放送番組審議会

tv asahi「放送番組審議会」からのお知らせ

第78回テレビ朝日系列24社放送番組審議会委員代表者会議についての報告

平成22年5月20日 (テレビ朝日 特別会議室にて)

~第1部 系列委員代表者からの意見発表~
◇ 課題 地方局のコンテンツ力、情報発信力について

<地方局の役割、今後の取り組み、問題点>

●地方局は番組制作に際し、地域住民の関心は何か、いかなる生き方をしているのか、等をしっかりとリサーチし実態をきちんと把握することが重要。視聴者からオープンな情報発信をしてもらい、テレビ局が素早く受信して上手にコンテンツに取り込むことで、より密着した情報を視聴者に届けるべき。

●地方の伝統的な祭りや行事、独特な風習や食べ物など、地方文化を外に向けて発信し、それが失われることのないよう、テレビというメディアを通じて支援していくことだ。

●「ローカルから全国への情報発信」という言葉は、単なるスローガンではないということを、地方局は再認識すべきである。

●キー局の思考や価値観にとらわれず、地域情報や観光PR等の発信力をさらに高めていくべき。発信者のパーソナリティが重要で、人間的魅力があればあるほど、地方の情報発信力が高まる。アナウンサーなどの育成も重要な課題。地域の文化を創造し、地域の豊かさに貢献すること。地域の課題などの問題提起や、地域に密着することでしか得られない情報の発信が地方局のブランド力を高め、局の収益となっていく。

●地方局に期待するのは、ニュースの発信力とドキュメンタリー。その地方ならではのニュース発信力と感覚を身につけることが大事。そして、自分たちのキラーコンテンツは何なのかをしっかりと考え抜くことと、それを地方局的なアプローチでつくることができないかを考えていくべき。

●地方局ならではの映像に説得力を持たせるには、ネタを吸収する力、表現する力、発信する力を持った人、そういう人材を保持し育成していかなくてはならない。

●朝日グループとして大きな売りの一つであるニュース力をさらに高めるため、今以上に新聞・放送などの系列関係の連携を深めるべきである。

●コンテンツ販路・流通市場の販路の拡大も、コンテンツ力強化、番組制作をしっかりやることが前提。普遍的なテーマを扱えば海外にでも売れる。コンテンツ力を高めるには(1)質の高い番組に資金が集まるような広告企業への働きかけの強化(2)コスト削減のための系列各局共同制作の推進(3)アーカイブの利用

●全国ネットと地方局の発信力を融合したシステムを作り上げ、迅速・正確・個性的なコンテンツを積み上げる努力が必要。朝日新聞社との共同作業も有効。

●地域密着のニュースなどといっているが、きめの細かい取材をするためには取材ポイントを増やす必要があり、トラフィックや非現業部門にかけているマンパワーをもっと現場に投入する必要がある。局として人材の再配置を検討すべきだ。

●キー局との連携も必要だが、地域視聴者をマーケットにする以上、エリア・ブロック単位での地方局同士の連携での地域に根ざしたコンテンツづくりが必要だ。

<キー局の役割、要望>

●地方からのコンテンツを簡単に切り捨てず系列という環境を生かし、アドバイスしてレベルの高い番組制作をしていただきたい。

●地方局にはドキュメンタリーをはじめとして優れた作品がある。しかし、それらの多くは全国ネットで放送されることがなく、あっても深夜の時間帯に追いやられるなどして、視聴者の目に届きにくい状況がある。テレビ朝日系列局の作品はネット全体の共有財産として生かす方策を考えてほしい。

●地方局制作の優れた作品をキー局が定期的に全国ネットで紹介する番組枠を新設できないものか。コンテンツ力を高められるかどうかは、テレビマンの意欲と能力に負うところが大きい。作品が多くの人の目に触れ、きちんと評価してもらえる仕組みがないことには、制作現場のモチベーションも上がらないのでは。

