放送番組審議会

第553回 放送番組審議会報告 9月19日(金) 開催

■出席者(敬称略)
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
市村  友一  委員
内館  牧子  委員
小倉  純二  委員
黒鉄  ヒロシ  委員
丹羽  美之  委員
野際  陽子  委員

■欠席者
関川  夏央  委員
藤田  晋  委員

テレビ朝日「放送番組基準」の一部改正(民放連の「放送基準」改正に伴うもの)について諮問し、「承認する」との答申を受けた。

“従軍慰安婦問題”関連報道等について

●「報道ステーション」の検証番組は、大変よく出来ていた。特に古舘さんの発言は非常にきちんとしていた。あれだけの厚さと時間で放送した番組はない。

●テレビ朝日だからこそ身内の肉を切るという姿勢が必要。しかし現実には、1カ月たって初めての放送で、視聴者に対する裏切りになってしまう気がした。

●11日の「報道ステーション」までやらなかったのは、忸怩たるものがある。あれだけ遅れたことはダメージ。逃げたと言われても仕方ない。

●吉田証言の誤報問題で、さも従軍慰安婦はなかったかのような世論の盛り上がりは問題。強制連行だけの問題ではないので、朝日新聞、テレビ朝日が、厳しい状況ではあるが、背骨を伸ばし、主張していくべきは主張していくということが必要。“売国”“国賊”など非常に嫌な言葉で批判され、戦前に戻ったかのような雰囲気さえある。ここは本当に正念場。襟を正すと同時に頑張ってほしい。

●従軍慰安婦などはないものとされるような風潮や、過激な言動が繰り返されることについて非常に危惧している。今年8月の放送を見てみると、終戦記念の番組が少なくなってきている。来年の“終戦70周年”をどう迎えていくのか、各メディアに求められている。 

●(原子力規制委員会の会見についての訂正謝罪があったが)とにかく脇を締めて報道してほしい。

課題

「今の時代、本当に見たいテレビ」

●「新しいことをやっているな」という印象を持っているテレビ局に、まずチャンネルを合わせる。作り手側の鋭敏な感性や、時代をキャッチする力にかかってくる。

●視聴者にこういうものが見たいというニーズがあって、それに合わせて作っていくというよりは、視聴者も気づいていないような何か新しいこと、面白いこと、そういうものをテレビはもっと見せていくべきなのではないか。

●テレビで見たいのは、リアルな“今”。作り手は大衆のためにテレビ番組を作るつもりで、自分が大衆の一人であることを忘れている。自分はこれだったら見たい、というものがもっとあってもいい。

●“ライブ”が、何が起こるか分からないというドキドキ感、“この世あらざる何か”を作り出す。もっとこだわってほしい。結局、エンターテインメントというのは奇妙奇天烈。それをどれだけ考え詰めることができるか、“ライブ”をどれだけテレビマンが自分の体の中に持っていられるか、それがこれからのテレビではないだろうか。

●今までのテレビは、百貨店だった。何でも揃っているし、安心もする。でも今の時代は専門店を見に行く。スマホからテレビ画面に映し出される時代になったことに脅威を感じなければいけない。ある種無責任で面白ければいいと作っているネットのコンテンツと戦っていくには、真摯な態度で、絶対的に正しいもの、まがい物はないという作り方で、刺さるコンテンツを作らなければならない。

●テレビの中から品のいい笑いがなくなってきた。辛口を辛口のまま放り出してしまうのではなく、もう少し捻ったりオブラートに包んだり、ちょっと笑ってしまうような、少し上質な笑い。ジャンルは問わず、歴史に残っていくような笑いというものがほしい。

●“本当に見たい映画”はすぐ答えられるが、テレビは答えられない、それがテレビ。日常で付き合うことができるメディア、だからこそ最強。総合編成だからこそ素晴らしい。

●テレビはリラックスして見たい。もちろん、ダラダラやればいいというわけではなく、そこに何らかの付加価値を持って来てこそ視聴者に支持されるのだろう。

●30分番組をもっとゴールデンで流せないか。ちゃんといいものができれば、人気が出るのではないか。

●他局が、「24時間テレビ」や「27時間テレビ」を放送し視聴率を取っている。ネット局が全部協力し合って1日放送する、という番組があってもいいのではないだろうか。

●異常気象の対応、自然災害の対策をきちんと報道する必要がある。系列24社の力で様々な情報を集めれば、素晴らしい番組ができるのではないか。

●今、日本の姿が都会も地方も急激に変わっている。長い年月をかけて代々にわたって築いてきた山里や田畑などの田園風景など、4K、8Kの能力を活かして、しっかりと映像として残してほしい。

●過去に放送されたテレビ番組を見る環境が整っていない。60年余のテレビ番組は立派な現代史のドキュメント。ちゃんとした公共財として位置づけて、しっかり見られる環境をぜひ作ってほしい。過去の番組を研究し、批評し、それが放送の現場にもフィードバックされ、次の番組制作につながっていくのではないか。

<早河会長兼CEOからの報告>

●朝日新聞が8月5~6日に従軍慰安婦の関連の検証記事を掲載して以降、テレビ朝日には、「なぜ番組で取り上げないのか」という意見が多く寄せられていた。「報道ステーション」では、吉田証言について番組独自に取材する必要があるとし、作業を始めた。9月11日、番組の大半を割き客観的な立場で検証結果を放送した。視聴者からは評価するという声もあったが、厳しい批判や不満の声のほうが多かった。今後も各番組の判断で適宜、公正に取り扱っていくつもりである。

●9月10日の「報道ステーション」で、九州電力川内原発に関する原子力規制委員会の田中委員長の会見を放送したが、報道内容に事実誤認や、意図的な編集があると指摘を受けた。12日の放送で訂正、謝罪した。原因を正確に把握した上で、会社として厳正に対処する。

●7月19日~8月24日の37日間開催した夏祭の来場者が445万人を数え、初の大型イベントとして成功裡に終わった。来年以降の継続を決定。

●出資映画「STAND BY ME ドラえもん」が興行収入70億円を越える大ヒット。世界57ヵ国の配給が決定。レギュラーのテレビシリーズは、6月からアメリカで衛星テレビでの放送が始まっている。
以上