放送番組審議会

第578回 放送番組審議会報告 3月17日(金) 開催

■出席者(敬称略)
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小倉  純二  委員
黒鉄  ヒロシ  委員
小松  成美  委員
関川  夏央  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
山瀬  一彦  委員

課題番組

「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」

<課題番組について>

●クイズの形式や内容を変えていき、創意工夫の精神に満ち溢れている番組。変幻自在な番組作りを考える基盤が受け継がれている。新しい発想を目指す風土を大切にしてほしい。

●制作者が、時代に合うクイズ番組の形について試行錯誤を重ねながらスタイルを変えてきた。この10年余の社会の変化と番組の変化は相似形で、脱ゆとり世代の気分を上手く捉えていった。『プレッシャーSTUDY』や『学力王No.1決定戦』という形に変わってきたのは、時代や人々の求めるものにうまく適応していったのだと思う。

●よく出来ていてクイズ番組として限界だろう。色々な要素が入っていて、さらにゲーム性もある。自分はクイズの中身や正解には興味がなく、解答者の正解した時の喜び方や不正解の悔しさに人格が出て、そこを見る楽しさがある。

●見て一番面白いのは人間だった。プライドや言い訳を含めた人間関係を描いたら、もっと面白くなる。人間臭さが出てくるといい。

●テレビ朝日のバラエティーは、出演者の素顔が垣間見られることが躍進の鍵を握っていた。素顔を出さざるを得ないよう、命懸けでそれを引っぱりだすことだ。

●問題を難しくし過ぎると、視聴者が離れて行く。『下克上チャンス』はやめず、学力ばかりではなく理不尽なところもあることを織り込むことで、長続きするのではないか。

●『下克上チャンス』が非常に面白い。“世の中ってこんなもんよね”と面白がって見ている。

●何を売りにするのかという時に、一番のテーマはガチであること。本気さは演出しないと伝わりきらない。下克上カードを切る時も、“誰を引きずりおろす”と解答者が指名するなどしたほうがいい。
●司会のさまぁ~ずと優香が知識を競う番組の緩衝材となり、魅力的。清水アナウンサーは絶妙なテンポとリズムで実況をし、その中でルールも示すという鮮やかな職人技で、存在感がある。そこにザキヤマが絡み、絶妙な布陣である。

●どの局のクイズ番組も、顔ぶれが大体同じ。意外な人が出て来ると非常に面白いので、芸能界だけではなくて、スポーツ界などあらゆるところから徹底して見つけてほしい。

●解答者を新しい人材に替えていく工夫を。個人戦は同じメンバーに固まるので、団体戦を中心にした方がいい。席順を視聴者アンケートやAIの解析で決めるなどすれば、新たな面白い作り方になる。

●団体戦の形ができているので、国際試合や、大学対抗戦、ライバル企業対決、AKB対ジャニーズのようなものもできる。クイズという競技は運の要素が大きく、強い方が勝つとは限らないので、非常に面白い。

●番組の後半になるほど尻上がりに面白くなっていった。細部にわたって視聴者を繋ぎ止めておこうという工夫が凝らされている。

●初めて見ると、番組の進行を理解するのに若干時間がかかった。クイズの進め方をきちんと解説するなど、番組の入り口をもう一段工夫し、親切にするとよい。

●最初にゴールがどこかを知らされないので、結果に興味がなく、途中で見るのをやめられる。年に1回か半年に1回、本気の生放送の対決をやってみたらどうだろう。

●年に1回か2回、ライブでやったら面白い。これからの番組づくりの思いもよらなかったヒントやシーンが、ライブで出て来るのではないか。

●階段状に上位から並び、脱落した人は椅子を下げられるなど、映像で一瞬に勝敗の状況などがわかる演出がなされている。

●優勝した人に、とっておきの1問を最後にガチでぶつけてみる。“何が出てくるか分からないから恐い”というような終わり方。番組として毒のようなものがあればいいのでは。

●この番組は出場して優勝したら恥ずかしい、負けても恥ずかしい、という輻輳(ふくそう)した構造を持っているという印象を持った。問題の作り方を含め、演出上の苦労、工夫の大変さを察するが、徒労感がにじむのを感じざるをえない。

