社長定例会見

篠塚浩社長 社長会見(2月27日)要旨

2024-02-27
※社長冒頭発言。
篠塚社長: 今月8日に公表した第3四半期の連結決算は増収減益だった。併せて通期の業績予想のうち売上高、営業利益、経常利益を下方修正した。主力の放送事業の落ち込みを他の事業でカバーしきれていないという状況だ。今後もPUTの下落がもっとも大きな懸念材料だが、相対的に好調な視聴率を生かして放送事業の積み上げを図っていくとともに、急拡大しているAVOD事業をはじめとしたインターネット事業などに注力していく。放送外の事業としては前回の記者会見のあと昨年12月に、フィギュアやプラモデル市場で大きな実績のある壽屋と資本業務提携した。3月に資本業務提携した電子書籍プラットフォームのBookLiveとあわせて、中期経営計画の柱の一つである自社IPの開発を協力して進めていく。決算発表と同じ8日にはテレビ朝日グループの人権方針を策定し公表した。コーポレートガバナンスコードの改定に合わせて準備をしてきたが、旧ジャニーズ事務所の性加害問題もふまえ、社外の有識者の方々などからもご意見を伺いながら議論を重ね、このたびの策定となった。あわせて、番組制作上の注意点などをまとめた「放送ハンドブック」も改訂し、人権の項目を大幅に加筆した。今後、グループの役職員、スタッフの人権意識の向上を、研修などを通じて図っていく。最後に、こちらも発表済だが、大谷翔平選手、山本由伸選手が所属するロサンゼルス・ドジャースの韓国での3試合を放送する。ダルビッシュ有選手や松井裕樹選手が所属するサンディエゴ・パドレスとの3月21日の公式戦は、日本人同士の対決の可能性もある。エキシビション2試合も含めて、多くの皆さんに楽しんでいただければと思う。
※最新の視聴率について。
西常務: 最新の視聴率状況を伝える。まず、個人全体の年度は全日3.5%で日本テレビと並び1位タイ、ゴールデンが5.3%で2位、同じくプライムが5.3%で1位、プライム2は1.8%で2位。続いて世帯の年度は、全日6.3%で1位、ゴールデンが8.8%で日本テレビと並び1位タイ、プライムが9.0%で1位、プライム2が3.5%で2位となっている。そして最新の1月クールは、まず個人全体では、全日が3.7%で2位、ゴールデンが5.8%、こちらも日本テレビと並んで1位タイ、プライムが5.7%で1位、プライム2が1.9%で2位。そして1月クールの世帯では、全日6.7%で1位、ゴールデンが9.5%で1位、プライムが9.5%で1位、プライム2は3.6%で2位となっている。続いて主な放送予定を報告する。3月は、野球の大型中継がある。まず3月7日には、日本代表侍ジャパンの強化試合、欧州代表との一戦をゴールデン帯でお送りする。そして、先ほどお伝えしたメジャーリーグのドジャース戦について、17日には韓国キウム・ヒーローズ戦、18日が韓国代表戦、この2試合がオープン戦であり、21日の木曜夜がMLBの開幕第2戦だ。ご期待いただければと思う。
※営業状況について。
橋本取締役: 1月の確定数字はタイムが前年比で96.9%、スポットが94.7%、トータルでは95.7%で確定している。12月に続いて、1月もスポットの市況が非常に弱含みの流れで、これに追い打ちをかけるように、元日に能登半島の地震があった。これの影響も受けて、タイム・スポットともに低調だった。2月は前年比でタイム101.9%、スポット97.0%でトータル99.2%の状況だ。3月は前年比でタイム86.7%、スポット99.8%、トータル93.6%で推移している。タイムは、2月に「AFCアジアカップカタール2023」の試合があったが、残念ながら日本代表が準々決勝で敗れるという結果となり、準決勝および決勝の放送が叶わなかった。セールスのチャンスを逸した部分はあるが、「世界水泳ドーハ2024」、「FIBAバスケットボール・アジアカップ2025予選」があるので、この売上で積み上げていっている状況だ。また、タイムの3月については、昨年はWBCがあったので、今年はその部分を差し引き、マイナスの見込みとしているが、年度末の目玉コンテンツとして編成するテレビ朝日開局65周年ドラマプレミアム「万博の太陽」とテレビ朝日ドラマプレミアム「黄金の刻」は目標をクリアして売り上げを伸ばしている。また、MLBのドジャース戦、韓国シリーズについても、やはりアドバタイザーの関心は非常に強く、多くの引き合いが来ている状況だ。スポットについては、2月と3月で様相が随分と変わっている。2月は1月のように低調な状況だが、一方の3月は状況が一転してスポット需要が急増している。食品会社をはじめ、製薬会社、それから交通、レジャーといった業種が好調に推移している。全体的には、東京地区全体の需要が現時点で前年を上回っていて、当社を含む全局が受注物件を選ぶ状況にある。この流れで4月、新年度を迎えられればと願っているところだ。