●親局、子局という上下関係の意識をもう少し変えられないか。親局の組織に、全系列局のコンテンツを専門に扱う部門を設けて、ローカルコンテンツの育成強化に力を入れて、放送時間も今のような深夜ではなく、「ローカルコンテンツの時間」を設定してほしい。ローカルコンテンツのアーカイブも作っておく事も必要だ。

●「にほん風景遺産」はBS朝日と共同企画の自社制作番組で、BS朝日でも放送。地方局の潜在能力を引き出すのもキー局の役目である。

~第2部 全体討議~
◇ 局側見解・意見交換

<地方局の連携と自立について>

(EX)

●生き残るためには商品そのものをどういうふうに作って、本来の業務に加えて収入を増やしていくかと。安定したコンテンツに関する収益を確保していく、そのことが我々に課せられている。「にほん風景遺産」はBS朝日が考え出したもので、共同制作ということを提案しており、各系列局からの企画をもとに、取材から編集までを担当していただく。その結果、放送権は作った局が持ち、無制限に保有できる。このあたりにコンテンツの流通、マーケットをつくってやっていくというヒントがあるのかなと。

Q.地方局の番組について編成はどのように考えているのか

A.系列局のコンテンツを放送する枠をキー局は持つべき、そして人材の育成をするべきとのご指摘をいただいた。地方局のコンテンツを放送する枠は深夜と早朝だけではなく、例えば「ドキュメンタリ宣言」や「報道ステーション」でも系列のほうで取材した素材を放送していたりもする。また「ドキュメンタリ宣言」ではぜひ系列局から素材を出してほしいと依頼してみたが、1本の提案もないのが実情。いい素材があれば、いい時間帯に放送することも検討できる。今後もそのような機会は増やしていきたい。系列全体の力、マンパワーを育てていくことが、今メディア全体が厳しくなっている中で、他局と比して、戦うには大変重要なことだと思っている。人材育成についても充実させていきたいと考えている。

Q.なぜ地方局の番組は東京やネットでは放送されないのか。またどうすれば全国に発信できるのか

A.どれだけいいコンテンツを多く作りだすかが系列の生き残りにとって一番大事なことだ。コンテンツが、その地域では視聴率が良くても、ほかではあまり良くなかったりすることもある。キー局がコントロールしながら、できるだけ視聴率が取れる中で作品の判断をしていく。いろいろな価値観がある中で、共通のものをどうやって探し出すかが大事なことだと思う。

Q.ドキュメンタリー番組の現状、テレビ朝日の取り組みについて

A.「テレメンタリー」は、月に1回、全国の系列局からディレクターが集まり、企画検討会議を行っている。それぞれの局が作った番組をみんなで持ち帰って放送するというのをテレメンタリーではやっている。「テレメンタリー」はものづくりという意味では、各系列局の若手のみなさんに対する刺激は相当なものがあると思う。ANN系列全体のプログレス賞も含めて、年間の表彰といったものの一つのスタート台となっており、これもドキュメント系の人材育成も含めて大きな意味があると思う。

Q.北海道テレビ放送(HTB)は独自のドラマ、バラエティーなどの制作に励み、国内に流通させて、さらに海外にまで売り込みをしている。さらにキャラクターの選定もテレビ朝日系列の先駆けとなるなど独自の取り組みをしてきたが、独自路線について教えてほしい

(HTB)

A.HTBには長い歴史があり、東京のタレントでない役者さんがHTBだったら出たいという評価を得ている。したがって役者の交渉も非常にスムーズにいくというレベルにまで達している。またテレメンタリーなどの番組作りの問題意識がはっきりしている。問題意識が明確だと番組のシリーズ化も可能だし、良い作品が生まれると思う。そして現場の熱意、パッションがある。そして、それを許す幹部がいて、バックアップするスタッフがいるという会社全体の社風がいいものを作るのだと思う。

