社長定例会見

篠塚浩社長 社長会見(3月25日)の要旨

2025-03-26
※社長冒頭発言。
篠塚社長:まず、当社社員による会社経費の不適切な使用やハラスメント行為などの重大なコンプライアンス違反について、視聴者、関係者の皆様の信頼を裏切る結果になったことを改めて深くお詫び申し上げる。既にプレスリリースをしたように、19日付で当該社員を懲戒処分上の「降格」としたうえで、番組制作から外す人事異動を行った。当該社員からは、不正に受領した会社費用の全額の弁済を既に受けている。管理監督者に対しても責任を問う懲戒処分を行い、またコンテンツ編成局の担当役員からは報酬の一部自主返納の申し出があった。今後は経費処理のチェック体制を更に強化するなど、再発防止策を速やかに実行するとともに、ガバナンスを強化し、信頼回復に努めていく。
次に、年度の視聴率だ。個人全体・世帯ともに、全日・ゴールデン・プライムいずれも1位で推移している。確定まで数日を残し、特にゴールデンは大接戦となっていて予断を許さない状況だが、最後の最後まで気を緩めることなく頑張りたい。多くの視聴者の皆様に支えていただいていることに大変感謝している。
続いて、4月改編について。今回もあらゆる年齢層の視聴者にご覧いただけるタイムテーブルを意識した。前回の会見でも申し上げたように、平日昼に好評をいただいている「ワイド!スクランブル」を新たに土曜日にも編成した。また、過去3回の特番でいずれも好評だった「プラチナファミリー」をレギュラー化する。小泉孝太郎さん、高嶋ちさ子さん、そして特別顧問として黒柳徹子さんにもご出演いただき、火曜ゴールデン帯の強化につなげていきたいと考えている。
ドラマでは、橋本環奈さんを主役に、本格医療ミステリー「天久鷹央の推理カルテ」を火曜の夜9時に。「警視庁捜査一課9係」から合わせて20作目で、主演の井ノ原快彦さんにとって集大成となる「特捜9 final season」を水曜の夜9時、そして木曜夜9時には、航空自衛隊の全面協力のもと、当社として15年ぶりに内野聖陽さんを主役に迎えた「PJ~航空救難団~」を放送する。さらに、「梨泰院クラス」など世界的ヒットドラマを生み出している韓国のSLLとタッグを組んで、日韓のクリエイターが共同制作する完全オリジナルドラマ「魔物」を金曜夜11時15分から放送する。SLLと当社のドラマ制作陣が双方の経験やノウハウ、アセットを持ち寄り、ワンチームになってオリジナルドラマを制作する。
最後に、TELASAの大幅なリニューアル・強化に関して。5周年を前に価格改定を行い、あわせてコンテンツの質・量を大幅に拡充した。さらにJ:COMと新たなパートナーシップを締結し、今月1日からTELASAで配信しているコンテンツをJ:COMの動画配信サービス「J:COM STREAM」でも視聴できるようになった。会員数も当面の目標だった200万人を超えた。今後、更なる成長に期待したい。
※最新の視聴率について。
西常務:まず、個人の年度。全日が3.5%で1位、ゴールデンが5.3%で日本テレビと並び1位タイ、プライムが5.3%で1位、プライム2が1.8%で2位となっている。世帯の年度は、全日6.4%で1位、ゴールデンが9.0%で1位、プライムは9.1%で1位、プライム2が3.4%で2位という状況だ。続いて主な放送予定を報告する。4月に入ると、9日にスタートする「特捜9 final season」を皮切りに、22日には橋本環奈さん主演の「天久鷹央の推理カルテ」、24日には内野聖陽さん主演の「PJ ~航空救難団~」と、ゴールデン帯の連続ドラマが続々とスタートする。そして、スポーツでは「世界フィギュアスケート国別対抗戦2025」を17日からの4夜連続、大枠での放送を予定している。
※営業状況について。
橋本取締役: まず2月は、前年比でタイムが98.5%、スポットが106.9%、トータルが103.1%で確定した。3月はタイムが前年比99.0%、スポットが111.2%で、トータルでは106.0%といった状況。こちらは未確定である。ご案内のとおり、タイム、スポットとともにセールス活動は順調に進んでおり、今年度分のセールス活動そのものは終了している。現在は着地数字を探っている状況だ。タイムでは、レギュラー番組、単発番組とも堅調にセールスができており、スポットは昨年夏以来の需要回復が継続した格好だ。それを受け2月、3月ともに前年を上回る展開となった。振り返ると、2024年度というのは、当社にとって開局65周年という記念すべき年であり、幸い視聴率の好調ぶりと市況の回復とがうまい組み合わせの構図となり、社内連携のもと順調にセールスを進めることができた。続いて、新年度の入り口となる4月は、タイムは101.0%、スポットは106.8%で、トータル104.3%で推移している。タイムは、来月4月17日から4日間連続で放送対応予定の「世界フィギュアスケート国別対抗戦2025」も含め、セールスは全て終了している。スポットは市況回復が継続しており、現時点では仕入れの在庫を上回る出稿ニーズがある。広告会社、アドバタイザーと条件確認を重ね、なるべく多くのアドバタイザーに宣伝、広告の機会を提供できるように取り組んでいる最中だ。