※放送外収入について。
武田副会長: 今年、当社は開局65周年ということで、65周年記念の冠を付けたイベントを3件紹介したい。まず一つは「MUCA展」だ。ヨーロッパ最大級のアーバン・アート作品を所蔵する美術館「MUCA」がある。ドイツのミュンヘンに開設された美術館だが、その所属作品が一堂に会する展覧会を65周年記念イベントとして主催する。人気作家カウズの代表作や、日本初上陸となるバンクシーの彫刻作品のほか、そのバンクシーの名を世界に知らしめることになったサザビーズオークションでのシュレッダー事件の作品「LOVE  IS IN THE BIN」という作品など優れたコレクションが数多く出展されることになっている。開催期間は3月15日から6月2日まで、森アーツセンターギャラリーで開催する。2つ目は、アジアから世界を狙う日韓のアーティストが一流のパフォーマンスで共演をするという新たなフェスティバルイベントを65周年記念イベントとして主催する。タイトルは「The Performance」。会場は Kアリーナ横浜で開催期間は4月12日から14日までの3日間だ。12日、13日の2日間は、NiziUとMrs. GREEN APPLEによるスペシャルパフォーマンスを展開する。4月14日の最終日はK-POPでは世界から注目されているRIIZEやEVNNEなどに加えて、日本からは、Da-iCE、FANTASTICSなどの実力派ダンスグループが多数出演をする。非常に迫力満点のステージになると想定している。3つ目は、10周年を迎える「『徹子の部屋』クラシック」、これを65周年記念イベントとして開催する。開催日は6月5日(水)で、会場はアークヒルズのサントリーホール。今回もピアニストの清塚信也さんをはじめとして、多彩なゲストの素晴らしい演奏と、彼らと黒柳徹子さんとの軽妙なトークを皆さんにお楽しみいただけるものと思っている。今後もこのように様々な開局65周年記念イベントを用意しており、その都度皆様に公表していくつもりだ。
※TELASAについて。
篠塚社長: まず「おっさんずラブ-リターンズ-」だが、地上波本編では使用されなかったショットをふんだんに使って、出演者の表情を余すところなく見ることができるオリジナルコンテンツ、我々「推しカメ」と呼んでいるが、これが大変好評で会員獲得に大きく貢献している。続いて、今月中旬に行われた羽生結弦さんのアイスショーの模様を今月23日から配信をしている。こちらも6台のカメラによるマルチアングルで、TELASAでしか体験できないスペシャルなコンテンツだ。たくさんのファンの方々に楽しんでいただけるものではないかと期待している。もう一つ、先週金曜日22日からAmazon内で、TELASAのチャンネルTELASA for Prime Videoがスタートした。最初の3ヶ月は月額200円というサービス価格で、会員獲得に寄与してくれるものと思っている。
※ABEMAと出資映画について。
西常務:ABEMAのWAUは、平均で1,800万前後と好調に推移している。中心となるABEMA NEWSそれからアニメ定番コンテンツに加えて、サッカーのプレミアリーグ、大相撲、世界水泳ドーハ等々のスポーツコンテンツ、それから藤井聡太八冠の対局等々、多彩なラインナップをお届けしている。引き続きご期待いただければと思う。次に出資映画だが、今週金曜日に「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)」が公開となる。今回は初めて音楽をテーマに、スケール感のあるオリジナルストーリーを展開していて、幅広い年齢層の方に楽しんでいただける作品となっているので、ぜひご期待いただきたい。
※営業状況について、3月はスポットが好調と伺ったが、株価が妙に上がって、賃上げも予定されているということで、春以降、経済見通しが明るくなってくるのではという見方が強い。3月以降の見通しをどう考えているか。