Q.ニュースを取材する、発掘する記者の教育はどのようにしているのか。報道局、編成制作局の人材育成について教えてほしい

A.「報道ステーション」では、ABCさんとメーテレさんからお一人ずつ1年間応援に来ていただいている。同じ番組のディレクターとして取材をし、編集をし、放送して、原稿を書いている作業をしている。また「スーパーJチャンネル」はテレビ朝日のネットワーク局の主導により、各系列局から来てもらうようお願いをしている。これらの目的は、来る方もプラスになる、得をするという発想でないと続かないので、地元出身の有力政治家の番記者をやってもらうとか、そういういくつかの工夫をしながら進めている。また報道ではネットワークの研修会というのをかなりたくさんの数をやっている。記者研修会や、カメラマン、カメラデスクなど警察担当記者の研修会なども年1回開催しており、かなりきめ細やかに各局との間で研修をやっている。

A.バラエティーの現場は、本当に熱意を持って作るかどうかが作品に表れる状況の中で、3年ほど前からメーテレさんから毎年お一人ずつ、現場で研修という形で受け入れさせていただいている。APの方を「Qさま!!」という番組で研修をさせて、東京での作り方のノウハウを覚えて、地元に戻り番組を立ち上げて、それが成功し、テレビ朝日のほうで番販で受け入れるという形もやっている。こういった例もあるのでぜひ参考にしていただきたいと思う。

Q.ネットワークについての問題点はどのようなことがあるのか

A.系列局とはネットワーク基本協定、それと業務協定を締結している。経営的なる自立をそれぞれの局がしなければ、この先たち行かないということになる。長年続いている地域経済の地盤沈下があり、その中で、来年の完全デジタル化ということでそれに向けての投資が行われ、今、減価償却のピークを迎えている。そして地方経営を圧迫しているという状況。テレビ朝日系列の経営基盤の強化ということで、ネットワーク局では経営状況を把握するために、各系列局の中長期経営シミュレーションのアンケートを実施しており、その結果をもとに経営体質の改善や強化の指導に努めているところである。

Q.朝日新聞との連携を進めながら、どのようにコンテンツを高めていくか。連携を進めた目的、あり方について教えていただきたい

A.今、ニュース交換が大きなポイントとなっている。イベントの共催や、イベントをしたときに互いのメディアで紹介し合うなど、日常的なことは活発に行われている。新聞メディアが大変厳しい状況に入ってきており、今、朝日新聞はブロック化ということを視野に入れ進めている。ブロック化したときに各系列局とどのような提携が可能になるのかが大きなテーマになるかと思う。ブロック化と同時に、ニュースの24時間化というものを新聞も始めており、紙媒体を売る商売プラス、通信社機能でニュースを買ってくれるところには売るという通信社機能の強化でさらに提携が進んでいくだろう。

A.朝日ブランドの確立については、朝日新聞社とテレビ局が手を携えてデジタル時代に対応していこうと提携委員会ができた。また携帯配信サービスというのがあり、これはau、KDDIとの3社の連携で運営しており、この夏100万人ぐらいの会員を獲得して、採算ベースにのっていく予定。系列各局の全国ニュースにはあがってこないローカルコンテンツを携帯に配信する方法もあるのではないかと。デジタル時代の双方向性とか、マルチ展開等をやっていくことが、サバイバルの中の系列としての一つの重要な選択枠なのではないかと思う。

(ABC)

A.素材が本社に入ったときに、その素材がそのまま朝日新聞の写真部と社会部に、一緒に見られる光ファイバーを結んだ素材協業がスタートし、朝日新聞に一報が入ったときに、音声を含めた速報がABCにも流れてくるということもスタートしている。これは各放送局がそれぞれ新聞と協力すれば、系列全体の底上げになるのではないかと思う。

Q.スポーツ関係はどのように地方局と関係しているのか

A.ANNのネットワークでスポーツニュース協定を結んでおり、各地方局で開催されたプロ野球のイベントなどを出稿してもらい「報道ステーション」をはじめ、24局ネットで放送するニュースの部分を補っている。また、マラソンや駅伝などはテレビ朝日が中心になって、地元の局に制作協力していただいている。オリンピックやワールドカップなど非常に大きなイベントはテレビ朝日だけでは賄えない部分があり、系列局から応援をお願いするなど、人材の交流を図っている。