロナ後の社会をどう作って行くかというときにこの経験が重要になる。

●今回のコロナで、PCR検査の少なさ、情報システムに関することなど日本が後れていると思われることが多々あった。こういった点も更に検証を拡げて、幅広い報道をしてほしい。

●今は感染を阻止しながら経済も回していかなければならないという方向に変わっていった。各番組は、相当な議論をして制作していかねばならない。

●ローカル局が、県や市の教育委員会と協力して、小中学生を対象にした教育支援の番組を作る動きが見られたことは注目に値する。テレビの公共性を考えると、教育の分野でテレビが果たせる役割があると思う。今後キー局でもこのような取り組みを考えてもよいのではないか。

●今回の経験を機に、放送局としての緊急事態下における事業計画BCPをしっかり考えてほしい。コロナとつきあいながらどう放送を継続していくのか、しっかり議論してほしい。

<「羽鳥慎一モーニングショー」について>

●今回「羽鳥慎一モーニングショー」が多大な影響力を持ったと思う。中身の濃い詳細な報道、羽鳥さんの進行展開の上手さ、玉川徹さんをはじめとしたコメンテーターの的確なコメント、白鷗大学岡田晴恵教授の丁寧な説明。日本の政策を決めるにあたり、大なり小なりの影響力があった番組だったのではないか。

●「羽鳥慎一モーニングショー」は、コロナ情報を丁寧にわかりやすく、深掘りして伝えてくれた。意見・主張をもって医療に対する導きをした。番組には賛否の意見が多々あったと思うが、この番組によって、PCR検査や医療の現状、ウイルスの脅威を知ることができ、自分自身は今何をすべきか考えることができた。

●「羽鳥慎一モーニングショー」をじっくり観て、良くできた番組だと改めて思った。非常にわかりやすく情報が伝えられ、パネルの情報量も豊富。羽鳥さんの司会も安定している。

●「羽鳥慎一モーニングショー」で、時々コメンテーターのコメントがみな1つの方向に向かってしまうことが気になった。政府の対応についての批判や、PCR検査についての不満などが番組を覆うことがある。視聴者の不安に応えること、政策批判も必要だが、ではどうすればよいかを併せて示さないと、不安ばかりを煽っているという声につながりかねない。

●視聴者は、日常生活ではなくなってきた“井戸端会議”をコメンテーターのやりとりに見出している。そこでは結論を出す必要はないので、多様な見方を示してほしい。

●「羽鳥慎一モーニングショー」では専門家の見方が岡田教授に依存している印象を受けた。岡田教授ひとりの存在感が強すぎるのはリスキーな気がする。

●「羽鳥慎一モーニングショー」が岡田教授をずっと抱え込んだのは良かったと思う。情報を出すだけでなく、それをどう受け止め、この先どうすればいいかを柔らかく、わかりやすい言葉で落ち着いて話してくれ、聞きやすい。

●玉川さんが専門家の話に割って入ることがある。スタジオ展開の時には白熱した討論になって面白いと思うこともあるが、リモート出演では心地よくない。羽鳥さんが「玉川さん、ここは聞きましょう」と押さえたところに出演者の信頼関係と羽鳥さんの技術を感じた。

●玉川さんのコメントに間違いがあった時、翌日すぐ謝罪し、訂正したのはよかった。何か指摘された際にはきちんと追加取材をして、報道していた。この対応は評価できる。

<「報道ステーション」について>

●富川悠太アナウンサーの欠けた「報道ステーション」を心配したが、板倉朋希アナや小木逸平アナが頑張っていた。小木アナの雰囲気、語り、わかりやすさは視聴者に安心感と信頼感を与える。

●「報道ステーション」(5月15日)の〈番組スタッフ男性・治療の記録〉では、感染した本人が入院から回復まで顔出しでリポートしていた。スタッフの感染を感染者の日常、闘病の姿をとらえる機会としてとらえ直して放送したことはとてもよかった。入院生活の大変さが生の声でひしひしと伝わってきた。

●「報道ステーション」スタッフの自撮りのコロナ感染報告にはインパクトを受け、身を乗り出した。40℃近い熱の中よく撮っていたと思う。番組を背負った富川アナの体験も事細かに報告してほしい。

