放送番組審議会

第505回 放送番組審議会報告 11月26日(木) 開催

■出席者
堀田  力  委員長 (弁護士、さわやか福祉財団 理事長)
石坂  啓  副委員長 (漫画家)
川淵  三郎  委員 (日本サッカー協会名誉会長)
北城  恪太郎  委員 (日本アイ・ビー・エム最高顧問)
黒鉄  ヒロシ  委員 (漫画家、イラストレーター、エッセイスト)
関川  夏央  委員 (作家、神戸女学院大学 客員教授)
見城  徹  委員 (幻冬舎社長)
駒野  剛  委員 (朝日新聞社論説委員)
田中  早苗  委員 (弁護士)

■欠席者
内館  牧子  委員 (脚本家)

課題番組

「ドラマ全般」について(「相棒」「交渉人」「マイガール」を中心として)

<評価点>

「相棒」

●強い世界がある。その強い世界に入っていけるかどうかで、視聴率が変わる。これほど強く世界を持っている作品はあまりない。

●ドラマ的リアリティがある。これだけの世界観を出せているのは脚本がいいのだと思う。最初に取り決めたコンセプトがいい。映画も大ヒットした。70年代の左翼運動にこれほど理解を示したドラマはほかになかっただろう。

●非常に安定感があって、水谷さんの相棒が及川さんになってからのほうが期待が大きいと思う。及川さんは、女性だけではなく、男性にも人気があるので、幅広い層に受け入れられると思う。
「交渉人」

●日本のテレビドラマ離れした濃密な映像構成で美しい。内容も非常に緊迫したものでぜひ続けてほしい。

「マイガール」

●主役の相葉さんが好演していて、よく演技できていると思う。子供もいいし、てんとう虫の演技が素晴らしいと思う。

●すごくチャレンジ精神があると思う。草食系男子に対する理解や、癒しを求めている人たちが多くなってきているのかと思う。果敢に挑戦しているドラマだと思う。

「その他のドラマ」

●「その男、副署長」は古典的だが、船越さんのキャラクターが生かされていて、その中に新しいものを取り入れようという意欲を感じる。

●「時効警察」のように、テレビ朝日の深夜枠のドラマは強いと思う。才能ある書き手と、遊びの精神があれば相当面白い番組になるのだと思う。

●テレビ朝日は、「弟」をはじめとして「点と線」「氷の華」「刑事一代」他、スペシャルドラマに関しては、これ以上のものがテレビでは作れないだろうと思うぐらい、きちんとしたものを作っていると思う。

<課題・提言>

●「交渉人」はもっと米倉さんのワンマン・ドラマにしたほうがいい。

●「交渉人」の米倉さんは、演技も上手くてとても良い。少し残念なのは、バイプレーヤーの個性的で面白い方が出ているのにもかかわらず、絡みがあまりない。もっと違った絡みがあれば、物語に変化が出て深みも出ると思う。

●「交渉人」の米倉さんの交渉術には物足りなさを感じる。

●「マイガール」は世界としては出来上がっていると思う。ここからどういう指示をプロデューサーが脚本家やディレクターに出して、強い世界を作っていくかが課題。
オリジナリティのある世界を創ることが大事だと思う。

●「マイガール」は、子供と親が見てもいいようなもっと早い時間帯に放送するのも良いと思う。

●出演料を削減するために同じ人が別々のドラマに使われているように思える。出演料を削減して当てはめるのではなく、キャスティングありきで考えてほしいと思う。

●「アンタッチャブル」の仲間さんは、「ごくせん」や「トリック」などと同じような演技をしているように思える。

●「その男、副署長」は昔風のドラマの感じがした。なぜ京都で撮影しているのか理解 ができない。京都で撮影する意味があまりないかと思う。もう少し地方色を豊かにすることによって、面白さが出てくると思う。

●昼間の再放送の「新・京都迷宮案内」で画面でL字型にその日の夜のドラマやスポーツの案内やニュースを入れていて、若い世代には抵抗がないのかもしれないが、いかがなものかと思う。

●テレビドラマにもチャレンジ精神とか冒険心が求められると思う。連続ドラマシリーズは長時間、一つのものを描くことができるチャンスが与えられている。その貴重な自分の表現の場を大切に作ってほしいと思う。

●日本の場合、漫画も映画も輸出産品として非常に有効だった。しかし、テレビ番組だけが及ばない。それはなぜか。われわれはアメリカのテレビドラマで育ち、そのことでアメリカは安全保障上とても有利な立場を獲得している。文化侵略は安全保障であり、そこを遠慮してはならないし、遠慮するだけの実力があるのかという問題の立て方をしてみるのもいいと思う。
<その他の番組>
●「報道ステーション」で放送した読売ジャイアンツ・木村選手と広島カープ・緒方選手の引退物語は非常に面白かった。人生の悲哀が出ていて、なかなかいい取り上げ方だった。

●「報道ステーション」はいい題材を取り上げていると思う。特に今は事業仕分けを行っていて、国民が予算の執行について非常に関心が高いので、事業仕分けの場を映しつつ、それで取り上げられた財団等の天下りの問題や、無駄なお金の使い方を取材して一緒に放送していて、番組として上手くできていると思った。

●「TVタックル」でほとんど議員の方はいなくて、コメンテーターの方だけで議論していた。「TVタックル」はやはり政治家が出てきて議論するところに面白さがあると思う。

●BPOでバラエティ番組が取り上げられているが、テレビ朝日のバラエティ番組を見た時に、似たような不快感を覚えた。笑いには毒もあったり、自己卑下があったり、いろいろとあるが、弱い者に対する突っ込み方やいじり方に問題があるなと思った。

<局側見解>

●「相棒」は、これまでの刑事ドラマとは違ったものを作ろうということから始まり、今やスタンダードになってしまったところを、さらにどう進むべきか、というところでさらなる挑戦をしていきたいと考えている。

●「交渉人」は、日本ではなかなかない形の女刑事ものをやろうと思った。監修がついているかについては、一応、医療指導や警察の監修、OBの方によるチェックはしていただいているが、この作品については、リアリズムとの戦いで、どこからをフィクションとして、どこからリアリズムを利用するか日々考えている。

●「マイガール」はファンタジー要素は強い設定だが、日常の中の喜びや、ささやかな出来事を毎回丁寧に追いかけていきたいという思いがある。

● 京都の撮影所の問題は、テレビ朝日のゴールデンタイムに時代劇を2本やっていたが、今はレギュラーをやめた。そのため京都撮影所が稼働しなくなる問題が出てきてしまうため、京都に年間でいうと4クール分のドラマの制作を発注しており、おのずと京都だけが舞台になってしまうこともある。

●出演者の問題では、出演費の削減を意図したものではない。特にゲストのキャスティングは各番組のプロデューサーに委ねられており、逆にそのことがトータルでコントロールできていないことになるのだと思う。今後の課題にしていきたいと考えている。

<その他>
社長からの報告

●上期の業績は、連結・個別とも減収。赤字を想定していたが、営業利益、経常利益、純利益とも黒字になった。

●BPOがバラエティ番組に対する意見書を民放連に提出。基本的に民放連で対応するが、テレビ朝日としても意見書を読み、議論をしていく。
以上