※放送外収入について。
藤本取締役:最初に、シンガポールのグローバルエンターテインメント企業NEON社とともに、現在開催中の「ACNラムセス大王展」に関して報告する。動員数は現在2万人を突破している。「キングダム」作者の原泰久先生によって描かれたラムセス2世のイラストをモチーフにしたオリジナルグッズの展開も新たに決定している。9月まで開催しているので、ぜひ足を運んでいただきたい。続いて、4月11日から品川区シアターHで開催されるショーとミュージカルを融合した舞台「SHOW×MUSICAL『ドリームハイ』」について報告する。2011年に韓国KBSで放送されたぺ・ヨンジュンが企画・出演したドラマが原作となっており、世界的スターを目指す若者6人の葛藤や成長を描いている。今回は、韓国版と日本版が同時期に開催される。3人の韓国人キャストがダブルキャストまたはトリプルキャストとして、韓国の舞台と同時に同じ役で出演することも決定している。ご期待いただきたい。ここからは番組関連イベントについて報告する。最初は、4月27日に開催される「春のキョコロまつり2025 in日比谷野音」に関して。前回は平日にも関わらずNHKホールに約5,000人を動員した。今回は番組リアルイベントと生配信企画の第4弾となる。ゲストはMCの二人にゆかりのある芸人に加えて、日比谷野音にちなんだアーティストも出演予定だ。次は、5月2日にEXシアター六本木で開催される「夫が寝たあとに GW ママ会ライブ supported by 明光義塾 ~新生活の悩みをデトックスSP~」についてだ。昨年の「テレビ朝日・六本木ヒルズ夏祭りSUMMER STATION」で行われたイベントは700席が完売し、大いに盛り上がった。多くの番組ファンの要望に応え、子育て中のママたちが参加しやすい朝の部・昼の部の2部制で日本最大級のママ会を開催したいと思っている。最後に、「アメトーーク」初となるリアルイベントについて報告する。「アメトーーク初ライーーブ」を5月4日にEXシアター六本木にて、昼と夜の2公演を開催する。番組の人気企画を実施予定だ。
※TELASA、ABEMAについて。
西常務:まず、TELASAの関連トピックスに関して報告する。サービス開始から5周年で会員数が200万人を突破した。引き続き、ドラマ、バラエティのオリジナル作品、そして最新のアニメ等、コンテンツを充実させ、さらなる会員増を目指したい。続いて、ABEMA関連の報告だ。WAUは現在、平均2,500万前後で推移していて、引き続き高い水準を維持している。ニュースやアニメの定番コンテンツに加え、直近では大相撲が大きく数字を伸ばしている。また今年も、ドジャースを含め、MLBの公式戦をお届けできることになった。日本人選手の活躍を生中継で是非ご覧いただきたい。
※今年度最後の会見になる。2024年度の振り返りを伺いたい。
篠塚社長:まずは冒頭申し上げたように、年度の最後になって重大なコンプライアンス違反があり、社員に懲戒処分を出した件を重く受け止め、再発防止を徹底しなければならないと強く思っている。また、7月にマスター障害によってCMが送出できない事故もあった。これも決してあってはならない事案で、徹底した再発防止策を既にとっている。
一方で、2024年は当社にとっては65周年という記念の年で、現行の中期経営計画の2年目にあたるが、視聴率の年間個人3冠を2024年で達成できたことは大きな成果だ。視聴者、アドバタイザー、全ての社員、スタッフに感謝の気持ちを伝えたい。下期には放送事業も大幅に回復し、インターネット事業やショッピング事業、イベントなどを中心にしたその他の事業も順調に推移した1年となった。ただ、最大の懸念材料であるPUTの下落傾向はまだ継続していて、課題はたくさんあると考えている。来年度も努力していきたい。
※改めて4月改編の狙いは。
篠塚社長:先ほど申し上げたように、現状、視聴者に受け入れていただいているタイムテーブルだと思っている。その中でも、全ての視聴者、あらゆる世代に楽しんでいただけるタイムテーブルを目指して調整を続けている。
西常務:今の好調の大きな要因として、情報・報道系のベルト番組が各時間帯でトップを走っていることが挙げられる。この信頼を頂いている状況を大切に、この報道・情報系をさらに強化することが狙いの一つだ。それと同時に、ゴールデン帯の番組も多くの方に視聴頂き好調なので、タイムテーブルはあまり大きく変えずに、現在放送中のバラエティ番組を強化したい。そして、火曜日のゴールデン帯に一つ新しい番組を投入しているため、この時間帯でしっかりと根付くように頑張っていきたい。
