放送番組審議会

第585回 放送番組審議会報告 11月17日(金) 開催

■出席者(敬称略)
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小倉  純二  委員
黒鉄  ヒロシ  委員
小松  成美  委員
関川  夏央  委員
田中  雄一郎  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員

課題番組

「金曜★ロンドンハーツ」

<番組全般>

●進化している。マンネリ化していない。この番組に隠れてあるのは実は文学性。芸人の図らずも滲み出てしまう本音、人間性、生き方を楽しむ。それで人生が何か知った気になる、または自分の人生を振り返る。そういう技が仕込まれている。妥協のない演出で、芸人はかなりの覚悟で出ている。労苦をいとわない撮り方をして、文学性を継ぎ足しながら笑いをとる特筆すべきバラエティー。

●スタイルの自由さがいい。多くのバラエティー番組が同じフォーマットで作り続ける中、その時代に視聴者が求めているものを敏感に感じ取りながら、毎回スタイルを変えて作り続けている。その熱量は画面を通じて伝わってくる。だからこそ時代に合わせて次々に人気企画を生み出し、長寿番組としてやってこられたのだろう。

●かつて感じていたハラハラとは違う良さを感じた。MCの二人が若い頃のようにとんがって物議を醸し出すことを次々やるのではなく、番組の作り手の自分たちが面白いと思うものを自分たちの年齢なりに作るという堂々としたものが、番組のオーラとして画面から伝わってくる。

●丹念な編集が素晴らしい。凄まじい数のカメラと音声を画面で見て、全ての出来事を漏らさず撮ろうという執念が分かった。膨大な素材の中から発した言葉を取捨選択し、話した人の顔を編集して、テロップを付け、過去の番組も掘り出している。

●「ロンハー」を見ていると、芸人がこの世界で生き残ることの大変さを強烈に感じる。アピールする懸命さが伝わってくる。素の部分をうまく引き出しているということかもしれない。彼らは熱湯風呂、ランク付け、ドッキリ、あらゆることを受け入れて、面白がらせてくれる。尊厳とギリギリのところでやっているが、やはり消えていく。笑いや騒々しさの向こうにある種の哀感をくっきりと感じる。

●芸人は空気を読む、あるいはリアクションという、社会の模型の中で生きていく術を体現している。それをそのまま映像として見せていること自体が物語であると思った。

●バラエティーは新しいこと、粋なことをやるというのがテレビ的出発点だったが、今はパーソナリティーの売り買いになり、私小説的に収縮してきた。“芸人”とはいうが芸ではなく、パーソナリティーだけで勝負している人々が、テレビの向こう側にいる大衆として、テレビの外側にいる大衆に働きかけることによって成立する不思議な構造に至っている。

●毒ときわどさが「ロンハー」の魅力。時にはハレーションを起こすこともあるが、これがなくなったら面白くない。いじめに見えるかもしれないが、さじ加減が絶妙で、タレントに愛がある。だから最後はきちんと救いがある。これが番組の成否を分ける大事なところ。

●タレントのキャラクターや人間関係をある程度共有していないと楽しめないハイコンテクストの番組だと思う。暗黙の了解を持てない視聴者が世代的に増えてくると、これまでの番組作りの手法が難しくなってくるのではないか。

●淳さんが地上波とネットを棲み分けてしまっているのかと気になった。昔は、過激にやりたいことをやろう、それで打ち切りになるなら仕方ないという勢いだったが、地上波で出来ることはここまで、それ以外はネットでやると見えてしまうところがもったいない。

●芸人は一般人と違う社会を生き、一般人と違う世界を身に着けている。そこに一般の理屈をどこまで通すか。教育上悪いとか不快といったことは、制作者側はあまり考えなくていいのではないか。芸人は時代の中で生きていて、アピールできることは全部やろうと考える。スタッフはそういう人達と共に生き、共に作っているということを意識の中に持っていた方がよい。

●2000年代半ばからPTAの「子供に見せたくない番組」の1位に挙げられ、それを掘り下げた大型の記事、賛否をまとめた記事などもあった。毒、刺激がある方が面白いので、それぐらいの勢いでもう少し踏み込んでほしい。

●安定や停滞を目指す時期はあっても構わないが、それが過ぎたらどうするかも真剣に考える時期ではないか。

●ワースト番組を狙うようには出来ないかもしれないが、あまり優等生になってはいけない。

●1時間で起承転結がある1つの作品として完成していたのが、2時間スペシャルで2本立てになると、題材も違い混乱するのではないか。作品を重視するのなら1時間で毎週やってほしい。

