放送番組審議会

第602回 放送番組審議会報告 7月18日(木) 開催

■出席者
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小陳  勇一  委員
小谷  実可子  委員 
小松  成美  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
増田  ユリヤ  委員

「放送番組全般」

<番組全般>

●今のテレビ朝日はバランスがいいが、その分首位を目指さなければならない、後ろから来る局に対して守らなければならないと萎縮し、新しいことをやりにくい環境にあるのではないか。ガードに回っている感じがある。空振り、大失敗を覚悟で新しいことをしないと、次の時代に行けない。全体にシュリンクし、金属疲労していく。レガシーを大切にしながら、次のレガシーを作るための手段を取らないともったいない。

●新しいことに貪欲で、何か面白いことをやりたいという人たちが集まって、メディアを動かしている。真実を追求する報道も含めて、放送局は常に好奇心に満ちているべきだ。

●民放各局のバラエティー番組などで人権にかかわる不祥事がいくつかあった。何が許容され何が許容されないかは時代によって変わる。問題となった発言をしたのが当事者だったとしても、それが放送されて多くの人の目に触れた時に、関わりのある人がどのように受け止めるかということに敏感にならなければいけない。

●長期的な視点での番組作りが大事である。取材対象者にも丁寧な対応になり、取材の視点も変わり、インタビューの仕方も違ってくる。作品の質も向上するのではないか。

●日本のダンサーは世界的レベルでも非常に能力が高い。競技・スポーツとしてのダンスに注目してはどうか。また、ダンスとドラマやバラエティーのコラボもあり得るのではないか。

<報道・情報番組>

●今回の参院選報道は全体に低調という印象だが、「羽鳥慎一モーニングショー」が大変充実した活発な取り組みをしていることは大いに評価すべきである。毎日争点を掲げ、40分かけて徹底討論している。視聴者の声を出発点にし、争点は視聴者、国民が決めるというスタンスが貫かれているのがよい。対立する意見を持っている専門家を呼んで冷静に論理的に討論し、議論をふまえて各党の意見を客観的に見せる。結論は出さずに視聴者に考えてくださいと委ねる。これこそ質的公平性を追求する選挙報道の一つのあり方ではないか。

●「羽鳥慎一モーニングショー」の選挙報道が素晴らしい。制作者の側に問題意識があり、テーマを選び、ガチンコでトークしている。スタジオがしっかりできているのもすごい。

●最近「ニュースがつまらない」という声を聞く。例えば午前中に情報番組が2、3あると同じニュースを何回も繰り返す。さらに他局でも同じニュースを同じトーンでやっている。個性・棲み分けが見えにくい。自分たちがどこに判断基準を置いてニュースを捉え、表現していくかを考えた方がよい。

●“速報”として伝えられるニュースが、本当に速報と言える内容なのか疑問を感じることが時々ある。そこまで急ぐ必要がないものを、作り手の気持ちで他のニュースよりも先に取り上げるような放送をしているのではないか。

●「大下容子ワイド!スクランブル」は毒がない。バランスが大下さんのよいところだが、もう少しアクセントやリズムの強いものがあるともっと面白くなるだろう。

●「羽鳥慎一モーニングショー」に出てきた“仰向けに寝る猫”に目を奪われた。冒頭にショッキングな映像を流すことがあるが、朝は衝撃映像で目を引かれるよりも、癒される、ほっこりするもので始められると、いい朝のスイッチを押すことができる。

<ドキュメンタリー>

●黒柳徹子さんの「ユニセフ親善大使35周年記念番組」を見始めたらくぎ付けになった。見終わった時に、生きていたおかげでこの番組に出会えた、ありがとうという気持ちまで行きついた。テレビはこんなにも力があるということを教えられた。魂に届くような番組を何か月かに1回でも見せてほしい。

●テレビの基本はドキュメンタリーだが、レベルが低い。制作者側の問題意識が劣化しているのではないか。もう少しドキュメンタリーに力を入れて、1年に3~4回でも大型のドキュメンタリーを放送してほしい。

