放送番組審議会

第477回 2月開催・関西テレビ「発掘!あるある大辞典II」捏造問題、
「いきなり!黄金伝説。」について

今月の放送番組審議会の概要:第477回(2月開催・関西テレビ「発掘!あるある大辞典II」捏造問題、「いきなり!黄金伝説。」について)
第477回 放送番組審議会報告 2007年2月16日(金) 開催

■出席者
桂  敬一  委員長
石坂  啓  副委員長
内館  牧子  委員
大島  ミチル  委員
越村  佳代子  委員
菅谷  実  委員
関川  夏央  委員
中井  貴惠  委員
堀田  力  委員(リポート)

■関西テレビ「発掘!あるある大辞典II」捏造問題について

< 各委員発言要旨 >

【民放連の対応】

●民放連というのは基幹放送事業者の集まりということだから、民放連の中できちっとした対応処理が出てこないと、それでは公権力が、ということになってしまう。そういう意味では、民放連の中でも一歩も二歩も踏み込んでやっていただきたい。

【公的権力の介入】

●例えば正確な報道なり、表現の自由なりを規制したい、メディアは目の上のたんこぶだと思っている人たちにとっては今回の件は、歓迎すべきことであり、自分たちは規制していないんだ、あちらが勝手にやっているのだということが出てくることが一番恐い。

●もともとこういう事件を政府が期待していた。あるいは政治家がそういうことを期待して、事があればそこに手を突っ込んで、自分たちの考える方向での、今回のケースで言うなら、放送法の改正をやりたいというタイミングに合ったこと、客観的には、こういうものが大きな事件にした。

●こういう件で、世間が騒ぐと、それは一つの正義感と汚れたものは叩くということに則った上での騒ぎ方だが、そのあとで当然のように公的権力が介入してくるという図式は、非常に恐いものがある。

●メディアの世界で、今回の件で危機感を共有するということができていない気がする。よその社がやっていると、そのことを番組や紙面でも大きく取り上げるけれども、もうそんな状況ではないので、ここまでくるとどこかがやったことは業界全体あるいはマスコミ全体を傷つけて不信を買うことになってしまい、なおかつ、公的権力の介入を招くことになるわけで、マスコミ全体として受け止めていかなければならないのではないか。

●放送で、間違いを犯した時、直し方は、作った者も見る側も話し合って、これはいかんねとか、これはシャレだから、シャレの範囲をこうしようよとか、やっていくのが放送のあり方だ。それができず、お上の権威で、それはいい、これは悪いと、それで放送局のほうも、そうしましょう、というのは、一番危ないことだ。

【制作体制、チェック体制の見直し】

●いろいろなチェック機能はかなり整っていると思うが、やはり意識の問題が大切だ。さらにテレビ朝日でもきっちりとした意識改革を行って、もう一度、制作の現場の見直しを行っていただきたい。

●民放連でも、自浄機能を高めなくてはいけないということを言っているようだ。この自浄機能というのが結局、自主規制につながり、当たり障りがない、文句をつけられないようなものをつくるという方向にいってしまうのではないかという懸念がすごくある。
【プロダクション、孫請けの問題】

●予算も少ない、時間も無い「孫請け」制作があり、でも仕事は欲しいというので無理をして仕事をしている現場がある。誰かが責任をとれば解決する問題ではなく、放送業界全体がある程度きちんと予算、時間をとっていい番組をつくるためにはどうすればいいかということを考えない限り、こういうことはなくらならないのではないか。

●そろそろプロダクションというものを一人前の扱いにして、たとえば権利に関する所有関係も、きちっとしたプロダクションには権利を持ってもらう。そういう環境をつくって自立してもらい、そのかわり責任を持ってもらうという関係もどんどんつくっていく必要があるのではないか。

【メディアリテラシーの必要性】

●テレビがこれだけ力を持っているということをまざまざと見せられた事件だった。納豆だけでやせられたらこんなに楽なことはない。そういう常識的な見方というのができなくなっているとすれば、それもまた恐いことだ。優良な視聴者を育てる試みを始めたらどうか。メディアリテラシーというものに本格的に取り組む時期なのではないか。

●テレビは夢を運ぶ素晴らしいメディアだが、視聴者を裏切る力もものすごく大きい。今回の件以来、視聴者に少しは賢くなってほしいと思う。

【番審のあり方】

●公的権力が介入する前に自浄機能を発揮したことは良かったと思う。突き詰めていくと番組審議会のあり方、審議委員は何をしているんだ、お飾りなのかというところまで今後発展してくる可能性があるのではないか。番組審議会は一体どういうことができるのかということも局と一緒になって改めて考えていかなければいけない。

【その他】

●視聴率だけにこだわらない、本当にいい番組というのは何かということをもう一度考えるいい時期にきているのではないか。

●視聴者については、視聴者の信頼を裏切ったという点での被害は認めてもいいと思うが、何より一番大きいのは、単独で関西テレビだけが悪いということで済むことではなく、放送という公共財が被害を受けたことだ。放送なんて信用できないものだということだが、これをどう考えるかが一番大きな問題ではないか。

■課題番組 「いきなり!黄金伝説。」について

☆ホッとできて心が温まっていい番組だ。

☆いいバラエティというのは、出演者の人間性を垣間見ることができる!

< 各委員発言要旨 >

●視聴率の良さは、お年寄りと子供が一緒に見ても極端に下品ではなくて、その辺のバランスが比較的よいから安心して見ていられるところからきている。

●この番組の面白さの一つは、あまりにも脈略がなくて、次の週に何が出てくるかわからないことだ。

●あれだけきっぱり言う開運の風水は、根拠があるのかどうかちょっと不思議だ。あれこそ少し足元をすくわれると、バッシングの対象すれすれじゃないかと思うところも少しありました。

●バラエティとしてよくできている。いいバラエティというのはそこに出ている人の人間性を垣間見ることができるところだ。ただ面白いことをやるのではなく、出ている人の本音とかそういうものが見えるのが素敵なバラエティだと思う。

●ものづくりの大切さは、人や自然とか動物に対してもとても謙虚であることではないか。それがいいものをつくる姿勢ではないか。

●見ていてほっとできて、心が温まっていい番組だ。

●この番組を見て、何か信じようとは思わない。作るほうも始めから、皆さん生活の中で不満や、つまらないことも多いけれどそれを忘れなさい、これを見ている間だけは楽しいですよと作っている。恐らくそれを見る側にも、ここにはウソもハッタリもあるな、あるいはどんな仕掛けでウソをつくかなと思って見たりすることもあり、そういうのはいいと思う。

< 局側見解 >

●番組としては最初の芸人が伝説をつくる形から大幅に変わって、今や何でもできるバラエティとして、長寿番組になるためにいろいろなことにトライする貴重な時期だと思ってやっている。

●放送ラインアップに関して、脈略があまりないのではないかというお話でしたが、その時々の世の中が要求しているものを見定めながら、制作者サイドがつくりたいものをつくっていく、変幻自在にいろいろ内容を変えていくことを前向きな形で考えている。

注)君和田社長から、関西テレビの「発掘!あるある大辞典II」捏造問題に関し報告があり、今回は、課題番組だけでなく、急遽この問題についても話し合った。
以上