放送番組審議会

第599回 放送番組審議会報告 4月18日(木) 開催

■出席者
見城  徹  委員長
田中  早苗  副委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小陳  勇一  委員
小松  成美  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
増田  ユリヤ  委員

■欠席者
小谷  実可子  委員
*委員の互選により、2019年度の委員長に見城徹氏が、副委員長に田中早苗氏が就任。

課題番組

「マツコ&有吉 かりそめ天国」
(毎週水曜日23時20分~24時20分)

<評価点>

●マツコ・デラックスと有吉弘行という数多くの冠番組をもつ2人が、ここまで肩の力を抜いて自然体で本音トークする番組は他にない。どの瞬間も軽やかで、時には少しポイズンがあり刺激的で、2人のキャラクターが際立っている。

●雑談の最高峰の番組。2人はバランス感覚があり、自分の興味のままにしゃべり、そこから色々な話題になっていく。どこの局にもないオリジナルな番組。ぶっつけ本番に見えるが、制作者は考え抜いて作り込んでいる。実際には両手で非常に苦労して作っているのだろうが、片手で作っているように見えるのがいい。良いプラットフォームが出来ている。

●“雑談芸”というものがあるなら、2人は一級の雑談を見せてくれる芸人。今のテレビは、あらかじめ与えられた役割や管理されたコミュニケーションで、どんどん窮屈になっている。話があちこちに行き、どこに着地するか分からない、そのプロセス自体が面白い。この雑談の空間はテレビにとって貴重で、簡単に見えて制作者も演者もかなりの力量を要する。

●コンセプトがわかりやすい。視聴者が2人と一緒に飲みたい、話を聞いていたいというのが、そのまま番組になっている。2人がテレビを見ながら、視聴者目線でずっとブツクサ言っている。副音声みたいで面白い。テレビの中にテレビがある。そこが新しい。

●自分がその日悔しかったこと、嫌な思いをしたことを、メールの意見などからひも解いて代弁してくれる。何となくスカッとして1日を終えられる番組。


●チャンカワイの剣道対決はお約束の展開だがつい見てしまう。敗けるとわかっていながら勝負を挑み、やはり敗けるというある種のムダが、前半の雑談のムダな面白さとも繋がる。

●<キャバ嬢>は、最近は色々な意味でやりづらい企画だと思うが、ずん飯尾がうまく緩和して、楽しく見せてくれる。女性が一生懸命生きていることを紹介し、女性が見ても面白い。

<課題と提言>

●「マツコ&有吉の怒り新党」の時に比べ、番組を見なくなった。周りで話題になることもあまりなくなった。試行錯誤でマイナーチェンジを繰り返す中で、目指すべき方向を見失っているという感じ。ゴールデンSPは典型的で、既視感があり、この番組でしか見られないマツコと有吉の姿が薄まっていた。2人の雑談トークを楽しむ番組に原点回帰してほしい。

●以前はマツコと有吉がお互いどういう人かわからないので、ここまで言っていいのだろうか、と相手を見ながら会話していた。それがスリリングで、視聴者も2人の人間性を探りながら興味を持って見ていた。今は気心が知れて、緊張感がない。時事ネタをテーマにしたり、新たな出演者を投入したりすると、2人の間に緊張感が走るのではないか。

●「怒り新党」はトークに“怒り”という明確な軸があり、<新・3大〇〇>という定番企画もあり、非常に分かりやすい番組だった。2人が世の中の理不尽さや不条理を爽快にぶった斬ってくれると、視聴者の胸のつかえが取れ、すっきりした気分で1日を終えられる。

●「怒り新党」では辛辣でディープなトークを楽しんでいたが、その要素は残しつつ、アカデミックなカルチャーとして知りたい企画をテンポよく見せてくれるところが魅力。ただ、時には2人のトークに重点を置いて、1時間をトークで見せるのも面白いのではないか。

●「怒り新党」というタイトルの“怒り”が2人は何に怒っているのかと想像をかきたてた。「かりそめ天国」はタイトルとして弱いが、変える必要はない。視聴者を振り返らせるのではなく、淡々とやって視聴者を待つ“待ち”の状態がいいのではないか。際立った企画でバズらせるよりも、「あの2人の話は面白い」と習慣にさせることがこの番組本来の持ち味。

●視聴者がもう一度見るきっかけになる仕掛けづくりが必要。横の番組よりも見られるという発想だけでなく、SNSやネットニュースを見ている人に番組を気づかせ、テレビをつけさせることに注力するフェーズに来ている。2人は「100人中2人の言うことが目立つ」とか、「過度な謙遜はムカつく」とか、皆が思っていて言いづらいことをズバッと言うので、これをバズらせると効果的だろう。

●2人とも、怒りであって毒であって核心を突くところが面白い。ならばもっと突けばいい。2人の怒りの個性は“押してダメならもっと押せ”ではないか。先輩やゲストに対しても怒るべきときにはもっと怒っていい。

●企画が多すぎる。視聴者からの相談に2人がいつもきちんと答え、もう少し聞きたいと思ったところで次の話題にいく。もったいない。
●有吉がリポーターらに対し厳しすぎる発言をするのが気になる。再ブレークした時に芸能人に毒のあるあだ名をつけていたが、格下の人間が格上の人間に毒づくのがスカッとするし、面白いと思えた。今、彼は芸能界で格上の存在になった。本人は年上の先輩に言っているつもりかもしれないが、視聴者からすると彼の方が格上なので、格下の人間に厳しい発言をしているととらえられるのではないか。

●<京都の秘宝>の回は、“ふざけ”ととられるだろう。ふざける度合いは考えた方がよい。

●<キャバ嬢>は拒否感を持つ人もいる。誰もが気楽に見られる作りの中で微妙なコーナー。

<局側見解>

●この2年間、いかに「怒り新党」と違う番組に作り変えていくかを考えてやってきた。まだ形が見えておらず、ご意見を参考に、形を整えていきたい。

●アドバイスを参考に演出を含めて工夫して、2人の魅力を活かしていきたい。

<「放送番組の種別ごとの放送時間」の報告>

2018年10月~2019年3月に放送した番組の「放送番組の種別ごとの放送時間」について報告した。
以上