●人に勧められて「テレメンタリー」の番組をAbemaTVで見た。非常にいい内容だった。なぜ今まで気づかなかったのかと新聞のテレビ欄を見ると「テレメン」と書いてあるだけだった。いい番組なのに日曜の早朝4時半放送ではもったいないと思うが、他の時間帯に移すのは難しいのだろう。もう少しPRし、世の中に知らせる工夫をしてはどうか。

●「テレメンタリー」は放送時間の問題もあるが、こういう番組を見てもらうには工夫が必要。若い人を募って一緒に番組を作るなどできないか。

<バラエティー>

●「関ジャム 完全燃SHOW」は、関ジャニ∞の音楽性の高さ、番組の作り方が素晴らしい。特集の音楽を徹底的に解剖し、最後に関ジャニ∞が演奏する。教養番組でありながら、バラエティーになっている。

●膨大なアーカイブはテレビならでは。年月を経てどうなっているかという視点で、かつての人気番組を総ざらいしてみると、使える映像があり、人間ドラマが描けるのではないか。2002年に始まった「銭形金太郎」が17年後にどうなっているかということがある。

<ドラマ>

●テレビ朝日のドラマは安定感があり、今見たいストーリーがラインナップされている。刑事ドラマや医療ドラマには人間の生き死に、正義と悪のせめぎ合いがある。「おっさんずラブ」は世の中が受け入れてくれるかわからないテーマを立ち上げ、社会現象を起こした。誇るべき作品。

●地上波テレビのドラマを見ているのは高齢者と言われるが、有料チャンネルや配信のオンデマンド視聴を駆使し、映画化したり再編集したりすれば、若い人たちも見るだろう。制作者は、どうすれば視聴率がとれるか、バイオレンスや性的な表現がどこまで許されるか、といったことと日々戦っているだろうが、様々なチャンネルを使うことで、自由にコンテンツを作れるようになることを望む。

<アナウンサー・キャスター>

●女性アナウンサーをどう起用し、どう育てるか非常に大事な時期に来ている。かつて大人気だった“女子アナ”が報道番組に抜擢されると、ピーク時の容貌と比べられるなどアナウンサーとしての本質を外れたところで評価されることがある。これは無礼なことだが、若くて元気なピークの時に勉強を怠り、タレントと違いがない仕事をしていた本人にも責任がある。アナウンス能力・技術をきちっと身につけること、年齢相応に老けていきキャピキャピしないことが重要だ。

●元アスリート・オリンピアンが色々な番組に出演し、本来アナウンサーがするような仕事をすることが増えているが、アナウンサーとしての仕事を学んだ上で、アスリートの経験や感性を生かしていくべきである。放送の現場では温かくも厳しい目で言うべきことは言って育てていくことが、元アスリートたちのセカンドライフやキャリアの発展につながる。

<配信サービスについて>

●テレビ局は視聴者ニーズに合わせて、全番組を放送終了直後からオンデマンドで見られるサービスを率先して作るべきである。追っかけ再生があるとなおよい。コンテンツを色々なプラットフォームに出すのではなく、自社のサービスで独占提供するのが世界の流れ。独占でなければメディアとしてもコンテンツとしても価値が下がる。テレビ朝日もコンテンツを自社のプラットフォームで視聴者にわかりやすく提供することが、視聴者にとっても利便性が高く、収益源の確保にも有望ではないか。

<局側見解>

●テレビを取り巻く環境は多様化している。視聴者のニーズをしっかり捉えて色々なチャレンジをしていきたい。

●レガシーを大切にしつつ更にそれを壊していくということを肝に銘じ、若手と新たなチャレンジをしながらこれまで培ってきたものをよりよいステージに上げていきたい。

●既存の番組の中でそれぞれ新しいチャレンジをし、見てくれる人の層の幅を広げていきたい。
以上