※フジテレビ事案を受けて、人権コンプライアンスに関する二次調査の進捗具合について。
篠塚社長:二次調査は現在も進行中で、本日お伝えできる内容はない。
※スケジュール感は決まっているのか。
篠塚社長:二次調査に関しては、いわゆる人権デュー・デリジェンスの一環としても幅広く調査をしているため、特に期限を決めているわけではない。
※現時点では、公表する問題は明らかにはなっていないという理解でよいか。
篠塚社長:調査が終了した時点で、最終的に結果を公表するかどうかも含めて検討の上、適切に対応したい。
※テレビ朝日では2018年に起きた財務次官のセクハラ問題を機に、ハラスメント対策や内部通報制度、コンプラアインス統括室のあり方などについてどのように強化してきたのか。
篠塚社長:まず、就業規則の中には、ハラスメント、いわゆるパワハラ、セクハラ、あるいはマタハラ等を禁止する項目があり、それを犯した場合には当然懲戒処分になるということがある。それから、去年2月に公表した人権方針の中でも、全てのハラスメントは認めないという考え方を謳っている。実際に2018年以降の対応としては、相談窓口の拡充と周知を徹底して行っている。いま、人事局、コンプライアンス統括室、社外の弁護士事務所の3カ所に内部相談窓口を設けて、社外スタッフを含めた構内で働く全員にその窓口を徹底するためのカードを配布している。さらに、人権DDの観点から、去年は人権相談窓口を設置し、今後は社外スタッフも相談しやすいよう、弁護士事務所ではない外部の相談窓口を新たに作る方向で検討をしている。
※2018年から相談窓口を強化してきたということだが、何か設置してからの実績や手応えはあるのか。
篠塚社長:人権DDの中で様々なアンケートをしていると、依然としてハラスメントについて見聞きしたというアンケート結果が出ている。そのため、誰もが安心して働ける会社、仕事場を目指してしっかり対応していきたい。
※エグゼクティブディレクターの不正経理の件について、再発防止策を教えてほしい。
篠塚社長:番組制作費のチェックの問題が一番大きいと思う。一つは、現場とその監督部署との間でチームをつくり、改めてしっかりチェックをしていくことがある。もう一つは、今回、制作費監査チームの調査の中から発覚したが、制作費監査チームへ弁護士や公認会計士に参加してもらうことで、機能強化をしようと考えている。
西常務:制作現場では、改めて業務管理を含めて徹底的にカリキュラムを組んで研修する。同時に、毎月定例で制作現場と管理セクションで打ち合わせを行い、個々の番組での使用状況を一層細かいタームでチェックする新しいシステムを導入し、再発防止に努めていきたい。
※5年間にわたり1,000件以上の不正経理があったということだが、なぜ5年間も見過ごされてきたのか。
篠塚社長:端的にいえば、チェックをしたが見つけられなかったということで、それは大変申し訳なく思っている。先ほど申し上げたように、研修やチェック体制を強化していこうと考えている。
※エグゼクティブディレクターの担当番組は打ち切りとなったが、改めて打ち切りの理由を教えてほしい。
篠塚社長:番組制作の過程の中で、不適切なことがあったということで番組を打ち切ることにした。
※パワハラもあったとのことだが、不正経理がメインになるのか。
篠塚社長:パワハラも含めての対応だ。
※調査でまず経費におかしい部分があると発覚したのが昨年の10月で、最終的に番組打ち切りを発表したのがこの3月であった。このタイミングになった理由は、調査で色々確定して判断したという流れなのか。
篠塚社長:まさにおっしゃる通りだ。
※パワハラが判明したのは社内調査の中でわかってきたということか。
篠塚社長:そうだ。
※2024年度個人視聴率三冠の可能性は。
西常務:これは本当に最後の最後まで分からないと思うので精一杯頑張る。とにかく視聴者の皆様に感謝の気持ちを持って、しっかりとした内容のコンテンツを届けたいという、その一心で頑張りたい。
※スポーツ系のライブコンテンツの強さについて、どのような所感を持っているか。
西常務:ビデオリサーチで発表されている視聴人数を見ても、日本テレビが放送した「MLB開幕戦」が4,000万人くらい、テレビ朝日で放送した「サッカーW杯アジア最終予選」でも3,000万人近く、非常に多くの視聴者が同時にテレビを見ていた。やはり大型スポーツは、テレビとの親和性が非常に高いというのを痛感した。
※来年度の課題としてPUTの下落が継続しているとの話があったが、具体的に何か強化策は考えているのか?