橋本取締役:まずマクロの経済と広告の出稿の連動性については、ここ1年、1年半ぐらい崩れていると見ている。金融市場の状況や経済全体がどうかについて、我々はあまり注視していないというのが実際のところだ。一方の足元の出稿状況を見ていると、ここまでずっと低迷してきていた、食品などが戻ってきている。その理由は、もともと原材料高で、これはグローバル的な効果でどうしようもないのだが、これに対しては価格転嫁として、何万品目という値上げがあった。消費者がそれに慣れてきたところに、今度は海外の原材料の市場が下げに転じているということで、結果として利幅が広がっている。そこで、来年度についてはそこそこ先行的に投資してもいいのではないかということで、出稿が出てきていると見ている。一方、自動車などは、業績自体は皆さんご承知のとおり良いのだが、国内においてはまだ納車が遅れるという状況で、宣伝をしても実際にそれが納品されないという状態で、もうしばらくかかると見ている。一部では納品、納車できる車種については宣伝が出てきているという状況かと思う。よって、4月、5月を見通すと、悲観するような具体的な理由は一切ないと思っているが、楽観できるだけの材料もないという、そんな感覚でいるので、前年水準ぐらいを見ておくのが安全だろうと思う。
※「セクシー田中さん」の原作者 芦原妃名子さんが亡くなられたことについて受け止めは。
篠塚社長:芦原妃名子さんのご逝去について、大変痛ましいことだと思っている。心からご冥福をお祈りしたい。それ以上のことは詳細を分かりかねるため、コメントは差し控えたい。
※テレビ朝日もドラマに関して漫画や小説を原作にした作品も多いと思うが、過去に原作者との意見の対立やトラブルがあったことはあるのか。
西常務:原作者、脚本家の方々をはじめ、ドラマ、番組に関わるすべてのスタッフと基本的には綿密なコミュニケーションを取って、信頼関係を築いて制作にあたっているが、そのなかでやはり十分な理解が得られずに食い違いが生じたことが過去にはある。ただ、詳しい事例に関しては相手方のこともあるため、この場ではコメントを控えたい。
※週刊誌報道によってダウンタウンの松本人志さんが芸能活動を停止していることについて受け止めは。
篠塚社長:事態の詳細については存じ上げていない上、これから裁判が控えていることもあるため、コメントを控えたい。
※テレビ朝日の放送への影響は。
篠塚社長:現状で松本さんに出演いただいている番組はないため、影響はない。
※年末年始は著名な方の訃報が非常に多かったと思う。テレビ朝日の番組によく出演されていた方のエピソードがあれば、教えてほしい。
篠塚社長: 多くの方がお亡くなりになられて、本当に皆さんのご冥福をお祈りしたい。直近でお亡くなりになった山本陽子さんは、今月初旬に放送された「徹子の部屋」にご出演いただきお元気な姿を拝見したところだったので、大変驚いた。本当に心からご冥福をお祈りしたいと思う。山本陽子さんに関しては、テレビ朝日でもたくさんの映像作品にご出演いただいており、中でも、松本清張「黒革の手帖」を最初にドラマ化した1980年代に、主演として原口元子を演じていただいた。2000年代に米倉涼子さんの主演で改めてドラマ化した際、今度は山本陽子さんに主人公の米倉さんと対峙する役を演じていただき、そのお二人の対立シーンで迫真の演技を見せていただいたことが大変印象に残っている。これまでの功績に感謝を申し上げるとともに、改めてご冥福をお祈りしたい。
※「セクシー田中さん」の衝撃的な出来事で、制作の方々にも動揺が広がっているのではないかとお見受けする。局内のドラマ部門で、説明会などを設けるようなことはあったか。
西常務:今回の事案を受け、もちろんその詳細に関しては分かっていないが、我々現場の作り手と大勢の関係者の方たちとのコミュニケーションを改めて確認した。より良いドラマを作るためにお互い色々な意見はあると思うが、しっかり理解を得ながら作っていくという基本にもう一度立ち返るということでスタッフとも話をした。
※旧ジャニーズ事務所の所属タレントへの扱いは従前と変わらないという認識で良いか。
篠塚社長:変わっていない。
※能登半島地震について、交通アクセスが難しいエリアでの災害ということで、取材の苦労もあったと思う。また放送が途中で途絶えてしまう等、めったにないことが起きてしまった。取材面とインフラ面の両方について、どのように考えているか。また今後の対策について検討していればお答えいただきたい。
篠塚社長:まず取材について、今指摘があったように各社それぞれが経験したと思うが、大変アクセスがしづらく、その中でも道路状況が悪いため、現地に入るのに大変時間がかかった。それから、当然被災された方々にご迷惑をかけるわけにはいかないため、食料であったり水であったり、あるいはトイレの問題だったり、装備や設備の問題等いろいろある中、大変苦労はした。ただ一方で、我々が報道することによって現地の状況や被災の状況がわかり、何に苦労されているかを知るためには、そういう作業をしていかなければならないということを改めて痛感した。特に一番苦労したのは、トイレの問題だった。