放送番組審議会

第603回 放送番組審議会報告 9月12日(木) 開催

■出席者
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小陳  勇一  委員
小谷  実可子  委員 
小松  成美  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
増田  ユリヤ  委員

「“少子超高齢時代”における テレビの使命」

<高齢者のために>

●“少子高齢多死社会”を煽ってもシニアは元気にならない。ネット社会の今こそテレビの黎明期に戻って、テレビから気合、元気、刺激を届けるという気持ちが大事。高齢者に人気の番組は “人っていいな”“私も頑張ろう”と思わせるもの。シニアは背後にあるドラマが好きで、一緒に泣きたい、励ましたい、一緒に感動したい。そして、元気を出したい。

●少子高齢化は、暗い将来、沢山の問題を抱えた社会をイメージする。人口が減り、コミュニティーが空洞化していくと、住む人にも心の空洞化が起きる。それを埋めるには“物語”が必要。生きていく希望や意味を見出すのに、ストーリーの力が役立つ。一人一人の持つ“物語”を多くの人に共有させ、共感を広げる、その役割を担えるのはテレビである。

●高齢者にとってテレビは家族の一員ともいえる大切なメディア。テレビの時間帯で生活のリズムを作っている。高齢者に向けた番組を重要課題として積極的に作ることを意識すべき。

●高齢者にとってテレビの存在は非常に重要であるが、テレビの前に釘付けにしてほしくない。運動に導き、これやってみよう、ここに行ってみようと動くことのきっかけになる番組を期待する。

●高齢者も、見ていて楽しい、やる気が出る、刺激になるものを求めている。

●高齢者から「最近のテレビは騒がしい」という声が多く聞かれる。テレビを生きがいにしている人でも最近は見られる番組が限られていることは残念。

●同じニュースを流すにしても、ネガティブなことばかりでなく、ホッとして前向きになれるような情報も併せて放送してほしい。災害報道でも被害の状況だけでなく、そこで助け合っている人々の様子なども伝えてくれるといい。

●色々な経験を積んでいる高齢者の言葉や思いには学ぶことが多い。若者にとっても財産であり、高齢者へのリスペクトも生まれるので、こうした番組を沢山作ってほしい。

●人と人を繋げていくことが必要。超高齢化社会では、高齢者と若者の間、または高齢者層の中でも置かれている環境の違いにより分断が生じやすい。分断をさらに促す役割を演じることを避け、どんな環境の人も包摂される社会を作る役割をテレビには果たしてほしい。

<ターゲット>

●若者のテレビ離れは進んでいるが、テレビで育った世代はテレビから離れる方が少数派。シルバー市場は成長産業であることに注目すべき。高齢者が好むコンテンツは今後価値が上がると考えられる。日本の社会・経済は高齢者がアクティブにお金を使って行動しないと活性化しない時代に突入するので、アクティブなシニアを応援し、彼らに愛される番組作りを目指すべき。

●人口の一番大きい割合が60歳以上という時代に、テレビが対応していかないのはおかしな話。ちゃんとした番組でちゃんとしたCMを流せば、シニア層は若者以上に購買力があるということを広告会社やスポンサーに分からせることが必要。テレビ朝日はドラマでも情報番組でもシニア層に対しての番組を充実してきた。いい番組を作り、若い層も巻き込んでいく。この方針のどこが悪いんだ、と進めていけばいい。

●これからの時代は世代のドミノ倒ししかない。ここに刺さった、話題になった。それがドミノのように色々な世代に広がる。少子化、高齢化だからと分析しても答えは出ない。新しいこと、チャレンジングなことをしている時にヒットが生まれる。

●ターゲットにこだわりすぎ、「こういう人が見ているからこう作ろう」というのがテレビをつまらなくしている。視聴者からみて予定調和になり、見たことのないものが“ありそうな気がする”ネットが強くなる。制作者は自分が何を作りたいかという原点に戻るべき。楽しませること、冒険をしない限り、まだルールが整備されていないネットには負けてしまう。

<ローカル局>

●少子高齢化はローカル局にとって深刻な問題だが、二つの方向性がある。一つは“脱ローカル”。ネットの力を積極的に活用し、放送エリアに縛られない発信の在り方、収益構造を作っていく。もう一つは“超ローカル”。ローカルに深くコミットし、地域に必要不可欠な存在であり続けるにはどうあるべきかを徹底的に考えて、目指していく。プロジェクトを立ち上げ、地域のネットワークを作って、地域の課題解決に繋げ、社会貢献に繋げる。両方を追ってもいい。その中で地域の局が活性化していく。

●ローカル局は地域の情報、祭りや産業などを積極的に取り上げ、キー局も積極的に地方の情報を発信し、共に文化を作り上げていくことが大事。地方創生はキー局にこそ出来る。

<これからのテレビ>

●これまでテレビは一方向で沢山の情報を伝えてきた。これからはコミュニティーの中核として情報を発信すると同時に、視聴者の意見や情報を取り込み、それを番組や情報に活用する循環システムができるとよい。特に災害情報をSNSと連携して発信していくと、被災者もより的確に情報判断できる。

●これからも視聴者と向き合い、それぞれの時代に生きる人々が抱えている切実な思いを受け取って番組を作ってほしい。視聴者より1歩先に進み、こちらの方向へ行ったらいいと手を差し伸べるような番組を作ってほしい。

●ニュースやドキュメンタリーで見ごたえのあるものが少ない、という声が多い。「本当はドキュメンタリーを作りたい」という希望を持っているスタッフもいる。担当とは別にやってみたいことができる自由な場や枠があると違ったものが生まれるかもしれない。

●今は毎週同じ時間にテレビ受像機の前で見る視聴習慣がかなり残っているが、常時同時配信でいつでもどこでも見られる形になると、この貴重な視聴習慣はあっという間になくなってしまう。ネットと付き合わなくてはならないが、躍らされないようにしないといけない。少子高齢化の中、今持っている貴重な宝物をいかに維持していくかを考えることが必要。

●5年後10年後には、視聴者がアプリでテレビ朝日を共有するコミュニティーができ、多くの情報を共有し、発信する仕組みが構築されるのではないか。

<局側見解>

●今見てくれている人を大事にしつつ、もっと広げていきたい。テレビはどこを狙い、どこは要らないというものではない。面白いものをちゃんと作って、それが広がるのがいい。

●高齢者が大勢見る番組の中にネットが入っていけば、その人たちとのコミュニティーができるのではないか。テレビを入り口にカルチャー、スポーツ、医療などと繋がるかもしれない。

<亀山社長・COOからの報告>

●年間視聴率・年度視聴率とも、全日、ゴールデン、プライム、プライム2いずれの区分も2位。

●7月13日から44日間開催した「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」は大きな事故や混乱もなく無事終了。

●報道局の社員にハラスメントにあたる不適切な行為があったため、8月30日に懲戒処分とし、あわせてその職務を解いた。当社では、現場からの情報を受けた直後の7月初めから、コンプライアンス統括室を中心に慎重に調査してきた。その報告を受けて8月19日に調査委員会を立ち上げ、事実関係を確認した結果によるもの。事態を重く受け止め、より一層社内教育を徹底するなど、再発防止に努める。
以上