篠塚社長:今回のタイムテーブルの改編や、ドラマのラインナップがまさに対策ということになるので、そのように理解していただければと思う。
※ 4月から始まるドラマの「魔物」だが、改めてこうして日韓でタッグを組んでオリジナルドラマを制作することへの期待、どういう意義があるのか、視聴者の方にどんなメリットを提供できそうか。
内山取締役:期待いただいている通り、日韓のクリエイターが一堂に会して、お互いの知見と新しい分野への挑戦という形では非常に学びの多い現場になるとともに、今まさに現場がやってきているところだが、あまり見たことがないタイプのドラマに仕上がっていくと思うので、ご期待いただきたい。
※3月7日に、イベント事業局設立というリリースを見た。今日人事もリリースを出したところだと思うが、どういうメリットがあるのか。その組織新設の狙いと、これから体制としてどう変わるのかを教えてほしい。
篠塚社長:既存のイベント事業全体を見ている部署と、東京ドリームパーク及びEXシアターを所管する我々の施設を使う部署と、2つの部署が並行してやっていたものを、いよいよ東京ドリームパーク開業が来年春、あと1年というところで、それを一つにまとめて、イベント全体を一つの部署で対応していこうという形での組織変更だ。
※数日前に「放送100年」を迎えた。もちろんラジオの話ではあるが、テレビを含めた放送は、この100年でどんな役割を果たしてきたのか。変化する時期に入ってきているが、これからどんな方向を目指していけばいいのか。
篠塚社長: なかなか難しい質問だ。放送100年、テレビは70年、当社は65年だが、それを語れるほどの経験も知識もない。私は当社で働いて40年弱になるが、様々なテクノロジーの変化と、それに合わせた社会の変化に、どうテレビ局が対応していくかというところがずっとあったと思う。ここにいらっしゃる記者の方々の多くは、多分インターネットが商用化される前の取材経験というのが全くないと思う。1990年代前後にインターネットが出てきて、放送自体が大きく変化したとは当時は思わなかったが、やはり制作過程は相当変わった。次は2007年前後、スマホ、iPhoneが登場して、Facebookが始まって、Netflixが配信事業を始めてからは、やはり我々はマルチデバイスを意識しないといけないし、SNSを考えないといけないわけだが、基本になるのは我々の放送事業としての公共性で、災害報道を中心にした世のため人のためという公共性は全く変わらないし、変えてはいけない。それ以外のところ、それも含めた対応の仕方というのが、やはり技術の変化と、それに対する社会事情によって変わっていく。この2年間の生成AIのいわゆる指数関数的な進歩に関しては、本当に驚くべきことがあると思う。これからのテレビ放送は、さきほど申し上げた公共性については決して失わない中で、かなり急ピッチでいろいろなことをやらなくてはいけないと思う。そのために私どもの経営計画では、「新しい時代のテレビ朝日」を掲げてやっているわけで、やはり「新しい時代のテレビ朝日」を目指していかなくてはいけないなと思う。
※生成AIに対する当面の対応というのは、具体的には今どんなことをやっているのか。
篠塚社長:部署横断的にAI推進チームというのを作り、そのチームが中心になって、まず1点は業務の効率化にどう使えるかを制作現場と共に協力する形でやっている。それから、当然バックオフィスの方の効率化もやっている。もう1点は、要するにコンテンツクリエイトの部分で何か使えるのかと。まだ動画生成に関しては、現時点で簡便に費用が安く、著作権を気にせず使えるものはないと思うが、この先大きく変わっていくだろうから、その研究も怠らずにやっていくという、この2つの軸で部署横断的にやっている。
※ TELASAだが、会員数200万人突破ということで、次の目標、数値的なところはどう思い描いているか。
篠塚社長: TELASA株式会社はKDDIの連結子会社で我々は持分法適用関連会社であり、KDDIがまず主体でやっている事業だ。200万突破というのは3月1日の段階で、まだ20日しか経っていないので、今現在このリニューアルをどれだけ成功できるかという、その努力をしているところだと思う。少なくとも私はまだ次の目標は、事業計画上はあるが、それを外に打ち出すみたいなところというのは聞いていない。