放送番組審議会

第598回 放送番組審議会報告 3月28日(木) 開催

■出席者
見城  徹  委員長
(五十音順)
秋元  康  委員
内館  牧子  委員
小倉  純二  委員
小陳  勇一  委員
小松  成美  委員
関川  夏央  委員
丹羽  美之  委員
藤田  晋  委員
増田  ユリヤ  委員

■リポート
田中  早苗  副委員長

課題番組

「池上彰のニュース そうだったのか!!」
(毎週土曜 夜7時54分~8時54分)

<番組全般>

●速報性はネットに、解説はテレビに求める方向になっている。まさにそのど真ん中の番組。現象を追いかけがちなニュースに対し、その背景や構造をわかりやすく、改めて考えさせてくれ、視聴者のニーズに合っている。

●池上彰さんという明確な軸の存在が大きい。大勢のスタッフが色々な形で情報を集めてきても、池上さんというフィルターを通じて伝えることで、情報のつなぎ目が滑らかになり、ニュースのバランスもよくなる。何よりも池上さんが全体を咀嚼して伝えるので、非常にわかりやすくなっている。

●世の中のことに関心がないといわれる若い人たちに、社会に関心を持たせることに大きな効果がある番組。普通はなかなか聞けないような素朴な質問が出ても、池上さんは全然バカにしないので、更に質問が出るという面白さがある。

●池上さんの半端ない知識と説明力に感服。聞きやすい声質と音量、ユーモアを忘れない温かな人柄など脱帽するだけ。ニュース映像が少なくても十分飽きさせず、引き込む力がある。

●池上さんはシンプルで明快で深い。伝える技術は大変なもの。構成する演出力もすごい。

●“王道感”がある。池上さんの知識をフルに提供するという揺るぎない軸があり、制作スタッフの努力の蓄積が感じられる。画面の見せ方、テロップの出し方にも工夫がある。

●日本の建造物の老朽化やゴミのリサイクルの問題など一般の人が知っているようで知らない事実、知っていなければいけない話を中心に、これからも池上さんに解説を続けてほしい。

●バンバン質問する、色々なジャンルのゲストが必要。60代後半から70代で、わからなくても恥ずかしがらずに質問するゲストが出てくるともっと厚みが出る。



●池上さんがそつなくこなしていて、あまりにもきれいにまとまり、印象に残るものがない。池上さんももっと自分が困ってしまうような質問が欲しいのではないか。ゲストが本当に興味を持って質問する感じがしないのは残念。一番大事なのは池上さんに脱線させること。

●「池上さんだったらどうしました?」を是非トライしてほしい。池上さんが「うーん」と困ったり苦しんだりするとリアルさが出てくる。

●問題はレベルをどこに置くか。初歩的なことも、かなり深いところもあることが大事。

●わかりやすく伝えようという気持ちの裏返しだと思うが、全体的に演出が知識のない人を前提にしている印象を受ける。「知らなかった」、「見落としていた」という内容なのにもったいない。自分はそれなりにものを知っていると思っている人も見ているので、「すでにご存じと思いますが」「釈迦に説法ですが」のようなトーンで演出するのもありではないか。

●毎週1時間番組で見たい人も多いのではないか。

●2時間編成の隔週放送は再考してほしい。毎週1時間で1つか2つのトピックを深めてもらうと見やすい。

●2時間はきつい。飽きる。2時間だからゲストが活きてくる面もあるので、難しいところ。



●スタジオセットがごちゃごちゃしている印象がある。

●通常のニュース番組よりも、テロップがカラフルであったり、フォントの大きさを変えたり、文字の後ろに背景までつけたりするのは、知的さを限定させている。



●池上さんの名人芸に頼りすぎる傾向は他に人材がいないのかとやや寂しい状況。

● “ポスト池上”は誰なのか。テレビ朝日のアナウンサーから人材を輩出できるとよい。



●〈街の声〉というものに首を傾げる。番組の趣旨に沿うもの、演出上必要なものをインサートしている気がする。

<2月23日OA「平成30年日本の決断」について>

●懐かしい話題から最近の話題まで、思い出したり、発見があったり、納得できたり、本当に良い番組だった。

●11のテーマをよく拾い上げた。映像やテロップなどもよく整理されていて感心した。



●1つ1つの内容はうなずくものばかりだったが、全て同じテンポで最後まで進んでいった。何か違う短いコーナーを設けるなど、流れと違ったものがあるといい。

●無理やり体裁を整えた印象で、全体として何を伝えたかったのかわからなかった。トピックが詰め込み過ぎで、どれも消化不良に終わった。トピック1つずつに時間をかけて取り上げ、きちんと深めると、平成をもう一度見直す良いきっかけになるのではないか。

●色々なテーマがアラカルトに並び、1つのテーマにかける時間が短く、広がりや掘り下げも限界がある。資料映像やナレーションが入る分、池上さんの迫力や良さが薄まる。

●ゲストそれぞれが役割を果たしていて素晴らしい人選だったが、あまりに上手くいきすぎていて、終わった後に印象に残るものがなかった。

●番組を通して、平成がデフレの時代だと感じた。成長を求めるよりもデフレのままで堪えて、穏やかに緩やかに下降していく日常を求めてしまいそうだが、一つの思想や雰囲気は30年以上もたないので、これからは新しい時代になっていくだろう。

<3月2日OA「緊急生放送 米朝首脳会談」について>

●この番組は生放送の回がいい。池上さんは生放送でもたじろぐことなく、ゲストの素直な質問やどっきりするような質問にもうまく対応し、勢いが生まれる。

●今起きていることを時間軸や空間軸を拡げて相対化して見る視点を出していくという、まさに解説の真骨頂。しかも生放送というのが驚愕だった。厳しい質問やトンチンカンな質問で妙な沈黙が走るのも、緊張感を生み、見応えがあった。

●首脳会談に関連する背景事情についても詳しく説明していて、より深く広い視野から理解することができる。

●池上さんは適切で非常に上手い。名人芸と言っていいが、生放送でゲストの発言等で焦ったり急いだり元に戻ろうとして努力する姿はちょっと痛々しく、見る立場ではつらい。

●ここまでライブで分かりやすくできるのはすごい。ライブはなるべく多くした方がいいが、事実関係だけは気をつけてほしい。

<局側見解>

●放送時間、生放送などのご意見を検討し、長く番組を続けられるようにしていきたい。

●10年ほどやってきて、次のステージに向かう変革期にある。ご意見を参考にパワーアップしたい。

●ニュースがあれば、生放送もたくさんいれつつ、今後も頑張っていきたい。



§関川夏央委員、小倉純二委員が今回で番組審議会委員を退任されました。
以上