●「報道ステーション」は放送の危機を乗り越え、ニュースを毎日報じた。感染者が謝罪する必要はない。富川アナが現場に戻り、自身の経験を話すことで、皆がそれを享受できる。

<その他報道・情報番組について>

●「スーパーJチャンネル」の〈見捨てない不動産屋〉という企画が印象に残った。緊張感やネガティブな雰囲気があふれる番組が多いなかで、前を向いて頑張っていこうとしている人を見られたのは非常に良かった。

●「グッド!モーニング」(5月7日)で、インタビューされた医師が訴えたかったことと放送の内容が違ったという問題があった。スタッフが少なく、十分に意見交換もできないなか、普段弱い面が出てしまったのではないだろうか。意図的ではないが先入観で作ってしまう。小さいことの積み重ねが問題になって噴出する。緊急事態時の放送の恐さを感じた。

●「大下容子ワイド!スクランブル」が他の番組と違って非常に落ち着いて穏やかで、とてもよくなっている。非常事態に大下容子アナウンサーのキャラクターが際立っている。

●「公園でランナーが増えて密に」「湘南が渋滞」「ウーバーイーツの危険運転」などの報道は、自分たちが普段の生活で感じているよりも、数日遅れてニュースになっている印象。

●都や政府が発表するコロナ関連の数字は、切り取り方によって見え方が変わって来るので、検証は徹底してほしい。

<局側見解>

●委員の意見を伺い、4か月を振り返る中、色々な気づきがあった。今考えるとこの間何回か主張の上書きをしていった。政府や専門家会議も上書きしていた。それを検証した上で、我々が何を言っていたのかを改めて見直したい。
報道もテレワークを入れて、番組を作っている。この体制をベースにして、テレビの作り方を変えていきたい。

●コロナについてわからないことがあることは正直に伝えた上で、色々な見方を紹介していきたい。また、取材や制作のスタイルを変化させていくことにも努力していきたい。

●リピートも見せ方を工夫することで、新しい面白さが出て来る。制約がある中だからこそ新しいバラエティーやドラマの作り方がある。現場とともに新しいことに挑戦していきたい。

<亀山社長・COOからの報告>

●4月上旬「報道ステーション」で、富川悠太アナウンサーを含むスタッフ5人が新型コロナウイルスに感染。全スタッフ・出演者約100人を自宅待機とし、番組経験者らで制作・放送。

●テレビ朝日ホールディングスの2019年度連結業績が確定。テレビ広告市況の低迷、新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響もあり、減収減益。

●4月から導入された個人全体視聴率について説明。

●民放連と日本新聞協会は、新型コロナウイルス報道により感染者や医療従事者、その家族に対する差別と偏見を助長することのないように注意喚起する共同声明を、5月21日に公表した。

<宮川報道局長からの報告>

●「羽鳥慎一モーニングショー」(4月28日)で、玉川徹コメンテーターが週末は行政機関がPCR検査をしない、という誤った発言をした。取材記者のメモを番組側が誤解したことによるもの。翌日の放送で本人が謝罪し、「土日も都の検査は稼働している」という内容を伝えた。

●「報道ステーション」(5月4日)で、専門家会議が公表した「新しい生活様式」の一つとして、「スマホの移動履歴をオンにする」という内容を紹介したが、実際には盛り込まれていなかった。提言のたたき台を基に放送を準備し、最終的に削られたことに気づかなかった。翌日の放送で補足とお詫び。

●「グッド!モーニング」(5月7日)で、国がPCR検査の基準を見直すというニュースの中で、「日本は感染が疑わしい人だけを検査する世界的には珍しい政策」という医師のインタビューを、検査基準の緩和を訴える有識者と合わせて伝えたところ、この医師が「真逆の報道をされた」とSNSに書き込み。その後、「現場は不必要な検査が増えることは望んでいない」と医師が話している部分などを改めて放送し、丁寧さに欠けていたことをお詫び。

<「放送番組の種別ごとの放送時間」の報告>

2019年10月~2020年3月に放送した番組の「放送番組の種別ごとの放送時間」について4月中に書面をもって報告した。
以上