●世界遺産や国語など、日本人の知識の欲求、興味の半歩ぐらい先の問題を出していく。その構成能力、サジ加減が絶妙。

●世界遺産の回は、映像が美しく非常に良かった。ブラジルのコルコバードのキリスト像は、普段見られない角度を特別に撮影していて視聴者も喜ぶ。

●3時間は長すぎる。19時と20時と21時は視聴者の生活実感として違う。それがのっぺりと一色で塗られてしまうと、視聴者はついていけるのか。もう少しコンパクトに作りきっていくことが、結果的に、視聴習慣や信頼を取り戻していくことに繋がるのではないか。

●これだけ学力競争を煽っているのだから、上手くいかなかった人、挫折した人、敗れた人の気持ちをきちんと鎮める番組も局として用意しなければならないだろう。

<課題番組以外>

●WBCの日本×オランダ戦を見始めたら目が離せなくなり最後まで見てしまった。本気の対決を生中継でやっていれば、何時間でも見ていられる。

●「プロレス総選挙」〈本当にすごいプロレスラーベスト20〉はすごかった。順位を付けられたプロレスラーが出て来るし、見せてほしい昔の映像が全部ある。こういう番組がテレビの本領。また、総選挙という発明はすごいもので、他にも応用できる。

●築地市場の豊洲移転問題についての報道が、かなり一方的になっているのではないかと憂慮する。一方に振り切るのはいいが、もう一方の意見のコメンテーターを用意するなど、両論併記しないと、後で問題になるのではないかと危惧している。

●「モーニングショー」で森友学園をめぐる国会証人喚問の時間がWBCと重なることに関して、コメンテーターが何度も発言したのはまずい。注意を喚起したい。

●プライム2が2位になっているのは不安な要素。破天荒なアイデアと演出によってプライム2を獲得することがテレビ朝日を支えてきたが、その力が少し抜けているのではないか。

●秋田の新聞には、“きりたんぽ”に関し地元の人の声がかなり載っていた。事情がわからない一般の人がタイトルだけを見て怒るのは、健全であり普通だと思う。

<局側見解>

●長年やってきていることで様々なものが足され、結果最大公約数になり過ぎていないかと反省している。ガチンコの部分を大事にすること、またライブについても考えていきたい。

●クイズという題材であれば、いかようにでも形を変えていける。進化していけるというスタイルはずっと守っている。ブラッシュアップして、全力で頑張りたい。

●クイズの限界という言葉が非常に響いた。正解率、学歴、情報を強迫観念みたいに詰め込み過ぎ、リアリティーが薄れてしまったところを反省点とし、取り組んでいきたい。

●豊洲問題については、小池都知事の発信する情報が非常に強いが、それに一方的に乗らないようにと指示を出している。一つ一つ気がついたところを指摘しながら直していくという形を取ってきた。「モーニングショー」は、今一番勝負をしている番組だが、アクセルを踏むところとブレーキを踏むところはきちんとしなくてはいけない。当然、反対側の意見のコメンテーターがいなくてはならない。きちんと注意してやっていきたい。

●籠池問題については、「モーニングショー」で展開する中で、田崎史郎さんに出演頂き、逆側の目線でも喋ってもらうという形でバランスを取っている。コメンテーターの発言については、あの時点でどう対処すれば良かったのか悩ましいところ。

<角南社長からの報告>

●WBCは、日本が決勝ラウンド進出を決めた。2次ラウンドのオランダ戦はWBC史上最長の死闘で25.2%をマーク。イスラエル戦は 25.8%。

●サッカーW杯アジア地区最終予選の対UAE戦は23日、対タイ戦は28日。

●4月改編について。週末の夜ニュース番組を放送。「サタデーステーション」のキャスターは高島彩。「サンデーステーション」のキャスターは長野智子。倉本聰脚本のドラマ「やすらぎの郷」が4月3日にスタート。月~金曜日の昼12時30分から20分の帯ドラマで、シニア世代がターゲット。

●間もなく開局1年を迎える「AbemaTV」が、今月15日 ダウンロード数1500万を突破。

●山瀬委員が、今回で番組審議会委員をご退任。2年間お世話になり、感謝申し上げたい。
以上