●2時間スペシャルで、お色気を感じる女性芸能人スポーツテストと、子供のいる家庭でも安心して見られるみやぞんの “ほのぼの”の組み合わせは相性が良くないと感じた。

<企画>みやぞんウォッチング 知らない子供にどこまで付き合うか?(10/27放送 2時間SP)

●ドッキリという古典的な手法と、みやぞんという新しい芸人の天真爛漫な人間性が化学反応を起こし、エンターテインメントになっている。

●もしかしたら本人はカメラに気づいているかもしれないと思いながら、「それでもいいか」と思えるほのぼのとする内容。

●うまい構成で思いがけない面白さがあり、みやぞんの人柄には好感を持った。

<企画>女性芸能人・秋のスポーツテスト(10/27放送 2時間SP)

●ある種開き直った人が、コンプレックスや欠点を抱えながらも、身体を張って一生懸命やっている。視聴者は元気をもらい、この番組に救われている人たちもいる。

●真面目にやっている人、笑いをとろうとしている人、どちらもその人の人間性、人間が抱え込んでいる生き方そのものが出ている。そこに狙いを定めて撮っている。

●アイドルはこのような企画には出ないという境界線を悠々と越え、10代の女の子が熱狂するスターが真面目にガチで走り、ジャンプする。時代のスターの変遷を感じるとともに、そこにベテランの芸人が絡んでいくという今のバラエティーのありようも感じる。

<企画>うぬぼれ注意!芸人リスペクト番付(11/3放送)

●プロがパスを出し合う妙技が面白い。皮肉を言われたり、腐(くさ)されたりしながらも、お互いの技を受け止め、切り返す。さすがだと思った。

●欠点、コンプレックス、功名心、嫉妬心など人に触れて欲しくない部分に敢えて踏み込んでいく。視聴者が何となく感じている部分をズバッと言い当ててえぐっていく、それが面白い。

●年齢は上でもいじられキャラの出川さんが、一方的に格付けする権限を持っているという絶妙な関係値が面白い。出川さんのキャラクターのおかげで、格付けのエグさが中和されて、安心感を持って見られた。

●出川さんがかなりきわどいことを言っているが、芸人たちはランキングを受け入れている。出川さんの良さが出ていて、芸人とのやりとりも楽しかった。

●楽屋ネタかもしれないが、選び方やその理由に嘘がない。それもまた芸人の現在の魅力。楽屋でも、打合せでも渾身で臨み、それが彼らのエネルギーの発露であることがわかる。

●出川さんの発言にその芸人の本質も、出川さんの本質も浮き彫りになっている。予定調和している風を見せながら、そこから吹きこぼれるものがちゃんと撮れている。

●出演者の知名度が高く、お互いに気心も知れているだろう芸人たちのテンポのいい掛け合いは非常に面白かった。

●すべからく面白いこと、楽しいことはタブーが破れた時。出川さんが後輩に対し本気でかなりのことを言っていて、本音と建前、遠慮などで成り立つ社会のタブー破りの領域に来ている。

<局側見解>

●時代、ロンドンブーツや自分達の年齢等色々なことを考えて、バランス感覚がよくなり過ぎていたところがある。本当に自分達がやりたいことを自爆するような気持ちでやっていきたい。

●18年やってきて前へという気持ちよりもコンプライアンスや視聴率を気にしがちだったが、前に進む元気が出た。

●インターネットが出てきて、地上波はつまらないという感じになってくると思うが、1ディレクターとして、この番組は絶対終わらせてはいけないと改めて思った。

<角南社長からの報告>

●10月19日「テレビ朝日系列24社放送番組審議会委員代表者会議」が開催され、「テレビは何故つまらなくなったのか」について活発な意見交換が行われた。

●テレビ朝日ホールディングス上期決算は増収減益。

●年間・年度視聴率は、全日が2位、ゴールデン民放3位、プライム2位。10月クールは全区分2位で推移。

●AbemaTVは11月5日2300万ダウンロードを突破。「72時間ホンネテレビ」は視聴総数が7400万にのぼり、大変話題となった。

●「やすらぎの郷」がギャラクシー賞2017年9月度月間賞を受賞。

コンフィデンスアワード・ドラマ賞では石坂浩二さんが主演男優賞を受賞。

東京ドラマアウォード2017では、倉本聰さんが脚本賞を受賞。

東京ドラマアウォードでは、【単発ドラマ部門】で「五年目のひとり」が優秀賞を受賞。
以上