キャンピングカーを借り、中にトイレを入れたり、あるいは仮設のトイレを付けた車を配備したりということを重ね、現地の被災された皆さまにご迷惑がかからない形で取材活動を続ける、という作業を行った。日本の場合、次の災害がどこで起きるかわからないため、今後の教訓あるいは学ぶべきケースにしたいと思う。それから中継局の問題があり、一部の地域でテレビが見られない状況があった。これは、特に中継局への送電が止まり、バッテリーはあるがその燃料も途絶えたということだった。これはかなりの努力で燃料を補給し、今復旧している。とはいえ、改めて固定電話や携帯電話の基地局も相当やられているため、それに比べるとレジリエンスは強いというか、テレビの中継局の仕組みというのはかなり強いという印象を逆に持った。今ちょうど中継局の共同利用に関して、議論が進んでいるところなので、このことも絡めて特に地方における中継局のあり方みたいなところを、今後しっかり議論をしていきたいと思う。
※今の中継局の話に関連して、ブロードバンド代替のほかに衛星の左旋を使うという話も出ている。その辺の実現性についてはどう見ているか。
篠塚社長:そのブロードバンド代替と左旋もそうだが、その前に中継局をどうするかという議論がまだ緒についたばかりのため、そこが最初かなと思っている。ご承知のように、12月に全国協議会が立ち上がり、地方ごとに地方協議会ができたところとできていないところとあり、いろいろ準備をしているところだ。まだNHKから具体的にこうしたいという案も出ていないため、なかなか議論が先に進まないような状況ではある。実際にその中継局をどうするか、ミニサテライト局をどうするかというところがある程度進まないと、それに代わる代替措置としてのブロードバンド代替や、左旋の問題というのは、なかなか議論ができないと、私ども民放としては、私の個人的な考えとしては思うところだ。
※「セクシー田中さん」について、日本テレビの社長会見で「原作のドラマ化にあたっての2次利用に関する契約書はあったものの、演出の詳細について書面の取り決めはなかった」というふうに説明をされていた。テレビ朝日でも原作のドラマ化はあると思うが、制作の際はどのようなやりとりを交わしているのか。契約に関することのため、あまり詳しく言えないと思うが、例えば日本テレビのケースが一般的かどうかなど、わかればお願いしたい。
西常務:ドラマの制作は局が制作するものもあれば、制作会社の方にお願いするものもある。発注形態も様々で、また今お話があったように原作者オリジナルのものもあれば、出版社がいわゆる代理権を持っているものもある。本当に様々なケースがあるため、それに応じて契約もそれぞれケースバイケースという形にはなっている。ただ、詳細に関しては、守秘義務があるため、こちらでは控えさせていただきたい。
※旧ジャニーズ事務所の件だが、この間、NHKとか日本テレビなど各社の会見がある中で、前回の会見、11月以降のSMILE-UP.社の動きに関しては、各社によって受け止めが微妙に違っているようだ。今のところ、補償であるとか、あるいは新会社のこと、情報が出たり出てこなかったりという状態だが、どう評価しているか。
篠塚社長:特に補償の方だが、評価というのはなかなか難しいと思う。発表されている数字を見ると、実際補償を受けた方々や、あるいは内容に合意された方がおよそ2週間ごとに発表されていると思うが、数十名単位で増えているというのを見ても、一歩一歩進んでいるなという印象は持っている。引き続き、被害を訴えている方々に対して被害者救済委員会とSMILE-UP.社が誠実に向き合うことを願っている。
※新会社の方は、前回の会見以降での接触など、何か進捗状況があれば教えてほしい。
篠塚社長:基本的には、引き続きだんだん体制は整ってきていると受け止めているが、やはりこれまで申し上げているように、ガバナンスやコンプライアンスを強化して、人権侵害が二度と起こらないような体制をつくっていただきたいというお願いをしているところだ。基本的には、検証番組等でも申し上げたが、今後とも、定期的ではないが連絡を取り合って、公正かつ透明性を持ったビジネス関係を構築していきたいと考えている。
※吉本興業の件で、先ほどまだ詳細はわからないとの発言があったが、一方で、そのホールディングスの話にはなると思うが、吉本興業の株主としての関わり、企業対企業としての関わりというのもあると思う。その辺りの観点から、吉本側に何か働きかけであるとか、あるいは企業対企業としてのやりとりで、公にできるものがあれば教えてほしい。
篠塚社長:企業対企業ということで、詳細は控えさせていただくが、ガバナンスやコンプライアンスを強化することで、人権侵害などの問題が決して起こらないよう、申し入れはしている。